計画 北海道の山事情

トムラウシ山「短縮コース」日帰り登山とテント泊のための徹底ガイド

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トムラウシ山

佐幌岳から見たトムラウシ山

北海道にある日本百名山トムラウシ山は、大雪山系のなかでもっとも奥深い山

多くの岳人の憧れであると同時に、過去に数々の気象遭難事故が起きたことでも知られています。

トムラウシ山をよく知る筆者が、トムラウシ山登山で最も利用が多い「短縮コース」について、概況や注意点、見どころなどを徹底ガイドします。

ぜひご活用ください。

 

ヒサゴ沼避難小屋 改修工事のお知らせ

平成31年、ヒサゴ沼避難小屋の改修工事が行われます。工事期間中(6月~10月末を予定)は避難小屋の利用ができません。

テント場も資材置き場として使用するため、テント場の使用もできない可能性があります。

トムラウシ方面の登山や大雪山系の縦走をお考えの方は、忠別岳避難小屋、もしくは南沼キャンプ指定地の利用に計画変更が必要です。ご注意ください。

詳細は十勝総合振興局ホームページをご覧ください。
ヒサゴ沼避難小屋改修工事について

 

■目次
1.トムラウシ山「短縮コース」ガイド
 >基本データ
 >参考ガイドタイム
2.トムラウシ山「短縮コース」コース概要
3.南沼キャンプ指定地ガイド
 >水場
 >携帯トイレブース
 >南沼にテント泊したら行ってみたい周辺の山「化雲岳」
6.ベストシーズン
7.日帰り登山の引き返しポイント
8.携帯電話の電波状況
9.遭難事故多発地帯
10.知っておきたい低体温症の症状と予防策
11.服装と気温
12.アクセス
13.宿泊
14.不安な人のためのアドバイス

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1.トムラウシ山「短縮コース」ガイド

面積約23万ヘクタールと日本の国立公園の中で最も広い大雪山国立公園の、ほぼ中央に独立鋒のごとく鎮座するのがトムラウシ山。

頂を踏むにはどこからアプローチしても遥か遠いことから、「大雪山の奥座敷」とも呼ばれています。

安易に人を近づけないトムラウシ山は、大雪山系の山々のなかで圧倒的な存在感を放っています。

忠別岳から見たトムラウシ山

忠別岳からみたトムラウシ山、どの角度から見ても冠のような山容は変わらない

「トムラウシ」の語源は諸説ありますが、アイヌ語で「tonra-ush:水草が生えている、湯花が多い、もの(川)」という意味で、「温泉や水草などヌルヌルすべる川(トムラウシ川)が流れる場所」を指しているとの解釈が通説です。

春になると一斉に咲き出す可憐な高山植物を足元に、高層湿原の湖沼と岩の庭園を歩き、溶岩が造り出した巨岩のロックガーデンで氷河期の生き残り「ナキウサギ」の声に耳を澄ます。

変化に富んだコースは、登山者を飽きさせることがありません。

トムラウシ公園

標高は2,141mとさほど高くなく、険しさは感じませんが、アップダウンを繰り返す登山道を、とにかく奥深くまで分け入ります。

一般的に難所と言われているのは大きな溶岩石が積み重なったガレ場ですが、アプローチの長さからくる疲労のほうがよほど厄介です。

雪渓や濃霧による道迷い、悪天候による低体温症の遭難事故が多いのも、この山の特徴。

いずれも重大なトラブルにつながることが多く、トムラウシ山登山を安全に遂行するには、長時間の登山に耐えうる体力とともに、過酷な状況に対応できる高レベルな山岳知識と技術が求められます。

また、トムラウシ山には本州のような寝食を提供する山小屋があるわけでも、きっちり整備された登山道があるわけでもありません。

気象条件は厳しく、真夏でも気温は一ケタ台に下がるほか、雪が降ることも珍しくなく、夏山シーズン中でもダウンジャケットやフリースなどの装備は必携です。

そんな北海道ならではの山事情も、計画の前にぜひ知っておいてほしいポイントです。

「短縮コース」の概況や注意点、登山に役立つ情報を紹介していきます。

 

基本データ

標高2,141m
標高差 1,186m(短縮コース登山口‐頂上)
距離約9.2km(トムラウシ温泉正規コースは12km)
標準ガイドタイム登り5:20、下り4:10(休憩なし)
休憩を含めると、少なくとも【登り6:00、下り5:00】は想定したい
難易度中級
水場コマドリ沢出合、南沼キャンプ指定地雪渓(7月下旬くらいまで)、北沼
※いずれも煮沸が必要
山小屋 なし
トイレ 南沼キャンプ指定地に携帯トイレブース有り(例年6月下旬~9月下旬設置)
登山口駐車場にバイオトイレ有り(例年6月下旬~9月下旬使用可)
登山口駐車場約50台
山開き年間を通して登山は可能
例年6月下旬にトムラウシ温泉神社にて安全祈願祭を行っている
問合せ先登山に関すること:新得町観光協会0156-64-0522
林道に関すること:十勝西部森林管理署東大雪支署01564-2-2141

※標準ガイドタイムは「長谷川哲『北海道夏山ガイド2 特選34コース』北海道新聞社」を参考にしています

 

参考ガイドタイム

トムラウシ山 タイムマップ

登り(5:20)
短縮コース登山口  ➜ 短縮コース分岐   0:20
短縮コース分岐   ➜ カムイ天上     0:40
カムイ天上     ➜ 前トム平      2:20
前トム平      ➜ 南沼キャンプ指定地 1:30
南沼キャンプ指定地 ➜ 山頂        0:30

下り(4:10)
山頂        ➜ 南沼キャンプ指定地 0:20
南沼キャンプ指定地 ➜ 前トム平      1:00
前トム平      ➜ カムイ天上     2:00
カムイ天上     ➜ 短縮コース分岐   0:30
短縮コース分岐   ➜ 短縮コース登山口  0:20

※休憩は含みません

 

 

2.トムラウシ山「短縮コース」概要

登山口には広い駐車場があり、トイレも完備されているため、前日入りして車中泊する登山者がかなりの数にのぼります。

駐車場に設置されているのは男女別のバイオトイレです。太陽光発電によって排泄物がオガクズと一緒にに自動撹拌されるようになっています。

トムラウシ山短縮登山口のバイオトイレ

バイオトイレ

 

登山口からしばらくは、針葉樹と広葉樹が入り混じる針広混交林が続きます。

トムラウシ山 短縮 登山口

登山口

 

20分ほど歩くと、トムラウシ温泉から延びる正規ルートとの合流地点に差し掛かります。

トムラウシ山 短縮登山口分岐

分岐

 

トムラウシ山への登山者の大多数は短縮ルートを利用しています。

旭岳や黒岳などから縦走をスタートした登山者のうち、下山後の移動手段を持たない人が、正規ルートを利用してトムラウシ温泉まで一気に下ることが多いようです。

緩急のある尾根を登っていくと、やがて木立ちの間からトムラウシ山や前トムラウシ山が見えてくると、ほどなくしてカムイ天上です。

カムイ天上

カムイ天上

 

カムイ天上は、ザックを置いて、装備の点検やおにぎりを口に入れたり水分補給をしたりと、有効に活用したいスペースです。

周辺は麓のトムラウシ地区から電波が入るため、携帯電波が通じます。ほかにもトムラウシ地区の牧草畑が見渡せるような所は携帯電話が使えます。

下山時にタクシーを手配したり、家族や仲間に連絡するポイントとして覚えておくといいでしょう。※登山口は電波が入りません

カムイ天上から少し進むと、最初のビューポイントに到達。「十勝連峰」の展望が広がります。

新得側から見た十勝岳連峰

新得側から見た十勝岳連峰

 

ぬかるみが酷いことで悪名高かったカムイ天上から先には、2018年に環境省によるトムラウシ山登山道整備事業で、55基の木のゲタが設置されました。

ぬかるみに設置されたゲタ

ぬかるみに設置されたゲタ

 

田んぼの中を歩くようなぬかるみが無くなり、スパッツは不要、快適になりました。

このあとコースを右に大きく切ってカムイサンケナイ川に向かいます。

やがて正面にトムラウシ山が見えてきます。あまりに遠くに見える頂に、くじけそうになる瞬間でもあります。

トムラウシ山

トムラウシ山

 

小さな沢に沿ったお花畑を見ながらしばらく進むと、登山道はジグを切って標高を下げ、カムイサンケナイ川に下っていきます。

カムイサンケナイ川

カムイサンケナイ川

 

カムイサンケナイ川は普段ほとんど水流がありませんが、ひとたび激しい雨が降ると鉄砲水が流れることで知られています。

旧道はこの川の左岸・右岸の渡渉を7回繰り返すコースでしたが、鉄砲水で登山者が足止めされたり流される事故が後を絶たず、コースの付け替えが行われた経緯があります。

新道になっても川の脇を通って向こう側に渡ることに変わりありません。増水時には十分注意してください。

また、残雪があるときは、川の中央部分は雪渓が薄くなって穴が開くことがあるため、中央寄りは歩かないようにしてください。雪渓の端も薄くなっていることがあり、踏み抜くことがあるので注意しましょう。

カムイサンケナイ川とコマドリ沢の合流地点が「コマドリ沢出合」です。

コマドリ沢出合

コマドリ沢出合

雪渓が残っているときは、標識も雪に埋もれてしまいます。右に折れてコマドリ沢に入るはずが直進してしまい、道に迷うケースが多いので注意しましょう。

7月下旬くらいまでは頂上直下の南沼キャンプ指定地に雪渓がありますが、溶けて無くなり次第、ここが最後の水場になります。

コマドリ沢 水場

 

沢水は直接飲むことはできません。エキノコックス症感染を防ぐため、煮沸するか、浄水器でろ過してから飲むようにしてください。

コマドリ沢から先の登山道入口は狭く、うっかりしていると見落としてしまいそうです。岩に黄ペンキで書かれた「コマドリ沢」が目印です。

コマドリ沢 ペンキ

 

急斜面の枯れ沢脇を登り、前トム平まで290m高度を稼ぎます。森林限界を越え、視界が広がっていきます。

前トム平への登り

 

前トム平の手前は、最初の難関「巨岩のロックガーデン」です。ガレ場を歩きなれていない人は、バランスをとるのが難しく、神経を使います。

巨岩地帯

 

ここはナキウサギの生息地。ときどき聞こえてくる「キチッ」という甲高い声は、ナキウサギの鳴き声です。

休み休み、耳を澄ませて目を凝らせば、その姿を見ることができるかもしれません。

ナキウサギ

 

見上げた先は前トム平。辛い登りが延々と続くなか、登るほどに景色が広がるのがせめてもの救いです。

巨岩地帯

 

前トム平まで来ると、行程は残すところ約3分1。

ここから先は吹きさらしになるため、荒天時には登頂を諦めて引き返すかどうかを判断するチェックポイントになります。

前トム平

前トム平

 

登山道は巨石やスレート地帯へと変化します。

踏み跡が見えないので、ガスがかかって視界が利かなくなると方向を見失いそうになります。

揺れる岩に足元をすくわれそうになることがあるので、浮石に注意しましょう。

スレート石と巨石の向こうにトムラウシ山の山頂が見える

スレート石と巨石の向こうにトムラウシ山の山頂が見える

 

トムラウシ公園手前の通称「カメ岩」です。

カメ岩

 

日帰り登山をするときに、引き返すかどうかを判断する重要な場所がここ。時間がかかり過ぎたら、登頂は諦めて下山します。

眼下に広がるのは、トムラウシ公園の岩と大小の沼が織りなす庭園のような景色。紅葉時期の美しさは格別です。

雪渓が残っている時期(~7月中旬)は、登山道や地形が雪に覆われて目標物が無くなり、道迷いが多発するポイントでもあります。

トムラウシ公園

トムラウシ公園

 

大きな岩を縫うようにして50mほど下り、トムラウシ公園を横切ったあとは、頂上の巨岩地帯のすそ野を巻くようにして徐々に高度を上げます。

トムラウシ山

 

やがて見えてくるのが南沼キャンプ指定地です。

トムラウシ山 南沼キャンプ指定地

 

旭岳方面と天人狭方面、十勝岳やオプタテシケ方面からの縦走路と、トムラウシ山の頂上への路が交わる交差点。

南沼キャンプ指定地分岐

 

頂上までは標高差約190m、時間にして30分。力を振り絞って最後のガレ場を登ります。

トムラウシ山

 

待望の山頂です。

トムラウシ山頂上

 

ここからの景色は頑張った人だけが見ることができるご褒美です。帰路の英気を養いつつ、大雪山の真ん中から見る光景をしばし堪能してください。

山頂から見たオプタテシケ方面です。中央上がオプタテシケ山です。

トムラウシ山よりオプタテシケ方向

 

北方向です。左が旭岳、右が白雲岳です。

トムラウシ山より旭岳と白雲岳

 

ゴロゴロと岩に埋め尽くされたすり鉢状の山頂火口跡。

トムラウシ山火口

 

山頂から北方向に下ったところから見た北方向です。手前にあるのは北沼です。

トムラウシ山より北沼

 

さて、問題は下山です。

帰りのアプローチも長く、すでに十分疲労が蓄積した体には、登り返しや巨岩の渡り歩きなどが応えます。

ガスがかかっている時は、気を抜くと登山道を外れやすいので要注意。

事故やけがは下山に集中しています。特に多いのは転倒による負傷です。

適度な休憩をとり、栄養補給と水分補給をしながら、最後の最後まで集中力を切らさぬようにして下山しましょう。

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