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北海道胆振東部地震で役立った登山装備

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登山装備

2018年9月6日未明に起きた北海道胆振東部地震で、26時間の停電を経験した際、役に立った登山装備や気づいたことなどをまとめました。

 

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街の灯りが消えた後に起きたこと

震源地より200km以上離れている我が家では、この地震による揺れは震度4で、被害はまったく無し。

この程度の揺れは年に何度もあることでして、テレビをつけて震度などを確認し、家族に「問題なし」と伝えて布団に戻るという、いつも通りの行動をとっていました。

ところが数分後、「パチッ、ブーン」と家電の電源が落ちる音とともに、まさかの大停電がスタートします。

信号が消え、通学時の安全が確保できないことから学校は休校になりました。なかには休みになった会社もあったようですが、わたしの職場は通常通り。信号の消えた街中には、現実とは思えない不気味さが漂っていました。

屋上に貯水タンクのあるマンションでは、汲み上げポンプが動かず断水になり、トイレも使用できなくなりました。多くの人にとって想定外の出来事だったようで、上階に住む高齢者にとっては死活問題となりました。

太陽光パネルなどの自家発電システムがないオール電化の家では、調理もできなくなりました。災害の多い日本では、ライフラインは1本化せず、リスク分散しておくべきと感じました。

営業しているスーパーやコンビニには長蛇の列ができ、棚から商品が消えました。電力が復旧して生産ラインが再開しても、商品が店頭に配送されるまでタイムラグがあり、地震から1週間ちょっと品薄状態が続きました。

ほとんどのガソリンスタンドが休業しているなか、自家発電を稼働して営業しているガソリンスタンドには、車の列が数キロ続いていました。以前は残り1目盛くらいで給油していましたが、あの列を見てからは、早め早めの給油を心掛けてます。

停電中は現金でしか買い物ができませんでした。日ごろはカードをメインで使うため手持ちの現金がほとんどなく、非常持ち出し袋に入れていたお金でしのぎました。災害時は現金社会です。

我が家は26時間後に復旧しましたが、官公庁が集中している地域は市内で最も早く15時間後くらいに復旧、遅い地域では丸2日間続いたようです。9月上旬で暖かかったのが幸い、冬なら暖房が使えず大変なことになっていたと思われます。

当初は電力の復旧まで1週間かかるという話もあり、「いつまで続くのか分からない、先行きの見えない不安感」が買い占めなどの行動につながることを、まざまざと見せつけられました。必要以上に買ってしまう心理、自分のなかにもありました。これって厄介ですね。

災害時には、いつも以上に優先順位をつけることが大切だと感じました。一番はもちろん命。でも、「いつまで続くかわからない」状況下で優先順位をつけるのは難しかったです。

 

 

災害時に活かす登山グッズのローリングストック

いつくるかわからない災害時のために、普段使わない防災用品を買いそろえておくのは気が重いものです。だからといって先延ばしにしていたら、必ずツケが回ってくるもんなんですね。

オール電化住宅に住む知人は、懐中電灯と料理用カセットコンロのガスを慌ててホームセンターに買いに行き、入場制限で4時間並ぶ羽目になりました。

我が家も、東日本大震災後に買った手回し式充電器が事実上使い物にならないし、懐中電灯は電池が液漏れしてるしで、いざとなったら役に立たない「防災グッズあるある」の典型例でした。

やっぱり備えは必要で、かつ、備えて終わりじゃなくて、定期的に賞味期限や故障なんかも点検しないといけない、という基本を思い知りました。

そこで注目したのが「ローリングストック」。非常食を非常時のためにとっておくのではなく、定期的に食卓にあげて「食べたら買い足す」を繰り返す方法です。

ちゃんとサイクルを回していれば、常に新しいものに入れ替わるし、防災用途として日常使いのものと別に用意しておく必要がない。無理、無駄がなくていいじゃないですか。

今後はこの方式を取り入れることに決定。停電時に活躍した登山装備に関しても、防災用途として少し多めにストックし、日ごろから使いまわす「登山グッズのローリングストック」にします。

普段は使わない防災用品を備蓄しておくより、経済的負担も少なくて済みますし、保管場所も新たに設ける必要がありません。

登山で定期的に使うことが点検やメンテナンスにつながりますから、液漏れや故障なんかにも早めに気付くことができるんじゃないか、と相乗効果を期待してます。

 

今回とくに役立った登山装備

停電を乗り切るのに役立った登山グッズを3つ紹介します。

 ヘッドランプ+予備電池

ヘッドライト

ヘッドランプは、両手がフリーで使えるのが最大のメリットです。

物を持つにしても、トイレに行くにしても、片手がふさがるのはすごく不便。とくに高齢者と小さな子どもがいるご家庭には、懐中電灯ではなく、ヘッドランプがおすすめです。

高齢者は、夜中トイレに行くときに片手がふさがった状態だと何かと危険なんですよね。90歳近い親戚は脚が悪いので心配して行ってみたら、救急救命士をしている親戚がヘッドランプを差し入れてました。仕事柄、さすがのチョイスです。

子どもを抱っこしていても常に視線の先を照らしてくれるし、これから買うなら懐中電灯ではなくヘッドランプをおすすめします。頭に装着するのが重くて不快であれば、首からぶらさげておくといいです。

今のヘッドランプはだいたいがLEDで、明るさをうたっています。建設関係のプロが使うような200ルーメン以上のものは、登山用途には明るすぎますね。特にテントの中ではまぶしすぎて、一緒にいる人が不快だと思います。

登山用のヘッドランプを選ぶときは、明るさよりも、最低限の明るさでいいので長時間使えるかどうかに注目するといいですよ。

おすすめはペツルのティキナ。連続で220時使用でき、比較的安価で、テント泊には十分な照度が得られます。単4電池3本も予備に持ち歩きます。電池は信頼性で選ぶとパナソニック製です。

ヘッドランプは、高価なモデルになると専用充電池になる傾向があります。停電時に充電できないので、防災用品として兼用するなら乾電池式がいいです。

 

 

モバイルバッテリー

モバイルバッテリー

5200mAh(上) 13000mAh(下)

手回し式充電器は全く役に立ちませんでした。

ずいぶん前に購入したものだからなのか、いまどきの電子機器には歯が立ちません。いくらハンドルを回しても、回すそばからバッテリーの残量が減っていくという罰ゲーム。

携帯電話は、一定以上の充電電圧をかけなければ自動的に充電カットされる仕組みです。手回しで安定的に電力を供給するのは大変すぎて、事実上、充電は不可能でした。しかも、必死になって回していたら、手回しハンドルが折れるというオマケ付き。

携帯電話さえ充電できないのですから、スマホの充電なんて絶対ムリ。ということで、登山装備として使っているモバイルバッテリーで充電しました。

手回し罰ゲームのあとのモバイルバッテリーの有難味は言葉にできませんね。あとからもう1つ追加購入したくらいです。

これから購入を考えている方は、Anker(アンカー)製が、使い勝手、価格、信頼性の高さでおすすめです。

アンカーのアストロは、登山用にちょうどいい容量(5200mAh)とサイズでおすすめです。10000mAhや20000mAhを越えるような大容量タイプは、大きくて重くなるので登山用には向きません。

使えるのはリチウムイオンバッテリーを使用する3.7Vの電化製品だけです。災害時に使用するんですから、ビデオとかゲーム機とかどうでもいいですよね。スマホや携帯、タブレットへの充電用と割り切って使いましょう。

なお、バッテリーは日ごろから常に満充電にしておかないと意味ありません。

 

 

ラジオ+予備電池

ポケットラジオ

アナログ式は直感的に操作可能

情報収集はラジオとスマホでしていました。

ラジオに関して言うと、NHKは広域の情報が多く、どうしても被害の大きかった地域の情報に偏る傾向があります。

地域に密着した情報は、地域FMにかないません。「●●スーパーは買い物ができますが、現金のみです」「●●スタンドで給油可能です」といった身近な情報を入手することができました。

使用したのは、登山用に持ち歩いている携帯ラジオです。かれこれ17年くらい前に購入したアナログ製。

電力はそんなに食わないので、電池が無くなる心配をせずに、ずっとつけっぱなしで聞いてました。ただ、山に行くときは予備電池も持ち歩いています。

手回し式充電器についているラジオもありましたが、なんせ長丁場、ずっとハンドル回してるわけにはいきません。もっとも、携帯の充電をしようとしたら、ハンドルが折れてしまったんですけどね。

おすすめはソニーのポケッタブルラジオです。アナログのダイヤル選局。単4電池2本で170時間(イヤホン使用時)使用できて、山に持っていくのに嬉しい小型サイズです。

アナログのダイヤル選局をあえておすすめするのにはワケがありまして、山では電波状況が悪くてデジタルだと選局できないことが多いのです。加えて、説明書がなくても誰でも直感的に操作できるのはアナログの良さです。

スマホはピンポイントで情報を知りたいときに使っていましたが、情報の質には注意が必要でした。「午後から断水になる」とデマも流れてきましたよ。当初はデマかどうか判断できず、市のホームページを確認しても記載がなくて困りました。こういうときはどうやって情報の真偽を確かめたらいいものか、課題です。

 

 

今回は使わなかったけど災害時に絶対に役立つ登山装備

今回は使わずに済んだものの、災害時に必ず役立つ登山装備をいくつか紹介します。

携帯トイレ

携帯トイレ

もしもトイレが使えなくなったら、活用しようと思っていたのが登山用の携帯トイレです。

北海道の山では携帯トイレを持ち歩くのが常識になりつつありまます。わたしも災害用トイレを作っている(株)総合サービスのサニタクリーンを常に持ち歩いています。

当初は緑色のアウトドア用携帯トイレを使っていたのですが、多いときは1回の山行で2袋くらい使うことがあるので、単価の安いサニタクリーンの白い簡易トイレに切り替えました。

便座にかけて使えるほか、地面に広げて使うことができる仕様はアウトドア用とまったく同じ。ただし、袋の色が白いので尿や便の色が透けるかもしれず、外袋がついてこないので臭いが漏れるかもしれません。

とはいえ、山で使用した後はビニールのゴミ袋に入れてザックの外にぶら下げていますが、色も臭いも気になりません。香りの強い柔軟剤のほうが、よほどくさいと思います。

これには使用期限があるんですよ。保証期間は7年間で、7年を経過しても使えることは使えますが、凝固性が徐々に衰えてくるそうです。ローリングストック向きですね。

20枚入り、防臭チャック袋無しで定価3,000円+税です。1袋で成人の尿量1~2回分いけますから、3人家族の我が家では2~3日分まかなえると思います。

 

シュラフ+シュラフカバー

シュラフ、カバー

今の暖房機器は電気なくして動きませんから、冬の停電は命に直結します。

今回の停電がもし真冬だったら、大活躍していただろう登山グッズの筆頭は、シュラフとシュラフカバーでしょう。

大雪山系などでは、夏でも気温が一けた台になるのはよくあること。北海道の夏山シーズンでは、限界温度-6℃以下のダウンシュラフを使います。

このグレードのシュラフなら、外気温4℃くらいまで快適に眠ることができますから、真冬でも室内ならなんとかなるでしょう。吹雪で立ち往生したときのために、冬の間はシュラフを車に積んでいる山岳関係者も多いですね。

廉価品でも2万円~3万円します。滅多に行かないテント泊(趣味)のために買うのはためらいますが、命を守る防災用品として使えることを考えれば安いものです。

ダウンのシュラフを買う時にセットで購入するシュラフカバーには、結露や雨による濡れからシュラフを守る役割と保温効果があります。

国産シュラフメーカーISUKAによれば、シュラフカバーによる保温力の向上はおよそ2℃を想定しているそうです。

防災用にわざわざ購入する必要はありませんが、もしもこれからシュラフを買う予定があれば、シュラフカバーもセットで購入することをおすすめします。

シュラフとシュラフカバーについて詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください。

 

 

テント

テント

これくらいのサイズなら居間でも設営可

地震後は、乾電池で点火する石油ストーブや乾電池不用の石油ストーブが品切れになりました。みなさん「これが冬だったら…」と危機感を覚えたのでしょう。

真冬の停電で暖房機器が使えなくなったら、家の中で山岳テントを張るという方法があります。

夏山登山でも、思いがけない寒さに襲われたときは、避難小屋の中でテントを張ることがあるんです。

北国では窓が2重サッシになっているのはご存じだと思います。空気は熱を伝えにくいので、サッシとサッシの間に空気の層を作ることで断熱効果を高めます。室内でテントを張るのはこれと同じです。

一般のキャンプ用テントは、居住性を重視しているので天井も高いし、とにかく大きいですよね。よほどの豪邸でもない限り、部屋の中で設営するのは厳しいでしょう。

登山用テントは耐風性や携帯性を優先させているので、非常にコンパクトにできています。天井も低くて、4人用テントでも一般住宅の一室で張ることが可能です。ただし、自立式テントに限りますが。

実際、ストーブが壊れてしまい、この方法で北海道の冬をストーブ無しで過した知人がいます。進んで真似はしたくありませんが、非常時に寒さをしのぐ方法として覚えておくといいと思います。

ダンロップテントのレビュー記事です。参考にどうぞ。

 

 

アルファ米

アルファ米

今回は最後まで手をつけずに済みましたが、アルファ米の備蓄がふんだんにあったことで、必要以上に買いだめすることなく落ち着いていられたのは発見でした。

食べるものがある、というのは大きな安心材料なんですね。人間も動物なんだなぁと思います。

胆振東部地震の前から、防災備蓄品としても使えるようにとアルファ米は普段から多めにストックしていまして、古いものから順に登山で使っては補充する「ローリングストック」を自然にやっていました。

というのも、アルファ米は5年~7年保存できるので、災害時だけのために置いておくと相当長い間忘れ去られることになります。消費期限が近付いたらカンパンのように慌てて食べる流れになるのは必至。高価なアルファ米をそんな風に消化するのは、もったいないじゃないですか。

登山でアルファ米を利用するのは、荷物の軽量化を優先する縦走装備のときや、数日間の山中泊で日持ちのする食糧が必要な「ここぞというとき」。高価なアルファ米の対費用効果を感じるときだけです。

今はピラフやドライカレー、おこわや雑炊、おかゆ、パスタなど、種類が豊富になってきましたね。飽きないように色々取り揃えたいところなんですが、近くのホームセンターやスポーツ用品店には、売れ筋商品しか置いていないのがネック。年に何度か登山専門店に行くときにまとめ買いをしています。

雑炊を食べたら1時間もしないうちにお腹が空いてしまったり、味付けが辛すぎて食が進まなかったりと、これまでいくつも失敗してきました。できれば山に持っていく前に味見しておくといいですよ。

いちばん安全なのは白いご飯です。ゴマ塩やふりかけを持参すれば、味に変化が出るので飽きません。ちょっと多めにお湯や水を入れるとお粥にもなりますし、何より白いご飯はどこでも買えるので入手性抜群です。

初めて買うなら、アルファ米の老舗である尾西食品のアルファ米12種類全部セットがおすすめです。防災備蓄品としてストックしつつ、登山で食べて、好みのものだけ補充するローリングストックをしてみるといいと思います。

 

 

登山グッズは究極の防災用品

今回学んだのは、防災用品として日ごろ使わないものをストックしておくより、使い慣れたもの(登山用品など)を災害時に使うほうが、無理・無駄がないということ。

液漏れしてだめになった懐中電灯の代替品は買いません。ヘッドランプがあるじゃないですか。

登山装備はそもそも、過酷な環境で使用することを前提で作られた究極のサバイバルグッズですからね。山に行かないときはしまい込んでいる、というのはもったいないと再認識した次第です。

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