「山岳テントを探していてダンロップのテントを知ったけど、何が良いんだろう?」
「ダンロップVSシリーズを使っている人の感想を知りたい。」
こういった疑問に答えます。
Contents
子どもが大きくなったので、家族でテント泊登山ができるようになりました。
ようやく訪れたこの時のために、満を持して購入したのがダンロップVS-40。※現行モデルVS-42A
納得がいく買い物ができたと思っています。
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ダンロップVS-42A
この記事を書いているわたしは、高校山岳部から登山を始め、登山歴は25年以上。現在は社会人山岳組織を主宰しています。
様々なテントを利用してきた結果、山岳テントに求めるものは次の2つです。
✔山岳テントに求める性能
- 耐久性
- 設営・撤収の手軽さ
えてして登山装備というものは、気象や自然条件が厳しくなればなるほどその性能や機能が発揮されるものでして、テントの耐久性や設営・撤収のスピードは命を左右しかねないほど重要だということは、肌感覚で分かっています。
それと同時に、年齢を重ねて体力の衰えを感じることも増え、装備の軽量化に取り組む必要性も、身に染みてよくわかっています。
それらもろもろを総合的に判断して購入したのがダンロップVS40(現行モデルVS42A)です。
実際使ってみた感想や良かったこと、残念なところなどをお伝えします。
ダンロップVSはヘビーユーザー向けです
ダンロップのテントをひと言で表現すると「ヘビーユーザー向け」です。
わたしにとっては、高校山岳部でも使用し、社会人山岳組織でも使用してきた、山岳テントの代名詞と言える存在です。
山岳組織の共同装備として使用するテントは、使用頻度が高いですし、数日間の連続使用もします。使用条件が過酷なので、優れた耐久性が求められます。
そんなヘビーユーザーに選ばれているのがダンロップなのです。
それほど軽くはないが強靭なテント
「それほど軽くはないが強靭なテント」だとメーカー自ら謳っていますが、その通りだと思います。
というのも、「軽さと耐久性は相反する関係」にありまして、軽量化を優先すれば、テント生地が薄くて破れやすくなったりポールが細くて折れやすくなるなど、耐久性が犠牲になるものなのです。
どちらの要素も不可欠ですが、ダンロップは耐久性をより重視してバランスをとっている、という訳です。
※重量は、記事の下にある「モンベルのステラリッジ」との比較表をご覧ください
強靭な理由① 風に強い
通常、吊り下げ式テントは「フックに負荷が集中するため風に弱い」と言われていますが、ダンロップVSシリーズは、フックの間をメッシュパネルでつないで負荷を分散し、強度を補っているそうです。
残念ながら、メッシュパネルの効果については、いまいち実感がありません。
本当の意味で耐久性の有難味が分かるのは、かなり過酷な状況におかれたときでしょう。
これまでの使用感では、風雨が強かったとき、フライシートの下から風が入り込んで暴れたり、テントがバタつくことが少なかったように感じます。
過去に遭遇した最悪のケースでは、猛烈な風雨が夜通し続き、テント場にあったテントのほとんどがポールが折れて自立しなくなったり、生地が破れてズタズタになりました。
15張りほどあったテントのうち、無事だったのはわたしのテントを含む2張りだけ。※その時はダンロップではなくICI石井スポーツのゴア・ソロテント
壊れたテントのなかにいた登山者は、みなさん近くの小屋に避難して無事でしたが、避難小屋がなければどうやって朝を迎えたのだろうと思ったものです。
そんな状況でこそ、メッシュパネルの威力が発揮されるのだと思います。
強靭な理由② 雨に強い
吊り下げ式は、本体とフライシートのすき間が広くなるので、テント本体とフライシートがくっつきにくく、テント内に水が染み込みにくい。
そうメーカーの商品説明にある通り、いい感じです。
長々雨に降られると、どんなテントでも縫い目やフライシートと本体の密着部分などから水が染みてくるものですが、それが今のところありません。
床の四隅から水が染みてきて、小さな水たまりができることも、今のところありません。
これに関しては、フライシートとテント本体の底部に、水分を吸収しにくいポリエステルを使用していることも防水性を高めているのだと思います。
ただし、使い倒して劣化してきたらその限りではありませんし、設計上の性能を上回る雨にも太刀打ちできません。
ちなみに、テント本体とフライシートの間に空気の層が保てると、「外気の熱をテント内に伝えにくく、結露しにくい」メリットも生まれます。
こちらも期待できると思っています。
強靭な理由③ ファスナーが壊れにくい
購入の決めてのひとつが、この直線ファスナーです。
直線ファスナーは、噛みにくく、壊れにくい。
期待を裏切りませんでした。
「テントトラブルの第1位はファスナー」なんだそうです。
曲線ファスナーは実によく噛みます。そのたびに「イラッ」としているのは、わたしだけではないでしょう。
家族でテント泊したときは、子どもがせわしなく出入りを繰り返したので、さすがのダンロップVSも何度か噛みましたが、曲線タイプと比べて圧倒的に少なかったです。
抵抗が少なくスムーズに開け閉めできるので、周囲に負荷がかかりにくいことを肌で感じることができました。
構造がシンプルだということは、壊れにくさ(耐久性)につながります。
ところで、曲線ファスナーは開け閉めしたときに持ち手の位置が移動するので、開けるたびにファスナーの持ち手を「どこだ?」と探しますよね。
直線ファスナーは閉めたときいつも「持ち手が定位置にある」ので、いちいち探さずに済むという、ちょっとしたおまけが付いてます。
設営・撤収が簡単です
吊り下げ式テントは設営と撤収が手早くできます。
①本体を広げる
吊り下げ式テントのメリットが発揮される場面です。
テントの四隅をペグで固定してから設営することが可能
強風時にはテントが飛ばされるリスクが軽減できるし、作業時間も短縮できるので、非常にうれしい設計です。
人や物を入れてから設営することが可能
お気付きかもしれませんが、これにより、体調不良の人を先に収容して休ませたり、雨の中の設営でもザックを先に収納して濡れを防ぐことができるのです。
テントの設営が手早くできるのは、単に「楽でいいよ」というレベルに留まらない、悪天候などでビバ―クするときなど、一刻も争う時に真価を発揮する、安全上とても重要なメリットなのです。
②ポールを立てる
一体型のポールを広げて、四隅のスリーブに入れます。
見た目にはわかりませんが、テント上部が太く、下部が細くなっていて、強度と立ち上がりの良さを実現しているそうです。
③フックをとめる
フックをパチンとしたら本体が出来上がります。
メーカーの説明では、スクリューフックは強風で過大な負荷がかかった時、外れて致命的な破損を防ぐそうです。
④フライシートをかける
フライシートをかけて全体をペグで固定したら完成です。
サイズ
購入したのは、4人用のVS-40(現行モデルVS-42A)で「両側入口」タイプです。
家族3人で使用する前提ですが、縦走用の大きなザックを入れるので、一サイズ大きめを買いました。
実際使用してみて、わたしの印象では「ちょうどいい」と思いますが、子どもには「狭い」と言われました。息子よ、家にいるようなワケにはいかないのだよ。
ほどほどの値段です
市販の4人用テントの中では「中の下」くらいの値段です。
VSシリーズのサイズ展開は1人用~5人用まで。
入口のタイプやテントの長さにバリエーションがあります。
- 1人用モデル:片側入口のみ
- 2人~3人用モデル:両側入口と片側入口、ロングサイズあり
- 4人用・5人用モデル:両側入口のみ
◆VS-12(1人用コンパクト登山テント/片側入口)
◆VS-22(2人用コンパクト登山テント/片側入口)
◆VS-22T(2人用ロングサイズ コンパクト登山テント/片側入口)
◆VS-32(3人用コンパクト登山テント/片側入口)
◆VS-22A(2人用コンパクト登山テント/両側入口)
◆VS-32A(3人用コンパクト登山テント/両側入口)
◆VS-42A(4人用コンパクト登山テント/両側入口)
◆VS-52A(5人用コンパクト登山テント/両側入口)
比較検討したのはモンベルのステラリッジ
ダンロップVS40と比較検討したのは、人気ブランド【モンベルのステラリッジ4】です。
メーカー | ダンロップ | モンベル |
モデル | VS-40 | ステラリッジ4 |
人数 | 4 | 4 |
重量(フライなどを含む総重量) | 2520g | 2230g |
サイズ(間口) | 210cm | 200cm |
サイズ(奥行き) | 180cm | 230cm |
サイズ(高さ) | 105cm | 120cm |
収納サイズ(本体) | 25×φ18.5cm | 37×φ17cm |
収納サイズ(ポール) | 44×φ6.2cm | 45×φ6cm |
構造 | 吊り下げ | 自立 |
実勢価格(フライ含む)※ | ¥44,900 | ¥49,042 |
※2018年8月26日 価格コム調べ
- 重 さ:モンベルが軽い
- 大きさ:モンベルが大きい
- 価 格:ダンロップが安い
広さとデザインでは、モンベルのステラリッジのほうが魅力的かもしれません。
実際、どこに行っても超がつくほどの人気です。
あるときは、テント場の9割近がモンベルだったことがありまして、テントから出たら最後「自分のがどれか分からない」なんてことになりそうでした。
広さに関して言えば、冒頭でお話しましたが、強風で周りのテントがズタズタに崩壊したのを目の当たりにした経験から、山岳テントは「必要最低限の広さ」がよいと考えています。
そのとき無事だったわたしのテントは1~2人用の小型で、崩壊した他のテントは比較的大きなものでした。
大きければ大きいほど風を受けるのは、言うまでもありません。
使ってみて分かった、良いところ・残念なところ
カタログ上では分からなかったことや、使ってみて感じたことを書きます。
出入り口が2か所あるって、かなり楽
横入口が2か所、しかも互い違いについています。
そんなテントは初めてですが、出入りがとても楽でした。
特に、夜中トイレに行くとき、寝ている人をまたがずに出入りできるのが素晴らしい。(人数が多ければその限りではありませんが)
テント内が熱くなりがちな日中も、両側を開ければ風通しはバツグンです。
反面、風が強いときはスースーします。
ベンチレーターが本体にないのが意外なメリット
ベンチレーターが本体に付いていないテントです。
心配になってメーカーに問い合わせたところ、「出入り口が2か所あって通気性が良いため必要ない」とのこと。(※実際、空気の通りはよく、問題ありません)
これまで、強風でベンチレーターがテント内側に入り込み、そこを雨水が伝ってテント内が浸水することが多々あったのですが、そんな心配がないのがうれしいです。
フライは防水のため通気性がありませんが、通気口を上部2か所に設けています。
この通気口はワイシャツ襟部分のようなブラスチック部品が入っていて、常にアーチ状に膨らむ絶妙な構造となっています。
網戸と本体をファスナーで一体化できる
ダンロップVSは、網戸を外側につけることで、網戸とテント本体をファスナーで一体化することを可能にしました。まさに逆転の発想。
画像を見ていただくと、ファスナーが2列あるのがわかると思います。
外周(橙色)ファスナーで網戸とテント本体が同時に開閉でき、内周(白)ファスナーで網戸にすることが可能です。それぞれ動作は1回で済みます。
一般的なテントは網戸が内側ですよね。
網戸にするときも出入りするときも、外側と網戸のファスナー2か所を開閉する必要があります。
ファスナーの開閉回数が少なくなると、出入りや換気の調整が楽になり、ファスナーが噛むトラブルも軽減します。
驚きを伴う予想外のメリットでした。
小物入れの位置が端すぎる
小物入れの場所がテントの四隅の際にあるので、使い勝手がよくありません。
テントの四隅は物を置くスペースなんですよ。
だから際にポケットがあると、頻繁に使うもの(ヘッドランプ、眼鏡、時計など)を入れておくことができません。
もう少し内側にあるとよかったのに。
撤収時の重さが気にならない
テントに水分吸湿率の低いポリエステルを採用しています。
撤収時にギリギリまで雨に降られたことがありまして、さぞかし重くなっているだろうと覚悟したのですが、来る時とさほど変わらない印象でした。
ただし、かさ張るのはダンロップVSも他と変わりません。
収納袋が大きいのが救いです。
これらをふまえてオススメするならこんな人です。
- 使用頻度が高い個人
- 団体の共同装備
- 縦走で連続使用する人
- バリエーションルートにも行く人
- 重さより堅牢性をとる人
- 男性
補足しますと、「縦走で連続使用する人」は、行程中必ずと言っていいほど天気の悪い日にあたるから。
「バリエーションルートにも行く人」は、テント指定地のような整地された場所で幕営できないことが多いので、耐久性のあるテントが求められます。
ということで、「強靭なテントをお探しのヘビーユーザーにおすすめのテント」をご紹介しておきます。
アクセサリー
テントの底面を保護するグランドシートは、あったほうがいいと思います。
どうせ購入するなら、最初からグランドシートとセットになったものを購入すると割安ですよ。
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