ヒサゴ沼避難小屋(キャンプ指定地)は、大雪山の最深部にある避難小屋です。
大雪山縦走の代表的なコース「旭岳~トムラウシ山2泊3日」では、1泊目は白雲岳避難小屋、2泊目はヒサゴ沼避難小屋に宿泊するのがスダンダード。
縦走で重要な役割を果たします。
避難小屋は老朽化のため、2019年に改修工事が行われました。新しくなった避難小屋とキャンプ指定地の様子、トイレや水場の情報をまとめました。
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ヒサゴ沼避難小屋ガイド
ヒサゴ沼避難小屋は、化雲岳の南約2kmのヒサゴ沼に位置しています。
黒岳石室や白雲岳避難小屋と比べて規模が小さいのは、ここまで足を延ばす登山者が圧倒的に少ないから。最も近い登山口からでも7時間以上かかります。
対岸からナキウサギの声が響くという素晴らしいロケーションで、驚くほどの静寂に包まれた環境です。
訪れる登山者は、ゆったり流れる時間を楽しむことに長けている印象でした。テント泊経験豊富な登山者が選ぶ、通好みのテント場なのかもしれません。
小屋は北海道が管理しています。
悪天候時に登山者が一時避難することを目的に作られており、宿泊目的で利用する施設ではありません。管理人はいませんし、寝具の貸し出しもありません。
利用時は、小屋泊まりではなく、テントを持参してキャンプ指定地で野営する計画を立ててください。
やむを得ず避難小屋を利用する場合は、下記に留意してモラルとマナーを守るようお願いします。
- 荷物の整理整頓を徹底し、利用者同士が譲り合って利用しましょう。
- 利用後は、必ずゴミを持ち帰り、清掃の保持に努めましょう。
- 場所取り行為・場所取り行為と疑われる行為は絶対に行わないでください。
北海道十勝総合振興局ホームページより抜粋
ヒサゴ沼避難小屋の基本データ
場所 | 化雲岳の南約2kmのヒサゴ沼湖に位置 標高1,690m |
主な場所からの標準タイム(休憩なし) | 忠別岳避難小屋から3時間20分 化雲岳山頂から1時間10分 トムラウシ山山頂から2時間35分 沼ノ原クチャンベツ登山口から7時間20分 天人峡温泉登山口から7時間40分 |
収容人員 | 避難小屋約30名 テント30張 |
管理人の有無 | 無し |
トイレ | あり |
水場 | あり 周辺の雪渓より取水。時期により場所が変わります。 直接の飲用不可 |
携帯電波状況 | 電波なし 化雲岳近くまで移動すれば受信可能 |
問合せ先 | 十勝総合振興局保健環境部環境生活課 TEL : 0155-27-8526 |
小屋は通年で利用できます。積雪期には外のハシゴを使って2階から出入りします。ドアなどに不具合が発生するのは日常茶飯事。頻繁に建付けが狂うほど、自然環境は過酷です。
ウッド調の外観とは打って変わって、内部は歴史を感じさせる作りが残っています。2階はハシゴで上り下りします。重たい荷物をもって上がるのは大変です。
2階では学生の一団がトランプに興じていました。
かつてここは、ツアー登山が宿泊場所代わりに利用して占拠し、他の登山者が利用できないことがよくありました。
ツアー会社が前乗りして場所取りしたり、自社の次のツアーのために荷物を置いたままにするといったマナー違反も横行していました。
2009年7月トムラウシ山で8名の登山者が低体温症によって死亡した事故の後は、ツアー登山自体が見直されて、避難小屋の混雑状況は改善されていますが、宿泊目的で利用する団体は跡を絶ちません。
ヒサゴ沼避難小屋は縦走ルートから30分~50分下ったところにあります。何かあって本当に避難する場所としては、正直言って、アクセスがあまり良くありません。
途中で体調不良に見舞われたり、天候の急変でビバークすることもあるかもしれません。予期せぬ事態に備えるためにも、テントを持参する必要があります。
キャンプ場ガイド
避難小屋とヒサゴ沼の間に野営(キャンプ)指定地があります。設営できるテントは約30張。
大きな岩や石がなく平坦で、使いやすいテン場です。ペグは容易に刺さりますが、山では夜中に天候が急変することがよくあるため、石も使ってしっかり固定したほうがいいでしょう。
沼の水面とテント場が同じ高さで、グラウンドの水はけが悪い印象です。所どころに、前日の雨でできた水たまりがありました。
トイレまでは木道を渡ります。木道は老朽化のため崩れている箇所がありますので、夜の移動はお気を付けください。
ここは携帯電波が入りません。電波を受信するためには、化雲岳周辺まで50分ほどかけて移動しなくてはなりません。天気予報のチェックなどは、避難小屋に到着する前に済ませておきましょう。
キャンプ場は対岸のガレ場からはナキウサギの声が響き、静寂が支配する素晴らしい環境です。せっかくなので、最高に贅沢なデジタルデトックスを味わってください。
水場
水場は雪渓の融水を利用します。この時(8月お盆)はテント場から徒歩10分くらいの雪渓から取水しました。水枯れしたら取水場所を変えます。
水はそのまま飲むことができません。エキノコックス症感染のリスクがあるため、必ず煮沸するか、浄水器を使います。
縦走に備えて浄水器を新調しました。雪渓の融水は冷たくて最高に美味かったです。
雪渓の融水ですから、気温が下がる朝晩は流れが止まります。避難小屋に到着してテントを設営したら、なるべく早く取水することをおすすめします。
トイレ
小屋の隣にはトイレが併設されています。巨大なドラム缶状のモノの上に、ポンと乗ったトイレが2基。
入口は地面から大きな段差があり、サンダルや紐を緩めた登山靴では足元が不安定で非常に危険でした。
中はシンプルなボットン式です。くり抜かれた穴だけがポッカリと口を開けているので、足を踏み外すのではないかとハラハラしました。
何故かわかりませんが、内側に鍵がついていませんでした。一緒に行った仲間は使用中にドアをあけられてしまいました。家人は生きた心地がしなかったそうです。
使用済みのトイレットペーパーは持ち帰ります。
し尿は、数年に1度、ポンプなどで吸い上げてヘリで運搬し、処理します。このとき、ごみやトイレットペーパーが入っていると作業が大変になるそうです。
小屋を離れたら、用を足すときは携帯トイレを使用します。自分の排泄物といえども、重いし臭いも気になります。自分で担ぎ下すことを考えたら、避難小屋のトイレは何と有難いことか。
ヒサゴ沼避難小屋(キャンプ指定地)の落ち着いた雰囲気は、他の避難小屋とは一線を画します。様々なテント場を訪れた人が最後に行きつくような、玄人好みの場所。ぜひ1度は訪れてほしいと思います。
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