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登山用コンパスの選び方+初心者におすすめのコンパス3選

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コンパス 登山

「登山でコンパスが必要だということはわかったので購入しようと思っているが、何を買ったらいいかわからない。おすすめのコンパスを教えてほしい。」

こんな悩みを解決するための記事です。

 

 

この記事を書いているわたしは、社会人山岳組織を主宰し、地図とコンパスの読図講習会講師をたびたび務めています。

コンパスの購入についてアドバイスを求められる機会も多く、そんなときにお伝えする内容をまとめました。

初めてコンパスを購入する人は「何を買っていいかわからない」人が大半を占め、廉価品を購入して後悔し買い直してみたり、反対に、高性能のコンパスを購入して使いこなせないケースも見かけます。

本記事では、「登山用コンパスの選び方」と「初心者におすすめのコンパス」をまとめました。

コンパスの必要性が分かっていて、これから登山計画を立てたり、道迷い防止のための地図読みに活かそうとしている登山初心者向けに書いています。

前提として、「コンパスはいらない」という選択肢はありません。スマホの地図アプリも、紙の地形図とコンパスによる読図技術が土台にあってこそ活きてきますから、コンパスの代替品にはなりません。

≫参考:遭難原因ワースト1は「道迷い」
≫参考:登山用「スマホGPS」「地図アプリ」おすすめ活用法

 

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登山用コンパスの選び方

登山 コンパス 地図

登山用コンパスを選ぶポイントは下記のとおりです。 

  • ベースプレート型を選ぶ
  • 登山用コンパスに大切な5つの要素を押さえる
  • 値段と品質のバランスを考える

登山用コンパスにはいくつか種類があるので解説します。

結論から言うと、登山にはベースプレートコンパスが最適です。どんなメーカーでもこのタイプを出しているので、同等スペックで比較するといいでしょう。

なお、人によっては「レンザティックのほうが精度が高くて良い」といいますが、基本的には上級者向けです。道迷いしないためのツールとしての役割をはるかに上回る機能があり、初心者にはハードルが高いと考えます。

 

コンパスの種類

登山用コンパスには、大別して下記の種類があります。

  • ベースプレートコンパス
  • レンザティックコンパス
  • オイル式コンパス
  • ドライ式コンパス

 

ベースプレートコンパス

登山で使用するならベースプレートコンパスが最適です。

地図と合わせて使用することを前提としたコンパスで、「マップ用コンパス」「オリエンテーリングコンパス」とも呼ばれます。

透明なコンパスとプレートで出来ているので、地図の上に置いてもコンパス越しに地図を読むことが可能。

コンパスの長辺は、地図上で登山道や目標物の方向を割り出したり、縮尺スケールで距離を算出するときにも使用します。

それもあって、プレートが短いタイプより長いほうが、使いやすくておすすめです。ルーペが付いているタイプは、年を重ねるほど有難味が増してきます。

 

レンザティックコンパス

レンザティックコンパスは上級かつマニアックな人向けです。

現在地の把握、目的地の方角を詳細に測ることができるコンパスで、軍用にも用いられています。

ミル(mil)表示の細かい目盛を読むためのレンズとのぞき窓がついた蓋が付き、そこから目標物をのぞきこんで測定します。

ミルとは、円周360°を6,400等分した単位のこと。そこまでの精度は夏山の尾根道ではまず求められないのと、操作が難しいことから初心者向きではありません。

 

オイル式コンパス

針を含むカプセルケース内にオイルを充填したコンパスです。

オイルの抵抗でコンパスの磁針のブレが少なくなり、素早く安定させることができます。測定精度が高く、扱いやすいタイプです。

気温が低いとオイルの粘度が高くなるので、製品によって使用可能温度が設定されています。

経年劣化等によりカプセル内に気泡が入ることがあり、磁針の動きを妨げるようであれば買い替えが必要になります。

 

ドライ式コンパス

針を含むカプセルケース内に空気を充填したコンパスです。

磁針の抵抗がほとんどないため速く動作しますが、動きが安定するまでに時間がかかり、読み取りがどうしても不正確になってしまいがちです。

磁針を静止させるストッパーが付いたタイプのコンパスは、度数を読み取る必要がなく、ダイレクトに地図上に位置を記入することができます。

オイル式とは違い、使用可能温度帯の幅が広いのが特徴です。

補足

デジタルタイプのコンパスは、電池が切れるという致命的なリスクを抱えているので、最初から選択肢には含みません。
蓄光タイプも、暗くなってから行動する前提にないので除外します。もしものときは、暗くなる前にビバークするのが登山の大原則です。

 

 

登山用コンパスに大切な5つの要素

コンパス ルート確認

1.精度

コンパスを使う場面は、地形図を見ながらルートの詳細を読み取る計画の段階と、現地で現在位置を把握し進行方向を割りだすときの、大きく2つあります。

どちらも、コンパスの指し示す方向が正確であることが命。

加えて、針のブレが少なくて方角が読みやすいこと、度数リングの目盛が読みやすいこと、リングの回しやすさなど、使い勝手の良さも精度に大きく関係してきます。

安価なコンパスは度数リングにガタ(遊びが大きい)があって、使い物にならないこともあります。また構造上、目盛の読み取り誤差が大きいものもありますので注意しましょう。

 

2.耐久性

品質の善し悪しは価格に反映されます。

大手メーカー製の標準モデル(実勢価格3,000円程度以上)であれば、耐久性に問題はないでしょう。

ただし、通常使用による摩耗や損傷は発生しますし、年月により自然とプレートが色あせるなど経年劣化します。

ぎりぎりまで使って「山行中に壊れた!」とならないように、ほどほどのタイミングで買い替えが必要です。

 

3.シンプルな操作性

過酷な状況下でも正確に操作できることが重要です。

そのためには、シンプルで直感的に操作できるコンパスを選ぶこと。

「悪天候の中、疲労困憊して頭も働かないときに、何も考えずに操作できるか」

そんな観点で選ぶといいでしょう。

 

4.メトリック

メトリックとはメートル法による表示のことで、プレートについている目盛がセンチ表示になっているコンパスをメトリックコンパスと言います。

プレートの目盛は地形図の距離を測るときに使用します。

1:25000地形図なら地図上の1cmは250m、4cmで1km。1:50000地形図なら1cmは500m、4cmで2kmです。

インペリアルというヤード・ポンド法のコンパスは、プレートの目盛がインチ表示になっています。

間違ってインチ表示のコンパスを買ってしまうことがないよう注意しましょう。とくに並行輸入品は要チェックです。

 

5.動作温度

いずれ冬期登山もしたいと考えている方は、動作温度の下限に要注意です。

-20℃程度では、冬山に持っていくのは不安です。-40℃前後まで動作保証しているコンパスを選びましょう。

 

値段と品質のバランスが大切

コンパスの品質の高さは価格に反映されます。

高価なものは精度がよくて、優れた機能性と耐久性も兼ね備えています。

ところが、高品質で多機能なコンパスがいいかというと、必ずしもそうではありません。

たとえば測量レベルで使えるハイエンドモデルは、プロ仕様をうたうだけあって機能が多くて操作が複雑。自在に使いこなすには相当な実践を重ねていく必要があります。

夏山の尾根歩きがメインの一般登山者にはオーバースペックですし、ましてや、初めてコンパスを購入して使い方を練習しようとする初心者には不向きです。

「値段」と「自分に必要な品質(機能)」のバランスを見極めることが大切です。

 

 

登山初心者におすすすめのコンパス(3つ厳選しました)

初心者におすすめのコンパスを3つ選びました。3つとも、初心者でも使いやすく、上級者も満足できるコンパスです。

選定条件は下記の通りです。

  • ベースプレート型
  • オイル式
  • 1:25000、1:50000の縮尺スケール付き

なお、オイル式とドライ式にはそれぞれメリットとデメリットがあり、好みによるところも大きいのですが、安定性が高く扱いやすいという点でオイル式がおすすめです。

 

信頼で選ぶなら「SILVA №3

コンパスと言えばシルバ」「シルバと言えば№3」というほどの名品です。

  • メーカー表示価格: 4,212円
  • サイズ:108×54×10mm
  • 重量:33g
  • オイル式
  • 使用可能温度:-40℃~+60℃
  • 中国製
  • プレートトップにセンチ、左辺に1:25000縮尺スケール、右辺に1:50000縮尺スケール、ルーペ付き

液体充填式(オイル式)を発明したスウェーデン人オリエンテーションチャンピオンが、1933年に創立したのがSILVA社。オイル式はいまやコンパスの主流です。

探検家の故植村直己氏がグリーンランドを横断する際に、カナダで20種類のコンパスを購入したが極限の状況下で最後まで使用に耐えたのはシルバコンパスだけだった、という話は世界的にも有名な話です。

公式ホームページに記載されているように、品質に対する信頼性の高さは他を寄せ付けません。

 

コスパで選ぶなら「SUUNTO A-30

コスパに優れているのが「スントA-30」です。

  • メーカー表示価格:3,240円
  • サイズ:114×57×10mm
  • 重量:30g
  • オイル式
  • 使用可能温度:-30℃~+60℃
  • フィンランド製
  • プレートトップに1:50000縮尺スケール、左辺はセンチ、右辺は1:25000縮尺スケール、取り外し可能な首ひも付き、蛍光マーク付き、ルーペ付き

SUUNTOは、1936年、フィンランドのオリエンテーリング選手だった創立者が、世界で初めて液体充填式コンパスの製造方法を開発して特許を取ったのが始まりです。

参考までに、スントA-30とよく比較される下位機種A-10についても触れておきます。

A-10は必要最低限の機能が付いて手頃な価格ですが、プレートの左辺がセンチ(メートル法)、右辺がインチ(ヤード・ポンド法)表示で完全なメトリックコンパスではありません。

極限状態に置かれた時、インチ表示が混乱を招く可能性がゼロではないことから、登山初心者.comではA-30をおすすめします。
≫参考:SUUNRO公式ホームページ「SUUNTO A-10 NH Compass」

 

日本製にこだわるなら「YCM OL-3RN

安心の日本製オリエンテーリングコンパス「OL-3RN」。冬期登山はしない人向けです。

  • メーカー表示価格2,300円
  • サイズ105×54×10mm
  • 重量:30グラム
  • オイル式
  • 使用可能温度:-20℃~+60℃
  • 日本製
  • プレートトップに1:50000の縮尺スケール、右辺に1:25000の縮尺スケール、左辺にセンチ、20×20mm約5倍のルーペ付き、90cmのナイロンストラップ付き、長時間発光するルミノーバ使用モデル

ワイシーエムは、1925年から方位磁石を作っている日本のメーカーです。

ここのレンザティックコンパスは、陸上自衛隊で採用されていることでも有名ですね。

使用可能温度の下限が-20℃のため、冬山では正しく動作しない可能性がありますが、夏山登山しかしない人なら問題ないでしょう。

 

 

コンパスの値段の差はどこに出る?(検証してみました)

コンパス画像A

左:廉価品  右:シルバコンパス

「コンパスの値段って、1,000円程度から1万円を超えるものまでピンキリ。パッと見わからないけれど何が違うの?」

わたし自身がずっと抱えていた疑問です。

この値段の差はどこにどう現れているのか、疑問を解消すべく、量販店で売っている「1,000円程度の無名廉価品コンパス」と「シルバNo.3」を比較検証してみました。

 

検証内容:針の精度、目盛の見やすさ、扱いやすさ等

✔針の精度

コンパスを振って針が安定するまでの時間を測定しました。

  • 廉価品:約8秒
  • シルバコンパス:1秒以内

廉価品はドライ式です。

針の振れが大きく、振れが収束するまで8秒間じっと待たねばなりませんでした。

歩きながらコンパスを見ることもある登山では、使用に耐えられないレベルです。

 

✔目盛の見やすさ

  • 廉価品:目盛読み取り誤差は2°。目盛と数字が小さく見ずらい。
  • シルバコンパス:目盛読み取り誤差は0.5°
廉価コンパス

廉価品:50°にセットした状態

 

廉価品コンパスの目盛りは、ベースプレート中央の赤い線に合わせます。

写真からは分かりにくいのですが、目盛とベースプレートの間には3mmの空間(高低差)がありまして、そのために見る角度によって誤差が生じます。検証では2°ありました。

さらに、目盛の背景が白く塗られているため、線がピッタリ重なっているかどうかわかりません。

シルバコンパス

シルバコンパス:50°にセットした状態

 

シルバコンパスの目盛は、黒いリングについた白い線に合わせます。

透明リングについた目盛と黒いリングの高低差は、プラスチックの厚みである1mmで、見る角度による誤差は0.5°でした。

目盛りは透明リングに付いているので、黒いリングについた線との重なりがハッキリわかります。

どちらのコンパスにも目盛の読み取り誤差は生じますが、廉価品はシルバの4倍の誤差が出る結果になりました。

 

✔扱いやすさ

廉価品:リング回転時にほとんど抵抗がなく、ちょっと触れただけで動く

シルバコンパス:リング回転時に絶妙な抵抗があり、動かしやすく、かつ勝手に動くことがない

目的地の角度をセットしても、何かが接触した拍子にずれてしまうのは、コンパスにとって重大な欠陥だと思います。

 

結論:コンパスの品質の高さは価格に反映される

高価なものは精度が高く、安全性も高いと言えます。

廉価品とシルバコンパスの違いは、パッケージに入った状態ではわからないと思います。ただし、こうやって比べてみると違いは一目瞭然。

廉価品に関しては、目盛の読み取り誤差が大きすぎますし、リングが接触によって簡単に回ってしまうのは致命的です。ある程度予想していたことですが、ここまで違いがあるとは驚きでした。

素材や造りによる耐久性は比較検証できていませんが、廉価品コンパスは、この検証で何度か使用しているうちにコンパス部分とプレートの接着が外れてきてしまいました。屋外での過酷な使用に耐えうるかどうかは、「推して知るべし」でしょう。

せっかく買うのですから、少々値段は高くても、高品質のコンパスを買うべきなのは明らかです。

 

 

長持ちさせる秘訣

使い方を誤れば、コンパスの寿命は短くなります。どんな点に注意すればいいか解説します。

経年劣化には抗えません

劣化したコンパス

コンパスは消耗品です。

上の写真にあるのは、17年前に購入したシルバコンパスです。経年劣化は否めません。

針が錆びてオイルに溶け出し、黄色く変色しています。度数リングの数字も消えかかり、気泡も入っています。度数リングの動きが渋くなって、回すのに力も要るようになりました。

使用するうえで問題は出ていませんが、こうなったら買い替え時です。

 

踏んだり圧力をかけない

当然ですが、踏んだら壊れます。

ザックの中で荷物に長時間圧迫される状況も、液漏れや気泡が入る原因になるので避けましょう。

コンパスは、すぐに取り出せる状態で持ち歩くのが鉄則です。

  • 首からヒモでぶら下げる
  • ウエストポーチに入れておく

ただし、冬期登山で山岳スキーやスノーボードを使用するときは、首からコンパスがブラ下がっていると、滑降しているときに木や枝に引っかかり、重大な事故につながる危険があります。

この場合、首からぶら下げたコンパスは、必ずウェアの中に収納してください。

 

強い磁気にあてない

強い磁気が出ているものの近くに置いているとコンパスが狂います。

もっとも注意が必要なのがスマホ。スマホはとても強い磁気を出しているので、長時間コンパスを近づけていると、磁気が狂うことがあるのです。最低でも30cm離すようにしましょう。

万が一影響を受けて磁針がおかしな方を向いたら、下記の手順で直します。

①磁石を用意する

②磁石のS極をコンパスのN極(北を指す赤い針)に1時間程度付ける

こうすることで磁気が戻り、正しい方角を指し示すようになります。

なお、磁石は学校で使う棒磁石がベストです。S極とN極がはっきり分かれているものを選んでください。

 

ここまで、「登山用コンパスの選び方」と「初心者におすすめのコンパス」を解説しました。

購入したあとは実践あるのみです。

山行ルートの地図を読む⇒実際のフィールドで確かめる⇒感覚をつかむ⇒得られた情報をフィードバックして次の山行に備える

このサイクルをグルグル回していくことで、地図読みの理解度を深めていくことが可能です。

 

※コンパスは持っているけれど、使い方が分からない人は、「コンパスの使い方」もご覧ください。

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