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旭岳~間宮岳~中岳温泉~裾合平~姿見駅 周回コース登山ガイド

更新日:

 

旭岳周回コースタイトル

大雪山の変化に富んだ自然を満喫できる日帰り周回コースです。地球創生をほうふつとさせる荒涼とした大地を歩き、温泉で火山活動の恩恵を楽しみ、見渡す限りの高山植物の花畑をめぐります。

 

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基本データ 旭岳~間宮岳~中岳温泉~裾合平~姿見駅

標高1600mまでロープウェイで登ったあと、北海道の最高峰「旭岳(2,291m)」に登頂。天上の楽園と呼ばれる美しい山岳風景に身を投じます。

旭岳

 

中岳温泉では野湯で疲れを癒します。硫黄の臭いが漂う白濁した湯は、ここが活発に活動する火山地帯であることを感じさせます。

中岳温泉

 

裾合平の高山植物群落は国内屈指の規模。春を待ちわびたように一斉に開花する花々を見ながら、旭岳の山腹を巻くようにロープウェイ姿見駅へ。

裾合平 チングルマ

 

距離12.3km
標準タイム約6時間30分(休憩を含まない行動時間)
難易度中級
水場なし

時期によっては裏旭キャンプ指定地の雪渓で取水できます。その場合は、煮沸するか浄水器を使用してください。

山小屋なし

姿見ノ池近くに旭岳石室(無人)がありますが、避難小屋のため、緊急時以外は宿泊できません。

駐車場旭岳ロープウェイ駅前に有料駐車場、100mほど手前に無料公共駐車場
トイレ旭岳ロープウェイ山麓駅、姿見駅

時期により、コース上に携帯トイレブースが設置される場合があります。

子供(9歳)と行ったときは、のんびり歩いて8時間弱でした。距離がありますので達成感はひとしおです。

ただし、実際の所要時間は個人差があるほか、天候や体力などによっても異なります。あくまでも目安としてお考え下さい。

ルート上には時期によって雪渓が残ります。日ごろ登山をしない人が、観光目的で行くルートではありません。

旭岳で最も多いのは道迷い遭難です。そのほとんどが雨やガスで視界不良の下山時です。そのため、山頂などの要所々々には、ルートの方角が表示された道標が設置されています。

しかしながら、地形図とコンパスを使えなければその道しるべを活用することができません。読図に不慣れな人は、視界が悪いときは山行を避けたほうがいいでしょう。

 

 

ルート概要

旭岳周回コース地形図

タイム(約6時間30分、休憩含まず)

姿見駅~(2:00)~旭岳~(1:00)~間宮岳~(0:30)~中岳分岐~(0:30)~中岳温泉~(0:40)~裾合分岐~(1:50)~姿見駅

 

姿見駅を降り立つと、白い噴煙をあげた旭岳が目前にそびえ立ちます。

旭岳

 

ほどなくして姿見ノ池避難小屋(通称:旭岳石室)が見えてきます。小屋は緊急時以外、使用できません。

旭岳石室

 

高度を上げていくにつれ登山道は色を失い、無機質な砂レキの斜面を登る登山者が点々と続きます。

旭岳 姿見ノ池

 

道標にあるのは、標高、緯度経度(Lat./long.)、下山ポイントへの方位。旭岳では下山時の道迷い遭難が非常に多いことから、下山方向を指示しているのが特徴的です。

旭岳の道標

 

登山道は不明瞭です。雨天時や視界不良時は、わずかについた踏み跡を見失ってしまうので注意が必要です。

旭岳 縦走装備

 

頂上手前でニセ金庫岩と金庫岩が現れます。かつては下山時にこの二つの岩を見間違えてルートを外れ、遭難する事故が多発しました。現在は迷い込まないように、登山道にロープが設置されています。

旭岳 ニセ金庫岩

悪名高きニセ金庫岩。金庫岩とよく似た立方体の岩です。

旭岳 金庫岩

本物の金庫岩。ニセ物からS字カーブを描いてほどなくして現れます。

旭岳まで約2時間。広くなだらかな丘のような山頂では、たくさんの登山者が思い思いにくつろいでいました。

旭岳 山頂

 

山頂からの眺望を楽しんだら、残雪の白が鮮やかな裏旭へ。粒の細かいレキの斜面は靴底の溝が深い登山靴でもスリップしやすく、慎重に降りていきます。

裏旭

 

ここは裏旭キャンプ指定地。北海道三大縦走路のひとつ大雪山「旭岳~トムラウシ山」縦走でよく利用されています。

ここの雪渓はその年によって規模も違えば、無くなる時期もまちまちです。いつもあるとは限りませんので注意しましょう。エキノコックス症感染リスクがあるため、生水は絶対に飲んではいけません。煮沸するか、浄水器を利用します。

裏旭キャンプ指定地

 

徐々に高度を上げていくと、大地に少しずつ緑が増えていきます。行く先々全てが絶景。絵になる景色の連続です。

熊ヶ岳付近

 

構造土がパッチワークのように広がります。

構造土

 

間宮岳分岐が現れます。北海岳方面と黒岳方面に分岐する大雪山の交通の要所だけあって、ベンチが置かれています。

間宮岳分岐

 

約3万年前の噴火でできた直径2.2kmのカルデラ「お鉢平」です。標柱がなければ気づかずに通り過ぎてしまいそうな間宮岳のピークを踏み、右手にお鉢平を望みながら中岳分岐へ向かいます。

お鉢平

 

中岳分岐で左に折れ、中岳温泉に向かいます。

中岳分岐

 

高度を下げていくと、眼下に中岳温泉が見えてきます。雄大な景色への没入感を味わいながら浸かる野湯は格別。姿見駅から直接ここを訪れる人も多い人気スポットです。

中岳温泉

 

ひとしきり疲れをいやしたら、国内屈指のチングルマ群生地として有名な裾合平へ。

例年7月中旬くらいが見ごろです。雪解けを待ち望んだかのように一斉に咲き出す様子は圧巻のひと言。盛りの時期にタイミングを合わせるのは難しいですが、何度でもトライして見てほしい景色です。

裾合平 チングルマ

 

アップダウンがなくなって正面に旭岳が見えてきたら、グルッと1周した証。もうすぐ姿見駅に到着です。

旭岳

 

 

おすすめ時期  

このコースの一番のおすすめ時期は、高山植物が盛りの7月中旬。周辺の残雪と新緑のコントラストも目に鮮やかで、とても美しい季節です。

裾合平にはピンク色のチングルマが咲いています。皆さんも探してみてください。

ピンクのチングルマ

 

タカネシオガマ

タカネシオガマ

クモマユキノシタ

クモマユキノシタ

エゾイワツメクサ

エゾイワツメクサ

メアカンキンバイ

メアカンキンバイ

イワブクロ

イワブクロ

ミヤマリンドウ

ミヤマリンドウ

コマクサ

コマクサ

イワヒゲイワヒゲ

エゾコザクラ

エゾコザクラ

エゾノツガザクラ

エゾノツガザクラ

 

 

注意点 

コースを歩く際に注意すべき点を3つ紹介します。

道迷い

旭岳は道迷い遭難が大変多い山です。そのほとんどが視界不良の下山時に発生しています。

登山道は植生がほとんど無くて不鮮明。わかりやすいランドマークもありません。視界不良時にはレキにわずかについた踏み跡もはっきりしなくなりますから、非常に道迷いしやすくなる、というわけです。

もともと登山は下山のほうが道迷いしやすいものです。登りは目指すところ(ピーク)は1カ所ですが、下山では尾根が麓に向かっていくつも分かれていきます。降りるべき尾根を1つ間違えただけで、どんどんコースを外れてしまいます。

道迷い遭難しないために、地図とコンパス、またはスマホGPS登山アプリを使って、現在地と進行方向の確認を怠らないようにしましょう。

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気象

大雪山では気象遭難に注意が必要です。旭岳は標高2,291mですが、気象条件は厳しく、本州の3,000m級の山に匹敵するといわれています。

夏でも寒いのが大雪山です。7月はまだ雪渓がありますし、一部の雪は融け切らずに残ります。紅葉が始まる9月になると雪がちらつくこともあります。

森林限界を過ぎて尾根に出てしまえば、樹木など日差しや風雨をさえぎるものがなく、吹きさらしです。避難しようにも、避難小屋はありません。

熱中症などの暑さ対策はもちろんですが、低体温症などの寒さ対策も万全に。夏山シーズンでも、厚手のフリースやダウンの中間着は必ず持ち歩いてください。言うまでもなく晴れていても雨具は必携です。

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トイレ

ロープウェイ姿見駅から先にトイレはありません

期間限定で携帯トイレブースが設置されることはありますが、設置場所がその年によって変わるようです。事前にビジターセンターに確認するか、最初から「無い」ものと考えて計画を立てるといいと思います。

コース上はどこも開放感あふれる地形です。用を足したくても隠れる場所がありません。加えて、登山者の往来も途切れることがありません。

ですので、女性は目線除けになるものを持っていると安心です。家人は折り畳み傘を持ち歩いています。トイレ用のポンチョもいいと思います。

そして用を足すときは、必ず携帯トイレを使用してください。これは登山者としての最低限のマナーです。

携帯トイレは旭岳ビジターセンターや姿見駅舎で購入できます。使用済みの携帯トイレは旭岳ビジターセンター玄関前の回収ボックスを利用してください。

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持っておきたい装備

最後に記事で紹介した装備をまとめてご紹介します。

 

大雪山の自然環境をうかがい知ることができるこのコース。旭岳のピストンだけなんて、もったいない!!ぜひ中岳温泉まで足を延ばして、大雪山のプチ縦走を味わってほしいです。

なお、姿見駅周辺には観光客も多く訪れます。ロープウェイは順番待ちの列ができるので、なるべく早い時間に乗りましょう。

 

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