5年間継続していた山岳保険を見直しました。
きっかけは、育児のためしばらく登山から遠ざかっていた妻が再開したこと。
山岳保険に2名分加入することになるので、保険料を安く抑えて、家計の負担を減らすことが目的です。
結論から先に言うと、他社の保険に変更したことで、2人分で【1年目2,250円】【2年目以降6,030円】安くなりました。
その経緯をお話します。
既に山岳保険に入っている人はもちろん、これから入る人にも役立つ情報です。ぜひ山岳保険選びの参考にしてみてください。
記事の内容
1.保険料を安くする方法と注意点
2.具体的な見直し手順
山岳保険は一度入ってしまうと、いざという時以外は保険証券を見ることもなく、どんな補償内容になっているのか、免責事項は何なのかすらわかっていない人が多いと思います。
かつての自分もそうでしたが、周囲から言われるがまま内容をよく理解せずに加入している人もいるでしょう。
今回は我が家の見直し経緯から、「山岳保険の保険料を安く抑えるための見直し手順」などを解説していきます。
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山岳保険の保険料を安くする方法と注意点
山岳保険の保険料を安く押さえるためには、他に良い保険を探すより、今入っている保険を見直すことが先です。
次のような点に注意しながら見直してみましょう。
なお、山岳保険についてある程度知識がある方に向けて書いていますので、基本的なことはこちらの記事をまず読んでみてください。
登山初心者のための山岳保険の選び方
遭難救助は無料ではありません。 場所や緊急度に応じて、警察や自衛隊が出動することもあれば、地元の民間救助隊が捜索することもあります。 基本的に公的機関による救助や診察を受けた場合は費用を求められること ...
ムリ・ムダを無くす
「あればいい」備えで着膨れしているかも。本当に必要な補償だけに絞ります。
✔救援者費用や遭難捜索費用の見直し
絶対に外せないものと言えば、「救援者費用」や「遭難捜索費用」ですよね。
これがなければ何のための保険なのか分かりません。
保険金額は100万~500万程度の幅から選択できますが、高額になるほど保険料も高くなります。
何かあった時はお金の面で誰に迷惑をかけるのか、自分の財産でどのくらいまかなえるのか、など、厳しい現実を見つめる作業です。
✔傷害死亡・後遺障害の見直し
傷害死亡・後遺障害も手厚くすればするほど、保険料に跳ね返ってきます。
なかには「生命保険でカバーしているから、死亡保険金は要らないよ」という人もいるでしょう。
山岳保険は、基本的に普通傷害保険に登山者向けの特約保険をつけたものですから、特約を外すことはできても、本体である主契約を無くすことはできません。
「商品は要らないからオマケだけ欲しい」と言っているようなものです。
ただし、ひとつだけ補償を外す方法があります。
JRO(日本山岳救助機構合同会社)のような特化型保険に変更するのです。
JROの山岳遭難対策制度では、遭難救助にかかった費用550万円(2019年4月1日より)まで実費補てんする一方、よくある入院・通院・死亡・個人賠償責任などに対する補償は一切ついていません。※
今回、我が家はこの保険に乗り換えました。のちほど詳しく説明します。
✔入院・手術・通院保険金の見直し
金額をある程度選べるほか、補償がついていないタイプの保険もあります。
この補償をつけると保険料が一気に上がります。
金額が手厚くなればなるほど、保険料も高くなります。
ほとんどの人は、生命保険で入院・手術・通院の補償をつけていると思います。
登山でケガをして入院・手術・通院しても、生命保険でカバーできるんですよね。
本当に必要な補償なのか見極めてくださいね。
✔個人賠償責任の見直し
個人賠償は、いろんな保険に自動的についていることが多いので、入っていることに気づいていないケースがよくあります。
複数に入っていても、なにかあったときにそれぞれの会社から保険金がもらえるわけではありません。
3社でそれぞれ10万円ずつの補償がついた保険に入っているとすると、上限は加算されて30万円ですが、10万円の保険金が下りる事故では合計で10万円しか受け取れません。
世帯主が入っている保険で、配偶者や子どもも補償される場合があります。
保険料のムダにならないように、入っている保険を総ざらいして、個人賠償がついていないか調べてみることをおすすめします。
個人賠償が自動的についている保険には次のようなものがあります。
- 自動車保険
- 傷害保険
- 火災保険
- 借家人賠償責任保険
- ペット保険
- こども保険
- 自転車保険
もしも複数に入っていたら、いちばん補償が手厚いものに集約したほうが経済的です。
見直しはライフスタイルに合わせて定期的に行う
ライフスタイルやライフステージの変化に伴って、山岳保険に必要な補償も変わってきます。
でも、日々の忙しさにかまけて「分かってはいるんだけど、ま、いいか」と放置しているケースがよくあります。
一般的に、結婚や離婚、子育て、転職、定年退職などの人生の節目や、生活様式の変化があったときは、生命保険などの見直しをするタイミングと言われています。
山岳保険も見直しのタイミングがあります。
✔山行スタイルの変化
山岳保険は使用する道具によって種類が違います。
ハイキング程度の山に行っていた人が、いつの間にかザイルやアイゼンを使用するような難易度の高い山に行くようになった。
よくあるケースですが、登攀用具を使う山行でもしものことがあれば、ハイキング保険では補償されません。
今の保険が山行スタイルに合っているか、見直しが必要です。
✔ライフスタイルの変化
子どもが独立していたら、死亡保険金はそんなに手厚くする必要ってありませんよね。
定年退職していたら、年齢的に病気を起因とする事故や遭難が心配です。疾病を起因とする遭難も補償される山岳保険を選んだほうがいいでしょう。
一般的に、山岳保険は傷害保険をベースにしているため、「偶然かつ外来による事故」しか補償されません。
病気が原因で事故が発生しても補償されるのは、ハイキング保険ではなく、日山協山岳共済会の山岳保険「登山コース」やJROのような「特化型保険」ですから、見直しが必要です。
具体的な見直し手順
手順①:入っている保険の種類や内容を調べる
手順②:現状と合っているか確認する(使用する道具、頻度、補償内容)
手順③:いらない補償、手厚すぎる補償を削減する
手順④:支払方法を見直す
➡単発から年払いへ、年払いから3年払いへ・・・
手順⑤:他社の保険に乗り換える
➡様々な保険商品と比較検討して、よりベターなほうに乗り換える
我が家の見直し経緯
我が家がどの様に見直したか、過程を振り返ってみます。
✔手順①:今の保険内容を確認する
これまで入っていた保険は、日山協山岳共済会の「登山コース」で、補償がいちばん少ないタイプです。
- 傷害死亡・後遺障害 140万円
- 遭難捜索費用 100万円
- 傷害入院保険金日額 なし
- 傷害手術保険金 なし
- 傷害通院保険金日額 なし
- 個人賠償責任 1億円
年払保険料4,500円、年会費1,000円、合計5,500円です。
同じ保険に妻も入れば、年払保険料4,310円、年会費1,000円が追加され、2人で年間10,810円の支出になります。
※職業によって保険料が変わります
※最新の保険料は下記よりご確認ください
✔手順②:現状と合っているか確認する
わたしも妻も、ザイルやピッケルなどの登攀用具を使います。
年齢的に病気に起因する事故やケガも心配なので、疾病を起因とする事故や遭難も補償してくれる保険であることが条件です。
年間通して何度も登りますから、短期の契約ではなく、最低限でも年間契約しないと、手間もお金もかかります。
ここまでは今までの保険で問題ありません。
でも、保険料を安くするためには、補償内容に手をつけないといけませんから、大ナタを振るいます。
✔手順③:いらない補償や手厚すぎる補償を削減する
別途入っている傷害保険の特約に、個人賠償責任が3億円ついていることがわかりました。
配偶者や家族も補償されるので、わたしも妻も個人賠償責任を付加する必要はありません。
なのでカットします。
登攀用具を使って登山をしていたときに死亡・高度障害を負った場合、生命保険でも保険金が給付されることも保険会社に確認。
入院・手術も医療保険でカバーできる(故意によるものや、噴火・地震によるものなどは免責)とのことなので、
遭難救助費用だけあればいい
という結論に達しました。
冒頭でも説明しましたが、普通傷害保険では死亡・高度障害を外すことはできませんから、保険の種類を変えないといけません。
遭難救助費用だけ補償されるタイプの山岳保険に切り替えます。
ちなみに、「保険金を下げたり補償を外してもわずかしか安くならない」、と思う方もいるかもしれませんが、今回の見直しの優先目標は「保険料を安くおさえる」ことなので数百円でも無駄にできません。
✔手順④:支払い方法を見直す
日山協山岳共済会の保険支払い方法は年払いしかありませんので、支払方法では保険料を安くすることはできません。
そもそも保険を乗り換えるので、新しい山岳保険で支払い方法を見直します。
✔手順⑤:他者の保険に乗り換える
遭難対策費用のみを補償する特化型保険を扱う会社は何社かありますが、JRO(日本山岳救助機構合同会社)を選びました。
選んだポイントはこちら。
- 会社の安定性や信頼性
- 年会費がない(入会金のみ)
- 家族割引がある(入会金・年会費ともに500円引き)
季節や用具、屋外活動の種類、年齢、職業、山行スタイルは問わず、国内の山岳スポーツ中に起きた事故に対応。オールインワンです。
捜索救助にかかった費用は550万円まで補てんしてくれます。
550万円で全部まかなえるかどうかはケースバイケースですが、ひとつ確実に言えるのは、「どこで遭難したのか分からない」人を探すのがいちばん費用がかかるということ。
警察に登山届を出し、家族や友人、職場の人に伝えておく、という登山者としての基本を守ることが、費用を押さえる上で大切なのです。
熱中症や高山病などの病気遭難事故もカバーしてくれますが、既往症を起因とするものについては30%~100%まで削減の割合が決められています。
ちなみに、医師から止められているのに山に行って何かあったら支払われません。
JROの保険料は2人で合計8,560円
- 本会員(わたし):入会金2,000円(税別)+会費2,000円(税別)+事後負担金500円
- 家族会員(妻) :入会金1,500円(税別)+会費1,500円(税別)+事後負担金500円
日山協山岳共済の「登山コース」保険料は2人で合計10,810円
- 会員(わたし):年会費1,000円+保険料4,500円
- 会員(妻) :年会費1,000円+保険料4,310円
1年目は2,250円安くなり、2年目以降はJROの入会金がなくなるため6,030円安くなります。
※事後負担金は変わる可能性があります
事後負担金とは、JIROが実際に支払った補てん金の総額を会員総数で割ったもので、あとから支払います。ここ数年はだいたい500円程度で推移しています。
※支払い方法は年払いのみです。
今回、我が家は妻が新たに山岳保険に加入することになったことから、家計の負担を減らすために見直しをしました。
もともと入っていた山岳保険は保険料が安いほうでしたから、見直しても「たいして安くならないだろう」と期待していませんでしたが、結果的にけっこうな金額が削減できました。
時がたてばライフスタイルが変化し、それとともに山岳保険も過不足が発生してきます。
皆さんにも、定期的な見直しをおすすめします。