山に登っていると、風雪に耐えるかのように地を這うダケカンバをよく見かけます。その姿は、山岳地帯の厳しい環境を雄弁に物語っています。
ところで、ダケカンバと白樺、見分けがつきますか?両方ともカバノキ科カバノキ属で、よく似ています。
標高の高いところに生えている曲がりくねったのがダケカンバで、白樺は標高の低い所にある樹。
そんなイメージで覚えていたわたしですが、樹木講習会でちゃんと見分けるポイントを教わってきましたので紹介します。簡単に覚えられますよ。
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樹形や場所は、ダケカンバと白樺を見分ける決め手ではない
「標高の高いところに生えている曲がりくねった樹形がダケカンバ、下界で真っ直ぐ伸びているのが白樺」だと思ってました。
ところがあるとき、自宅近くの公園にダケカンバがあるのを発見。天に向かってすっくと伸びています。
調べたところ、これらは自生していたのではなく、25年前に公園を造成する際に植林したことが分かりました。成長が早いとは聞いていましたが、こんな大木になるとは驚きです。
この一件で、風雪の影響を受けなければ、この通り、樹高も高く真っ直ぐに伸びるし、北海道では平地でも生育していることが分かりました。
つまり、樹形や生育場所は、ダケカンバと白樺を見分ける決定的な決め手にはならない、ということです。
まずはダケカンバと白樺の基本情報です。
ダケカンバ
ダケカンバは、森林限界より上の高山帯でも育つ寒さに強い樹です。
漢字なら岳樺で、標高の高いところに生育する樺の木という意味。樹皮が薄い紙のようにはがれることから「草紙樺(そうしかんば)」の別名もあります。
山岳地帯に見るダケカンバは、風雪に耐えるかのように枝や幹を曲がりくねらせ、樹高が低い印象がありますよね。
一方、平地のダケカンバは、樹高も高く、幹も太くてまっすぐに伸び、山岳地帯のダケカンバと同じ樹だとは思えません。
つまり、環境適応能力が高くて、自在に樹形を変えることができるのです。寿命は白樺よりはるかに長く、巨木に成長します。
資源としてはどうかというと、家具材、内装材、指物の材料などの利用も一部ありますが、虫の食害痕が現れやすい上に、成長すると幹の中心部が濃い褐色になるため、大半がチップにされてしまいます。
白樺
白樺の正式名称は「シラカンバ」。幹の樹皮が白いことに由来しています。
日本では北海道や本州の高原など、冷涼な気候の地域に生育し、避暑地の代名詞のような存在になっています。樹木としての認知度は、ダケカンバより格段に上でしょう。
寿命は80年ほどしかなく、ダケカンバより短命です。樹高も約20メートル、幹も70センチほどまでしか太くなりません。
春先、白樺の幹に穴を開けると樹液が流れ出てきます。人工甘味料キシリトールの原料でもある白樺樹液は、ほのかに甘くサラッとした飲み口で、体にスッと染み入るような美味しさ。
砂糖が貴重だった時代は、子どもたちにとってご馳走だったそうです。焼酎の樹液割りやコーヒーを樹液で落とすのもおつ。
白樺は、木材としては柔らかくて加工しやすい反面、耐久性に乏しいため、家具材や内装材に使われる程度。材木としてより、観賞用としての価値ほうが高い樹木です。
ダケカンバも白樺も明るい所を好む陽樹
ダケカンバも白樺も、明るい光を好む「陽樹」という樹木。光合成速度が大きく、成長も早いことで知られています。
山では、うっそうとした森林の中にダケカンバや白樺はありませんよね。稜線近くなって「見晴らしがよくなったなぁ」と感じるころに現れると思いますが、どうでしょう。
陽樹であるダケカンバや白樺は、火山の噴火などにより溶岩が流れ出た場所や、山火事のあと土や岩がむき出しになった台地に森林が形成される過程で、最初に生えてきます。
成長して陽樹の高木林ができると、根本が暗くなり、陽樹が発芽しにくくなります。すると今度は日陰の環境でもよく育つエゾマツやトドマツなどの「陰樹」が生育。
陽樹と陰樹が混ざった混交林へと徐々に変化し、やがて山や森は陰樹におおわれます。これを植生の遷移といいます。
ダケカンバと白樺のカンタンな見分け方
さて、ここからが本題。ダケカンバと白樺の見分け方を3つ紹介します。
枝が白いダケカンバ、黒い白樺
違いが一番わかりやすいのが枝の色です。これは遠くからでも一目瞭然。
枝が白くて幹の色と同じなのがダケカンバ。
黒い枝が白樺です。
枝を見れば、ほぼ9割がた判別がつくでしょう。
次は幹を観察します。
樹皮が剥がれやすいダケカンバ、への字がついている白樺
近づいてみると、違いが歴然としているのが幹です。
ダケカンバの樹皮は、はがれてボロボロです。薄くて乾燥しているので、古くから着火剤としても使われています。
白樺の幹は、黒い「への字」模様がついているのが特徴。これは枝が出ていた場所で、落ちた跡が黒く残っているのです。
幼木や老木は枝の色がはっきりせず分かりにくいことがありますが、その場合は幹を見るのが有効です。
葉の形が卵型三角形がダケカンバ、くさび型三角形が白樺
枝を見ても幹を見ても分からなければ、最後に葉の形や葉脈を観察します。
ダケカンバの葉は、緩やかに湾曲する卵型の三角形。不揃いの重鋸歯で、葉脈の数は7~12対です。
白樺の葉は、先端が尖ったくさび型の三角形です。葉脈の数は5~8対で、裏面脈腋に毛が生えています。
左がダケカンバ、右が白樺です。
葉っぱはちょっと難易度が高いので、何が何でも判別せねば、という時の最後の切り札ですね。
さて、どうでしたか?
樹木講習会で教えたもらってからというもの、わたし自身はこれまで判別の際に葉っぱまで到達したことはありません。
枝の色は遠巻きにも見分けがつきますし、ちょっと迷ったところで、幹の特徴をつかめばダケカンバと白樺はほぼ100%見分けがつくと思います。
ぜひ参考にしてみてください。