先日、山で雨氷(うひょう)を観察することができました。
雨氷は0℃以下でも凍らない雨や霧が枝などに付いて、瞬時に氷結する珍しい現象です。
幸運に感謝しつつ、みなさんにも自然が作り出す一瞬の造形美を紹介します。
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雨氷とはどんな現象?
雨氷とは、過冷却状態の水滴が地表に到達し、地面や物にあたって氷になっていく着氷現象のひとつです。
過冷却状態というのは、水が0℃以下になっても氷結しないでいる状態。
そこに振動などの刺激が加わると、急速に凍り付きます。
陽を浴びてキラキラと輝きを放つ姿は、まるでガラス細工のよう。
人が歩いて枝に触れると、クリスタルな音を奏でながら落ちていきます。
気温が上がって溶けてしまうわずかな時間、見慣れた山の景色が幻想的な世界に変わりました。
樹氷や霧氷とどう違うの?
樹氷でもないし、霧氷でもなさそう。
毎週のように山に登っているわたしですが、山では初めて見る光景でした。
帰宅して調べて「雨氷」だと判明。
着氷現象には、雨氷、霧氷、樹霜、樹氷などがあり、それぞれでき方や見え方に違いがあるそうです。
これを機に覚えておきたいと思ってます。
▼霧氷(むひょう)
過冷却された霧粒が風で木などに吹き付けられ、その刺激で氷となって付いたもの。木に白い花が咲いたように見える。
▼樹霜(じゅそう)
大気中の水蒸気が気温の低下で昇華し、樹木の枝など地面より高いところにできる霜のこと。針状もしくは樹枝状の結晶。
▼樹氷(じゅひょう)
霧状になった水蒸気が付着して結氷すること。白くて脆い。山では風上に向かって成長し、エビの尻尾などと呼ばれる。蔵王の樹氷が有名。
▼雨氷(うひょう)
過冷却状態の雨が地面の物につき凍ったもの。無色透明で表面は濡れた状態。
参考:「霧氷と雨氷、樹霜、樹氷とは?それぞれの違い」お天気.com
雨氷はどうやってできるのか
参考:「雨氷(うひょう)現象について」長野地方気象台
雨氷が発生するには、上空に0℃以上の層があって、地表付近が0℃以下という気温の逆転状態になっていることが条件です。
普通は上空に行けばいくほど気温が低くなるのですが、南からの温かい空気が上空に入るなどして逆転することがあります。
これにより、上から降る雪が暖かい層で溶けて水滴になり、下の0℃以下の冷たい層を過冷却のまま通過して、0℃以下に冷えた地上の物に当たって凍結する。
これが雨氷ができるメカニズムです。
わたしが登った日の気象条件ですが、山頂付近の気温が約3℃で、雨は降っていませんでした。
風で流れてきた雲が直前までハイマツ帯を覆っていたので、霧粒が雨氷を作り出したのだと考えられます。
下界の雨氷は事故を誘発
山では幻想的な雨氷ですが、下界で起きると氷の重みで架線が切れたり、木が倒れたり、路面が凍結して生活に大きな支障がでることがあります。
2~3年に1度くらいの頻度で経験していますが、いずれも冬の雨がもたらしました。
道路に落ちた雨が一瞬にして氷結し、路面が薄く透明な氷に覆われて、スケートリンクになってしまいます。
車を運転中だったときは、ハンドルが効かなくなってスリップし、背中に嫌な汗がドドーっと流れたこともありました。
下界の雨氷は、スリップ事故や歩行者の転倒が続出する、とても怖い冷たい雨。神秘的とは言い難い現象です。
山で出会うから美しいのでした。