登山用のホイッスルを新調しました。サッカー審判員用のホイッスル【モルテン】バルキーンです。
音が吸収される樹林帯や、水の音で会話さえまともにできない沢でも、非常にクリアに響きます。今まで使ってきたどのホイッスルよりも力強い音です。
Contents
ホイッスルの必要性と使い方
最初に、登山でなぜホイッスルが必要なのかご存じない方のために、筆者が北海道の山でどう使っているか例をあげてみます。
ヒグマ除け
いちばん頻度が高いのは熊除け対策です。熊除け鈴はもちろん携行していますが、それだけでは心もとない。
例えば濃いガスが立ち込めているとき。こんなときは音が吸収されてしまいます。もちろん鈴の音も。視界が効かなくて、目視することもできません。
沢では水の音が大きくて、3m離れた人と会話さえできません。こんな場所では人間とヒグマがお互いの存在に気づかず、遭遇する確率がアップします。
一般登山道でも、早夕のヒグマが移動する時間帯、他の登山者がいなくて薄気味悪いとき、道が屈曲して先が見通せないときにも笛を吹いています。
コミュニケーションと位置確認の手段
グループの列が長くなったとき、風の音で声が届かないときなどに、トップと最後尾のコミュニケーション手段として使います。
前後の間隔が開いた、靴の紐を結び直したい人がいる、休憩を取りたい。そんな時は、まずはホイッスルで注意を引いてグループを止め、コミュニケーションをとります。
メンバーの位置確認にも使います。
雪が降っていると数メートル間隔が離れただけで姿を見失います。スキーやスノーボードで滑降しているときは、移動速度が速いので、ほんの数十秒で仲間を見失います。
そうなったら遭難が頭をかすめる事態。ホイッスルでお互いの位置を確認して、合流します。これで命拾いした人は多いですよ。
緊急事態を知らせる手段
緊急事態への警告や応答、落石の警笛、滑落するなどして他の登山者に助けを求めるときに、自分の居場所を知らせる手段としてホイッスルを使います。
雪の上を落ちてくる石は音がしないってご存じですか?静かに空を切って落ちてきます。だから、落石に気づいたら、ホイッスルで他の登山者に伝えます。
自分の居場所を知らせる手段にもなります。例えば登山道から滑落して崖下に落ちてしまったら、気づいてもらうためにホイッスルを鳴らします。
ホイッスルを持っていてもザックの中にしまっていたら、緊急時にすぐ使えないので意味がないです。自分は常にコンパスと一緒に首から下げて持ち歩いています。
本州では遭難の合図と勘違いされるし、やかましい、とホイッスルを吹くことに否定的な意見もあるようです。登山者が多い山では、確かにそうかもしれません。
北海道でも紅葉時期の大雪山は渋滞が発生するほど混み合います。そんなシチュエーションでは、ホイッスルは控えたほうがいいでしょう。熊除け鈴も要らないですね。
ですが、安全と天秤にかける類ではないでしょう。むやみやたらに吹かない、他の登山者がいるときは配慮する等、マナーを守ればよいと思います。
【モルテン】バルキーン
購入したのはバルキーン(VALKEEN)。広島県のスポーツ用具製造メーカー・モルテン社が2009年に発売開始したサッカー審判員用のホイッスルです。
2022年サッカーWカタール大会をテレビ観戦していたとき、スタジアムに響く音色にいたく感心しまして、どんなホイッスルなのか調べてみました。
バルキーンは、2010年に開催されたワールドカップ南アフリカ大会で、約10万人を収容するスタジアムで観客が大騒ぎする環境での使用を想定して開発されたのだそう。ブブゼラという民族楽器の爆音にも負けなかった、と話題になったそうです。
バルキーンは空気の吹き出し口が2か所あり、4.15kHzと3.67kHzの2つの周波数の音が重なって、4オクターブの音域をもちます。
その音色を視聴できるモルテンの公式ホームページがこちら。いろんなホイッスルの音を聴き比べることができます。
ABS樹脂製、価格はメーカー希望小売価格6,050円(購入時)。サッカー審判員用ホイッスルの最高峰とあって、他のホイッスルに比べて非常に高価です。
山仲間に話したところ、登山歴が浅い人からは「ホイッスルにそんなお金を使うなんて信じられない」と驚かれ、ベテランからは「ホイッスルのお陰で何度も命拾いしたことがある」と理解を示されました。
反応の違いは経験値の差でしょう。登山歴が長くなればなるほど、たくさんのヒヤリハットに遭遇しますから、お金で買える安全にはためらいが無くなります。
使ってみた感想
耳の鼓膜がブルブルするほど響く
バルキーンを吹くと、耳の鼓膜がブルブル激しく振動します。それほど響きます。吹いた自分が驚くほど響きます。
うっそうとした樹林帯で吹いても、木々の間を縫うように鋭く音が走る印象です。山頂で吹いたら、見事にこだましました。
パッケージに「スタジアムで最も音が通るホイッスル」と書いてありました。大歓声の中でも選手の耳に届くキレと太さが特徴だそう。
ちなみに、近くに人がいるときは要注意です。かなり驚かせてしまいます。
プラスチック製なので冬も使える
金属製のホイッスル、中にコルク製のボールが入ったホイッスルは、冬山で使うことができません。
金属なら唇が張り付いて取れなくなり、無理に剥がせば皮がむけて流血します。コルクは息の中にふくまれる水分でコルクが凍りつき、音が鳴らなくなります。
登山用に買うなら、プラスチック製で、中にコルクが入っていないものを選ぶ必要があります。
バルキーンはプラスチック製で冬季登山でも使えます。コルクボールも入っていませんので、手入れも簡単です。
軽い息だけで大きな音が出せる
軽い息で大きな音が出せます。
ホイッスルを吹くのは体力が要るんですよ。沢では熊除けとして常にホイッスルを吹かなくていけない場所もあります。交代でやらないと体力が持たないほど消耗します。
ちょっとしたことでも、何万回も繰り返せば、チリと積もれば山となります。軽い息で大きな音が出せることは知らずに買いましたが、嬉しい驚きでした。
だからといってホイッスルに6000円も出せないよ、という方は、筆者がこれまで使っていた【モルテン】フォックス40をおすすめしたいと思います。
どの競技でも使えるオールランドタイプで、お手頃価格です。バルキーンとは音色は違いますが、高くて張りのある音ですし吹き心地も軽いですよ。
以上、買ってよかった登山装備【モルテン】バルキーンでした。