スノーシュー選びで後悔しないためには、上位機種の「登山用」を選ぶといいです。なぜかというと、グリップ力と浮力という点で、登山用スノーシューが優れているから。
山岳スキーによる冬山は10年以上になります。山岳スキー一辺倒だったところに、昨年からスノーシューハイクを始めることになりました。
きっかけは、子どもがそろそろ雪山に入れる年齢になったこと。「山岳スキーは技術的に難しいから、スノーシューだね」となったわけです。
家族でハイキング用スノーシューをそろえて楽しむこと1シーズン。「スノーシューは登山用が断然いい」という結論に達しました。
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ハイキングに行くのか、登山をするのか
一般的に、スノーシューは目的別で選びます。
「ハイキングに行くのか、それとも登山をしたいのか。」それによって、選ぶべきスノーシューの種類が異なります。間違っても値段から入ってはいけません。
種類は大きく2つ。平らな雪原を歩くのに適したハイキング用、斜度のある地形に適した登山用です。
一見すると同じように見えるのですが、想定している使用状況や場面が違いますから、形状はもちろん、素材も違います。フィールドに出てみると歴然とした性能差が存在します。
※雪上を走ることに特化したランニング用もありますが、ここでは割愛します。
ハイキングと登山で、装備や取り組みも変わる
注意したいのは、ハイキングと登山では、装備や取り組みも異なること。
スノーシューハイキングは、山頂を目指す目的ではなく、高低差が少なくて比較的緩やかなコースを歩くことを目的としています。
気象条件が厳しい山岳地帯を行くのとは違って、ウェアはフリースの上に夏山登山で使っている雨具を重ね着したり、登山靴もスノーブーツで対応できる。装備面での負担が少なくて済むこともあって、初心者向けです。
とはいっても雪山ですから、実力が伴っていないうちは、ガイドツアーなどを利用するのが理想です。
一方、山頂を最終目的とするのがスノーシュー登山。傾斜のある場所を登下降します。
ハイキングと比べて難易度は飛躍的に高くなり、雪崩や凍傷などのリスクも増大します。ウェアに始まり、アイゼンやピッケル、雪山の三種の神器(アバランチ・トランシーバー、ショベル、プローブ)といった、冬山装備が必要です。装備が重くなるので体力も必要です。
登山に関する知識や技術は、高度なレベルが求められるので、初心者向けではありません。
となれば、「初心者ならハイキング用スノーシューでハイキング」「実力を付けたら登山用スノーシューで登山へ」と考えるのが原則です。最初は自分もそうでした。
ですが、これからは「ハイキングを目的とした初心者にも登山用スノーシュー」をおすすめしたい。その理由を以下説明します。
初心者にも登山用をすすめる2つの理由
我が家には、貰いもののスノーシューが2組あります。クランポン(雪面をグリップするための刃)の数が少ないものの、ヒールリフターが付いたハイキング用のハイエンドモデルという、猫に小判的な代物です。
スノーシューハイクを始めるにあたって、ありがたく活用させてもらいました。
子どものスノーシューは、まずはフリマサイトで探してみたんですが、商品数がありません。愛好者が少ないせいか、商品に耐久性がないのか。
購入することにしましたが、市販されている商品ラインナップはハイキング用1つだけで、選ぶ余地はありませんでした。
家族全員ハイキング用スノーシューを履き、子どもの体力に合わせたハイキングコースを行くこと1シーズン。
道具としての「限界」が見えてきました。
急斜面とトラバースが苦手
スノーシューは急斜面とトラバースが苦手。
スノーシューの特性として知ってはいたものの、ハイキング用スノーシューは、ゲレンデの初級コースレベルの緩斜面でさえズルズルだったのには驚きでした。こんなに斜度に弱いとは。
子ども用に至っては、クランポン(金属の刃)の数が少なくて、長さも短い。大人用以上にグリップ力が弱かったです。トラバース時は横滑りする恐怖で固まってしまうし、ちょっとかわいそうでしたね。
歩行技術でカバーできることもありますが、基本的にもう少しグリップ力がほしい。どうにも中途半端な感じが否めません。
登山用も万能ではありませんが、ハイキング用よりはクランポンの数が多くて、グリップ力が増します。山で滑るのは恐怖以外の何物でもなく、予算に余裕ができたら、登山用スノーシューを買おうと心に誓いました。
浮力を得るにはサイズが重要
もうひとつ気になったのが浮力です。
スノーシューにはデッキと呼ばれる面があって、そこが浮力を生み出します。メーカーやモデルによって多少の差はありますが、どんな条件でも浮力が得られるわけじゃない。
降ったばかりのふわっふわの深雪では、なすすべなく沈みました。「荷物+体重」とスノーシューのサイズが釣り合っていないときも沈みます。
浮力を得るにはサイズ選びが重要なのですが、ハイキング用スノーシューは、フリーサイズが多い。
長さを付け足すことができるフローテーションテイルを使えば、柔らかくて深い雪への対応幅が広がるのですが、これも安価なハイキング用モデルにはありません。
サイズもアクセサリーパーツも、選択肢が多いのは圧倒的に価格帯の高い登山用モデル。これが登山用をおすすめする2つ目の理由です。
そんなわけで、「ハイキングするとしても、登山用スノーシューが断然いい」という結論に達しました。
ハイキング用は登山用と比べて安価なので、エントリーモデルとして人気です。ですが、我が家のような理由で、あとから買い直す人が多いように思います。
後悔しないスノーシュ―を選ぶなら、登山用スノーシューがおすすめです。
おすすめスノーシュー
どんなメーカーのモデルも、骨格となるフレームと浮力を生み出すデッキ、靴を固定するビンディングと金属の刃でできたクランポンが基本形。そんな限られたパーツの中に、個性と性能差が凝縮されています。
紹介するのは、MSRのハイキング用と登山用モデル各1つ。どちらもハイエンドモデルです。これをたたき台にして、様々なモデルと比較検討してみてください。
比較するなら、TUBBS(タブス)、モンベルで扱っているATLAS(アトラス)あたりがいいと思います。
ハイキング用スノーシュー
平らな雪原を歩くのに適しているのが、ハイキング用スノーシューです。
メリット
- 安価
- クランポンの数が少なくて扱いやすい
- 軽量で歩きやすい
- ビンディングがシンプルで操作しやすい
デメリット
- グリップ力が弱く滑りやすい
- 本格的な登山には強度不足
- ビンディングが緩みやすい
- ヒールリフターが装備されていないものが多い
雪原をハイキングする程度でも、若干の起伏はあるものです。ヒールリフターはあったほうがいい。
「EVO アッセント」はヒールリフター付き。フレームにもギザギザの刃がついているので、グリップ力があって、横滑りに強い。他のメーカーのハイキング用とは一線を画しています。
ビンディングがベルト式なので、頻繁に脱着を繰り返すスノーボーダー向きではありません。1サイズ展開なのが非常に残念なところ。
登山用スノーシュー
急斜面の登下降を想定したモデルが登山用スノーシュー。ハイキング用とはグリップ力が違います。急斜面と同時に、平地や緩斜面もカバーできます。
メリット
- クランポンの数が多くて、大きい
- グリップ力がある
- ビンディングにフィット感がある
- 耐久性が高い
- ヒールリフターが装着されている
デメリット
- 値段が高い
- 重量がある
- ビンディングが複雑
わたしが次に狙っているのが、MSRのライトニングアッセントです。デッキが柔らかくてしなりがあるので、さまざまな地形に対応できるのが売り。
裏側を見れば他のモデルとの違いは一目瞭然で、クランポン(刃)がフレーム外側にぐるりとあり、横方向にも1つプラス。それでいて軽量です。MSRのフラッグシップモデルで、性能的に申し分ありませんね。
脱着に手間がかからないパラゴン・ビンディングは、ボーダーにも人気です。サイズは22インチ・25インチ・30インチの3展開。
サイズ(長さ)について
スノーシューのサイズ(長さ)は浮力と関係するのでとても重要です。体重と荷物の重さ、歩く雪の状況に合わせて選んでください。
大柄な人はもちろん、スノーボードやテント泊装備のような重たい荷物を背負って登る人は、大きめのサイズを選ぶ必要があります。
わたしの周囲では、性別、体格に関係なく、25インチ(63センチ程度)のスノーシューを持っている人が多いですね。おそらく、パウダースノーの北海道ならではの傾向なんだろうと思います。
「サイズが大きくなると重量が増すのでは?」と心配になるかもしれませんが、1サイズアップで数百グラム程しか変わりません。ビンディングでしっかりと靴にフィットさせれば、それほど気になることもないでしょう。
長さが出て小回りが利かなくなるのが心配なら、取り外しできるテイルを持ち歩いて、コンディションに応じた長さを確保する選択肢もあります。ただし、上位機種にしか対応していませんが。
MSRでは、長さを伸ばすことができるフローテーションテイルを別売りしています。より柔らかくて深い雪に対応できるので、持っていると心強いです。
道具は悪条件になるほど真価を発揮する
1シーズン使用して、ハイキング用スノーシューの真の実力が見えてきました。ちょっと厳しめの感想なのは、少雪で雪のサポートがもらえず、誤魔化しようがなかったこともあると思います。
道具は悪条件になるほど真価を発揮します。中途半端なものを買って後悔するのは日常でもよくあることですが、山では命にかかわります。とくに冬は、道具に頼るところが大きい。初心者こそ、いいものをそろえるべきだと思います。