
「北海道に縦走に行くのだけど、どんな寝袋(シュラフ)を持っていくといいのかわからない!」という方、多いですよね。
「夏なのに?!」と驚くかもしれませんが、北海道の夏山で使用するなら、限界(リミット)温度-6℃の寝袋(シュラフ)が必要です。
寝袋(シュラフ)に関する基本的な知識から、北海道ならではの山事情も含めて、選び方をわかりやすく説明します。
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「快適温度」と「限界温度」を知っておこう
寝袋を選ぶときもっとも重要なのが寝袋の使用温度です。その温度には「快適温度」と「限界温度」の2種類があることをご存じでしょうか?
・快適温度:しっかり眠れて疲れがとれる温度
・限界温度:なんとか寝れる限界ギリギリの温度
日ごろから耐寒訓練をしている人ならいざ知らず、一般人が限界温度帯で使用すると、寒さに凍えながらもうつらうつら寝て朝を迎えることができる感じです。
「快適温度」とは限界温度の+5~+10℃が目安だとされています。寝袋を購入するときは、山の上でしっかり睡眠がとれるように快適温度を基準に選ぶことです。
ただし、よく検討したうえで購入したのに、いざ使用してみると不満の残る結果になるケースが多いのも事実です。(妻もそのひとりです)
温度の感じ方には個人差が大きく、また、使用する環境によってかなり異なるという点で、メーカーのスペックを鵜呑みにするのは危険でしょう。
暑いときは寝袋から飛び出せば済みますが、寒いときはできることに限界があります。失敗しないためには、この程度で大丈夫と思う温度より、もう1段階グレードをあげた温度の寝袋を購入することをおすすめします。
注意! 表記がまちまち

メーカーが独自基準に基づいて表記をしているのも、分かりにくさに追い打ちをかけています。
国内メーカーのISUKA(イスカ)の場合は、温度表示が1つしかありません。
温度表示は「最低使用可能温度」とお考えください。これは、季節に応じた一般的な山用の服装を前提に、表示の温度域まではご使用いただけるという目安です。したがって、いわゆる「快適使用温度」とは、表示温度におおむね5~10℃をプラスした温度域となります。
ISUKA「FAQ/よくあるご質問」より引用しました
「-6℃」と表示されているなら、最低使用可能温度が-6℃で、目安として-1℃~+4℃程度なら快適に眠ることができる寝袋だということになります。
一方、同じく国内メーカーのNANGAは、快適使用温度と下限温度の2つの温度基準が設けられています。
このように、メーカーによって採用している基準も表記もまちまちですが、押さえておくべきは「快適温度」と「限界温度」です。
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北海道ではテント泊での使用が前提

北海道の夏山で使う寝袋は、テント泊での使用を前提にして選ぶ必要があり、ここが本州の山中泊と大きく違う点です。
北海道には、本州にあるような寝泊まりができる山小屋は数えるほどしかありません。避難小屋はありますが、名前の通り避難する場所であって、本来は宿泊を目的にする場所ではありません。
屋根や壁に囲まれた山小屋で寝るのと、布を隔てただけで外気の温度がダイレクトに伝わるテントで寝るのでは、寒さの感じ方が違ってくるのは容易に想像できるでしょう。
テントはいわば断熱材の入っていない家。外気温の影響を直接受けます。夕食時にストーブを使えば温まりますが、ストーブを消してしまえば温度を保つことができません。
というわけで、北海道の夏山で使用する寝袋の対応温度は「外気温」そのもので考えます。
具体的にみてみましょう。
たとえばトムラウシ山(2141m)。気象サイトのデータでは、トムラウシ山頂付近の7月の気温は、最低気温が4.5℃、平均気温8.9℃、最高気温が12.1℃となっています。
山頂から少し下った標高1950mの南沼キャンプ指定地でテント泊するなら、山頂付近と気温はさほど変わらないと考えていいでしょう。ここで快適に眠れる寝袋は、「快適温度が4℃、限界温度が-6℃」ということになります。
同じく7月の白雲岳避難小屋キャンプ地(標高1990m)をみてみると、最低気温5.6℃、平均気温が10.1℃、最高気温13.3℃となっています。ここでテント泊するなら「快適温度が5℃、限界温度が-5℃」が目安になります。
ということで、この温度帯が北海道の夏山用寝袋の標準値といえるでしょう。
参考までに、温度表記が1つだけのISUKAから選ぶ場合は「-5℃もしくは-6℃」の寝袋を選ぶことになります。
使用条件で快適温度は変わる

快適に眠れる温度は、寝袋を使用する環境などによっても変わってきます。
気象要因で変わる
気温はもちろんですが、風でもテント内の気温が変わってきます。
風が強ければテント内に隙間風が入ってきます。風によってテントとフライシートが密着して空気の層がなくなれば、熱伝導で外の冷気がダイレクトに伝わります。
使用人数で変わる
テントで寝泊まりする人数が多いと、人が体から発する熱で暖かくなります。体温ってバカにできないと実感するのがテント泊です。
もっとも寒いのがソロテント。小さなテントに1人で寝泊まりすることほど寒いものはありません。
寝る位置で変わる
テント内のどこに寝るかでに、寒さの感じ方が違ってきます。
いちばん暖かい場所は真ん中。寒がりな人は、人に挟まれて寝るポジションを狙うことです。寒いのはテント生地に接して冷気がもろに伝わる隅っこと、人の出入りがある入口付近です。
男女差で変わる
女性は男性に比べて寒さに弱い傾向があります。熱を生み出すのは筋肉なので、筋肉量の少ない女性は体が冷えやすく寒さを感じやすいのです。
EUの統一規格EN(ヨーロピアン・ノーム)では、一般的な成人女子が寒さを感じることなく寝ることができる温度域を、男性より約5℃高く算出しています。
ここでは詳しく触れませんが、シュラフカバーの有無でも変わります。北海道の夏山ではシュラフカバーは必須ですから、シュラフカバーの役割についてご存じない方はこちらの記事もご覧ください。
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北海道の山ではシュラフカバーは必需品です。 「濡れ防止」と「保温」という、2つの大きな役割を持つシュラフカバーについてお話します。 北海道をベースにお話ししますが、基本的に全国どこの山であろうとシュラ ...
おすすめ寝袋(シュラフ)
北海道の夏山シーズンにおすすめの寝袋を選びました。とも3シーズンモデルです。日本のブランドですから、品質は間違いありません。
【ISUKA】
エアドライド480です。最低使用温度が-7℃、冬期低山まで対応型。重量は870gです。
【NANGA】
NANGA(ナンガ)オーロラテックス ライト450DXです。快適使用温度は0℃、下限温度は-5℃、重量は865g。シュラフカバーがいらないので軽量化できます。
失敗したシュラフ選び例
最後にシュラフ選びに失敗した例を。
妻が購入したアメリカのメーカー「ウエスタン・マウンテニアリング」のエクストリームライトです。使用温度は0℃となっているので、快適温度は10℃くらいでしょうか。

トムラウシ山でテント泊するために買いに行き、スポーツ用品店の店員に相談の上で購入したにも関わらず、いざ使ってみたら残念な結果になった品です。
失敗の原因は、妻に「使用温度=寝ることができる温度」くらいの知識しかなかったこと。「大丈夫」とお墨付きをくれた店員が(女性より寒さに強い)男性だったこと。そしてその店員のテント泊経験も怪しかったこと。
妻はこの後ソロテント泊して、使用温度は「なんとか翌朝を迎えることができる温度」と言い換えていいと身をもって知ったそうす。
持参した全ての衣類を着こみ、使い捨てカイロを貼りまくって、荷物を全部出した縦走用ザックに下半身を突っ込み、ようやく寝ることができたとか。
そんなわけで、現在は下界のファミリーキャンプ用アイテムになっています。ただ、他の寝袋と重ねて(レイヤリング)使用するときのインナーシュラフに使えるので、かろうじて手放さずにいます。

