山に登るときは、風下側の天気予報を参考にしてはいけません。
山の天気は風上側から崩れます。
特に、海側から湿った空気が入りこむときは要注意。
山の地形は広域で理解すべき理由と、注意すべきポイントを説明します。
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風下側の天気予報をあてにして登ってはいけません
風下側の天気は問題なくても、山頂近くになると風上側から雲が発生して天気が崩れることは、山ではよくあることです。
こちらの写真をご覧ください。左が風下、右が風上です。
山の斜面に風がぶつかる
↓
斜面に沿って吹きあがり、上昇気流が作り出される
↓
のぼっていくうちに空気が冷やされる※
↓
空気の中の水蒸気が放出される
↓
雲が発生
※上空に持ちあげられた空気は100メートルで0.6℃ほど冷えます
これが天気が崩れる原理です。
これから登る山の登山口やルートが風下にあって、快晴だったとしても、風上側から湿った空気が供給されていれば、尾根にでた途端にガスに覆われて視界がなくなり、強風にさらされることは充分に考えられます。
こちらは、7月中旬に十勝岳連邦を縦走したときの写真です。
雲一つない青空を望みながら登り始めました。
ところが、尾根にとりついたとたん天候が急変。
そのときの上ホロカメットクから十勝岳にかけての写真がこちらです。
左が風上、右が風下です。
写真左から吹きつける南南西の風が尾根をはいあがり、急速に雲を作り出しています。
縦走路は尾根伝いに伸びています。
我々の一行は、あれよあれよという間にすっぽりと雲に包まれ、強風で立っているのさえやっとの状況に陥りました。
夏山シーズンといえども、低体温症による遭難が多発する北海道では、強風は体温を急速に奪う山でもっとも恐ろしい敵。
このときはあまりの寒さに避難小屋に逃げ込み、天候の回復を待ちました。
山では風上側から天気が崩れます。
登山にでかけるときは、天気予報で風向きをチェックし、風上側の天気予報を利用しましょう。
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海からの風は要注意!
ここまで天気は風上側から崩れるという話をしましたが、風が吹き付けていても、空気が乾燥していれば原理的に雲は発生しません。
別な言い方をすると、空気中の水分が多ければ多いほど、雲は発生しやすくなり、天気は大きく崩れます。
気をつけるべきは海側からの風です。
日本海側の豪雪は、日本海で蒸発した水分が供給されるために起きることは、みなさんよくご存じだと思います。
川端康成の雪国で有名な【トンネルを抜けたらそこは雪国であった】のように、ときには新潟県と群馬県の県境にある三国山脈の「日本海側」と「内陸側」で、天気が全く異なることがあります。
山の天気はピンポイントで見るのではなく、山の地形を広域で調べる必要があるのです。
具体例をあげます。
日本海側から風が吹き付けている天気図です。
こんなときは日本海側にある山は要注意。
たとえ登るルートが内陸側にあったとしても、日本海側の天気を参考にしなければなりません。
太平洋側から風が吹き付けている天気図です。
こんなときは太平洋側にある山は要注意。
登るルートに関わらず、山の太平洋側の天気予報を調べる必要があります。
特に、低気圧が東へ通過したあと発達すると、森林限界をこえた尾根や稜線上で風雨が強まり、ときには命取りになるほど大荒れの天候になることがあります。
これはしっかりと覚えておきましょう。
森林限界をこえていると、風を遮る樹林帯がなくなるため、気象遭難のリスクが高まります。
北アルプス燕岳の森林限界(合戦小屋付近)は標高約2400mですが、北海道アポイ岳の森林限界(五合目避難小屋付近)はわずか380m。
森林限界は比較的標高が高いところをを意味すると思われがちですが、風が強くて木が育たない場所であり、標高で計ることはできません。
低い山だからと油断するのは禁物です。
まとめ
登山に行く前には、登る山の天気をピンポイントで見るのではなく、地形を広域で理解する必要があります。
ポイントはこの3つ。
- 山の位置と海の関係
- 風向き
- 風の強さ
登山口や山行ルートに関わらず、風上側の天気予報を参考にするようにしましょう。
参考
村山貢司・岩谷忠幸(2005)『山岳気象入門』山と渓谷社
粟澤徹(2016)『やさしい山のお天気教室』枻出版社
猪熊隆之(2016)『山の天気にだまされるな!』山と渓谷社
山の天気に関する記事はこちらもどうぞ。
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