登山届や登山計画書とは、登山を行うときに作成する書類です。もしものときに自分の身を守ってくれる大切なものです。
登山届が提出されていれば、家族などから相談や遭難救助の依頼があったとき、円滑に遭難救助活動を開始することができます。そして、救助される可能性が高くなるメリットがあります。
登山は一部の限られた人のものから、幅広い年齢層の人たちが気軽に楽しめるスポーツになりました。
それに伴って、登山届や登山計画書というものを知らない、何を書いてどこに提出するのか、そもそもなぜ提出するのかを知らない登山者が増えているのが実情です。
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登山届は義務?

現在のところ、一部を除いて登山届(登山計画書)の提出は任意です。
一方で、岐阜県では2014年12月1日より北アルプス地区の山岳で登山届が義務化されました。2016年12月1日からは、登山届提出をせずに登山した場合などに5万円以下の罰金を過料する罰則規定が施行されています。(白山を除く)
2017年4月には、登山届を提出せず北アルプスを登山して遭難し、警察に救助された男性1名に対して過料5万円を科しています。
同様の罰則規定は、群馬県谷川岳、富山県剱岳周辺山岳地帯でも条例で制定されているので注意が必要です。
警察によると、2014年9月27日に岐阜県と長野県にまたがる御嶽山で発生した噴火では、死者・行方不明者63人のうち登山届を提出していたのはわずか11人でした。そのため、当日登山者がどのくらいいたのか、正確な数は分かっていません。
報道によると、噴火から3日経っても遭難者の正確な数が分からず、連絡が取れない人や周辺の駐車場に放置された車の所有者を基に数を集計するなど、被害の実態把握が難航していた様子がうかがわれます。
登山届がきちんと提出されていれば、迅速な安否確認や捜索救助活動に有効だったのは間違いありません。
これからは、登山届の義務化を進める動きが全国的に広がっていくと考えられます。
登山届はなぜ必要?

岐阜県の山岳遭難防止条例は、登山届の目的について次のように述べています。
”【目的】届出を行うことにより、登山者自身による事前準備の徹底、山岳遭難の防止、並びに登山者の安否確認及び捜索救助活動の迅速化を図る。”
以下、解説します。
①”登山者自身による事前準備の徹底”とは
登山届を作成するときは、記載項目をひとつひとつ吟味し、確認していきます。その過程で、コースの予習をしていることになります。
エスケープルートを検討をするときは、地形図に描かれた予定のコースだけでなく、周辺コースまで検討せざるを得ません。この段階で、慎重な地形図の読み取りがされているはずです。
コースタイムの検討では、自分の体力にあっている計画なのか見えてくるでしょう。作成する段階で、山行が余裕のある安全なものかトータルでチェックでき、客観的に把握することができます。
複数人で登るときも、登山計画を共有することで共通認識を持つことができるようになります。いつ、だれが、どこで、何を、どのようにするのかが明確になり、山行がスムーズになるのです。
②”山岳遭難の防止、並びに登山者の安否確認及び捜索救助活動の迅速化を図る”とは
登山届を提出していると、万が一の遭難事故にも素早い対応が可能になります。
山に行くことを誰にも言っていなければ、遭難したことに気づいてもらえないかもしれません。
山に行くことは告げていても、どの山を登るのか伝えていなかったために捜索できず、行方不明になっているケースもたくさんあります。
どの山のどのコースにいつ入ったのか、どこに向かう予定だったのか。足取りが詳細に分かれば分かるほど、救助活動のスピードは速くなります。
救助活動のスピードが速ければ、生存率も上がります。
予備の食料は何日分あり、どんな服装で入ったか等も、救助活動を進めるうえで重要な情報です。
登山届の書き方と提出先
登山届の様式に決まりはありませんが、提出先によってある程度様式が決まっています。
共通事項としては、地図にルートを落とし込む、通過時間を記入するなど、できるだけ詳細にルートを記載することで、もしものときの対応が早くなります。
緊急時に早く下山するために利用するエスケープルートや、引き返すポイントなども決めておきましょう。
数日にわたる縦走登山では、天候悪化やアクシデントでも行程を強行しまいがちです。予備日を設けて余裕のある山行を心掛けてください。
私が登山届提出に利用しているのは、山と自然ネットワーク「Compass」です。
地図から簡単に作成できること、同行者のほかに緊急連絡先も同時に登録できること、下山通知をしなければ自動的に緊急連絡先にお知らせが行くこと、北海道警察と連携していることが主な理由です。
遭難したときは誰かが警察に連絡して救助要請しないと遭難救助に動いてくれません。
ですので、緊急連絡先は救助要請をするかもしれない重要なポジションであり、決して名義借りではいけません。
アクションをとってくれる人物が必要

捜索救助は、登山者本人、家族や友人などから警察に相談や救助要請があってはじめて開始します。
提出したからといって、下山連絡がなく一定時間が経過したら自動的に探してくれる、なんてことはありません。救助要請がなければ、そこで登山届は役割を終えます。
では、ケガで動けなかったり携帯や無線の電波が通じないなど、登山者本人が救助を求めたくてもできないケースはどうなるのか?
- 登山に行った家族が帰宅予定日を過ぎても帰らず連絡も取れない
- 週末登山に行くと言っていた同僚が月曜になっても出社しない
- 宿泊する予定の登山客が時間になっても現れない
登山者本人の身に何か起こったと気づいて、警察に相談するなどのアクションをとってくれる誰かが必要になります。
ちゃんと登山届を提出していれば、緊急連絡先になっている人物が真っ先に気づくはずですよね。
ほかにも、家族や同僚、友人など複数の人に登山届や登山計画書を共有してもらい、自分が登山に出掛けたことを周知しておく必要があります。
登山届を提出するときは、何かあったときの体制もしっかり確保してください。