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【北海道の山】大雪山お鉢平めぐり登山ガイド

更新日:

大雪山お鉢平と北鎮岳

お鉢平は、大雪山の中央部に位置する約3万年前の噴火により生じた長径2.2kmのカルデラです。

黒岳石室を起点に、お鉢平の縁をぐるっと1周するお鉢平めぐり(左回りコース)を紹介します。

今なお有毒ガスを噴出するお鉢平を眼下に、天地創造の世界に迷い込んだかのような荒々しく力強い大地が広がります。

 

 

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大雪山「お鉢平めぐり」基本データ

 

約3万年前の噴火により生じた長径2.2㎞のカルデラ(お鉢平)の縁を、ぐるっと一周するお鉢平めぐり。

天地創造の世界に迷い込んだかのような、荒々しく力強い大地が広がります。

北鎮岳や旭岳をはじめとする名だたる山々を望む360度パノラマビューは、大雪山の雄大さを象徴する景観です

アップダウンはそれほどではないものの距離があるため、黒岳7合目を起点に日帰りでお鉢平めぐりするのは健脚向き。

写真撮影したり地質や高山植物を観察するなら、黒岳野営場や石室に宿泊して、余裕のあるスケジュールでめぐることをおすすめします。

距離10.6km

※石室スタートの距離

標準タイム右回り、左回りともに5時間20分

※休憩を除く

難易度初級
水場2か所あり

お鉢平展望台と北鎮岳分岐の間/北海沢

山小屋黒岳石室
トイレ黒岳石室に併設のバイオトイレ
電波状況場所により受信可能
問合せ先層雲峡ビジターセンター TEL:01658-9-4400

大雪山国立公園連絡協議会ホームページでも、登山情報を確認することができます。

 

お鉢平めぐりのハイライトシーンを3つ紹介します。

 

天地創造の世界を思わせる稜線歩き

今なお有毒ガスを噴出するお鉢平を眼下に、色彩の無い荒涼とした稜線を歩きます。まるで天地創造の世界に迷い込んだかのような非日常感を、たっぷり味わうことができます。

お鉢平

 

大雪山の中心部から山々を一望にする

大雪中心部から北鎮岳や旭岳をはじめとする周囲の山々を360度一望にすることができます。アイヌ語で「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」と呼ぶにふさわしい、神々しい景色が広がります。

大雪山お鉢平と北鎮岳

 

高山植物と周氷河現象

一見すると生命の兆候を感じない荒涼とした世界に見えますが、高山植物の宝庫でもあります。周氷河地形の構造土が特有の景観を生み出しています。

チングルマの群落

 

 

大雪山「お鉢平めぐり」ガイド

途中で北鎮岳の頂までピストンし、お鉢平をまわります。ガイドタイムは、左回り右回りともに5時間20分です。

お鉢平ガイドタイム入り地形図

 

左回りコース

5時間20分

石室→北鎮分岐

1時間40分

北鎮岳分岐→北鎮岳往復

50分

北鎮分岐→間宮岳

1時間

間宮岳→北海岳

40分

北海岳→石室

1時間10分

右回りコース

5時間20分

石室→北海岳

1時間40分

北海岳→間宮岳

40分

間宮岳→北鎮分岐

1時間10分

北鎮岳分岐→北鎮岳往復

50分

北鎮分岐→石室

1時間

※休憩を含みません

 

黒岳石室から北鎮岳へと向かいます。北鎮岳は北海道第二の高峰ですが、高さよりも千鳥と白鳥の雪渓の方が有名かもしれません。残雪とのコントラストが美しい。

北鎮岳

中央が北鎮岳 千鳥(左)・白鳥(右)

 

登山道の左右に広がる平坦地は「雲ノ平」です。一帯は高山植物の宝庫。秋になるとウラジロナナカマドやウラシマツツジ、チングルマが色づいて錦色に染まります。

大雪山 雲ノ平

 

周氷河地形の構造土も随所にみられます。構造土とは、土壌が凍結と融解を繰り返すことで土壌が動き、地表面に網の目状、階段状などの幾何学的な模様ができること。

雲ノ平の構造土

 

こちらは構造土の一種「アースハンモック」。直径1〜2m、高さ数10cmほどの地面の盛り上がりのことで、凍結による地面全体の盛り上がりと融解による沈下を繰り返した結果、形づくられます。

雲ノ平のアースハンモック

 

黒岳石室から約40分で「お鉢平展望台」に到着。ここでお鉢平の内部を初めて見ることができます。

お鉢平は、約3万年前の爆発的な噴火によりできたカルデラです。底には湖底堆積物がみられることから、噴火の後には湖を形成していたことがわかっています。現在も有毒温泉と有毒ガスが発生しているため、立ち入り禁止です。

お鉢平展望台

 

この先は外輪山の縁を歩きます。ハイマツやコケモモなどの緑が少なくなり、火山灰やレキ地がむき出しになった荒々しいエリアです。

北鎮岳分岐からやや急な斜面をジグザグに登ると北鎮岳(2,244m)山頂です。ベンチが備え付けられているので、時間が許す限り周囲の山々が織りなす絶景を堪能しましょう。

北鎮岳山頂

 

風食で削れられた層が美しい岩塊。中岳へ向かう尾根上にある大地のオブジェです。

中岳付近の岩塊

 

別の惑星に来たような錯覚にとらわれる赤いレキ地の稜線。コロコロとしたレキの斜面は滑りやすく、時おり足を取られます。中岳手前の稜線

 

中岳の山頂は、標柱がなければ通り過ぎてしまいそうななだらかな丘陵地です。頂上に「登る」というより、「通過する」という表現の方が合っています。

中岳

 

中岳分岐です。右に曲がれば、裾合平を経由して姿見ノ池、旭岳ロープウェイ姿見駅と沼ノ平、愛山渓方面に行くことができます。

中岳分岐

 

旭岳方面から大きなザックを担いで登ってきた外国人登山者グループとすれ違いました。彼らはこのあと黒岳野営場で1泊し、黒岳から下山していきました。

大雪銀座とも呼ばれもる「旭岳~黒岳」の縦走路は、国内だけでなく、海外からも多くの登山者が訪れます。テント泊装備を担いだ登山者

 

間宮岳の頂は広々とした平坦地。ここが頂上であることがわかる唯一の手掛かりは標識です。

間宮岳

 

ほどなくして間宮岳の分岐に差し掛かります。旭岳から多くの登山者が足を伸ばす場所であることを物語るように、いくつもの木製ベンチがしつらえてありました。

間宮岳分岐

 

明確なピークがない荒井岳と松田岳は、気づかないうちに通過してしまいました。視界をさえぎるものが何もない稜線を、北海岳に向かって歩きます。

北海岳方面の稜線

 

北海岳は大雪山のゴールデンルートと呼ばれる「旭岳~トムラウシ山」縦走で必ず通過する交差点。黒岳方面からの登山者も多く、大雪山の交通の要所です。

北海岳

 

北海岳からは、眼下に見えるお鉢平と対岸の北鎮岳の姿が素晴らしい。とてつもなく広大な自然を前にして、己の小ささを実感した瞬間でした。

北海岳から見たお鉢平と北鎮岳

 

徐々に標高を下げていくと、北海岳を水源とする北海沢が姿を現します。後ろにあるのは桂月岳と黒岳。ここまで来れば、黒岳石室まであと一息です。

北海沢

 

赤石川を渡渉します。ネットで囲った石が敷かれ、木道が渡してあります。増水時でもない限り、登山靴を濡らすことはないでしょう。

赤石川の水は、毒性の強い硫化水素が吹き出ているお鉢平を水源としているため、飲用することはできません。

赤石川

 

赤石川から黒岳石室までの登山道脇は、花の最盛期には一面チングルマが咲き乱れるお花畑になります。高原散歩気分を味わいながら、高度を上げていくと黒岳石室に到着です。

黒岳石室

 

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お鉢平めぐりの花

雪解けと同時に一斉に花を咲かせる姿は、厳しい高山帯の短い夏を象徴する存在です。大雪山には固有種も多く、花目当てに訪れる登山者も多くいます。

お鉢平めぐりのなかでもっとも多くの高山植物が観察できるポイントは、雲ノ平と赤石川周辺ベストシーズンは7月中旬から下旬です。

アオノツガザクラ・エゾノツガザクラ

アオノツガザクラ・エゾノツガザクラ

チングルマ

チングルマ

コガネギク

コガネギク

クモマユキノシタ

クモマユキノシタ

チシマクモマグサ・シオガマ

チシマクモマグサ・シオガマ

タカネスミレ

タカネスミレ

ミネズオウ

ミネズオウ

コマクサ

コマクサ

チシマギキョウ

チシマギキョウ

メアカンキンバイ

メアカンキンバイ

ヒメイソツツジ

ヒメイソツツジ

イワウメ

イワウメ

 

 

道迷いに注意 

北鎮岳山頂の標識

天気が良ければ解放感あふれる天空散歩ですが、ひとたびガスがかかれば進路が見えず、道迷いの不安が常につきまといます。

レキ地歩きが多いこのコース。草付きの登山道とは違って、普段から踏み跡が明瞭ではありません。ガスがかかったり雨で石や地面が濡れたら、踏み跡は一層目立たなくなります。

加えて、どこがピークか判然としない外輪山の縁を歩きます。ランドマークが確認しずらく、現在位置の把握が難しい。

山頂標識や分岐の標識はしっかり確認!雨や霧で視界が効かないときは、慎重に歩くようにしましょう。

 

お鉢平めぐりはゆとりのある行程で

北鎮岳

天地創造の世界を彷彿とさせる荒々しいお鉢平。視界を遮るものがない稜線から望む外輪山の山々。比類ない規模と豊かさを誇る高山植物の群落。厳しい環境を物語る周氷河地形。

お鉢平めぐりは、1周で5時間20分でこれらを一気に楽しめる欲張りなコースです。

黒岳から日帰りで巡ることもできますが、ひたすら歩を進めてピークを踏むことがメインになってしまいます。

初心者はもちろん、体力に自信のない人や高山植物を観察したり写真撮影したい人は、黒岳石室に宿泊して、ゆとりのある行程で行くことをおすすめします。

 

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