登山をしているときの休憩は、疲れをいやすことだけが目的ではありません。
靴ひもを結び直したり衣類の脱着をするなどの「装備の調整や点検」、行動食や水分を摂取する「水分エネルギー補給」、「現在位置や進行方向の確認」や「記録」など、さまざまな目的があります。
これを5~10分の間に行うのですから、休憩といっても結構忙しいのです。
やみくもに休んでいては、かえって疲れが増してしまいます。疲れにくく、さまざまな目的も同時にこなせる休み方とタイミングなどを紹介します。
1.休憩の間隔
歩き始めて30分ほどで第1回目の休憩をとります。
まだ疲れているとはいえないこのタイミングでの休憩は、装備の調整と点検を目的にしています。
歩き始めて体が温まって暑くなったら衣類を脱ぎ、朝露で足元の草が濡れているようであれば雨具のズボンを着用する。ザックの背負い心地や靴のフィッティング具合がいまいちなときは微調整します。
経験上、体調の良し悪しもこの時点で分かることが多いようです。装備の日調整などもここで無精をしてしまうと後々響くことも多く、その日の山行を占う重要なポイントです。
なかには面倒くさがる人がいますが、複数人で登るときはグループのタイミングを重視しましょう。あとから「やっぱり上着を脱ぎたい」とひとりだけザックを下ろすのは身勝手です。
ただし、体調が悪い場合や、ペースが速くて息が上がってしまったときなどはこの限りではありません。大事に至らないうちに休憩を求め、仲間と共有しておきましょう。
休憩の取りすぎ、長すぎる休憩は、逆に疲れる原因になります。せっかく温まった身体が冷えてしまい、リズムが途切れ、また同じ状態に持っていくために余分なエネルギーを使います。
2回目の休憩からは40~60分が目安。杓子定規に時間を決めるのではなく、天候や参加者の体調、急登の前後など臨機応変に考えましょう。
時間は小休止で5~10分。頂上など要所要所では15~30分の大休止をとります。
2.休憩中にすること
①エネルギー補給
近頃は登山の目的も多様化し、休憩のときに本格的な調理をして食事を楽しむ人もいるようですが、本来はどっしりと腰を据えてご飯を食べることはしません。
登山中、食事に該当するのは「行動食」です。行動食をできるだけこまめに取るのがバテない登山のカギ。小休止のときも、必ず何かしら口の中に放り込みます。
お腹が空いていなくても喉が渇いていなくても、食べたり飲んだりします。というのも、お腹が空いてから、喉が渇いてからでは遅いのです。
小休止でも食べきれる量の一口サイズおにぎりなど、手を汚さず、なるべくゴミが出ず、すぐに食べられるものを、ザックの取り出しやすい場所に入れておくと良いでしょう。
頂上でお弁当を取り出してしっかりとした食事を摂るのは構いませんが、それまで何も口にしなければエネルギー切れします。日常とは摂り方が違ってきますので注意してください。
詳しくは「山でバテないための栄養学」を参考にしてください。
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②現在位置と進行方向の確認、コースタイムなどの記録
口をモグモグさせながらも、地図とコンパスを取り出して現在位置を把握します。
ここまでかかった時間を記録し、余裕があれば見かけた草花や鳥の名前をメモするのもいいでしょう。
ガイドブックに載っている標準コースタイムを事前に地図に落とし込んでおくと、実際かかったタイムとの誤差でペースが速いのか遅いのか判断できます。
今日は遅いから頂上を踏まずに途中で下山しよう、順調だから下山は何時くらいになりそう、といった判断材料に使うことができます。
この記録は、次回の参考としてはもちろん、自分の課題や特徴を知ることができる貴重な資料になります。
進行方向の確認も忘れないようにしましょう。分岐地点やガスがかかって周囲の見晴らしが利かない場所などでは進行方向を見失いがちです。
北海道の十勝岳や旭岳など、頂上が一面の火山岩で覆われて目標物がない場所では、休憩後にあらぬ方向へ下山する登山者をたびたび見かけます。
頂上で大休止を取ったあとは、安心感も手伝ってか方向感覚を失う人が多い印象があります。
遭難事故要因の第一位は道迷いですから、十分に気を付けたいものです。
そのほか、体が冷えないようにジャケットを羽織り、休憩が終わって歩き出すときには脱ぐ。大量の汗をかいたときは塩分を補充します。トイレに行くこともあるでしょう。休憩は忙しいのです。
3.休憩に相応しい場所
休憩を取るときは、他の登山者の通行の妨げにならない場所を選びます。
登山道はそんなに広くありませんから、大人数のときはかなり選ばないといけなくなります。場合によっては立ったまま、ザックを背負ったままで休憩することも考えられます。
やむを得ず登山道を外れた場所に荷物を置くときは、高山植物を傷つけたりしないよう配慮してください。
つづら折りになった登山道の上を他グループの登山者が歩いているとき、崖の下など、落石の心配があるような場所は避けます。
やせ尾根などすれ違うのもやっとの場所も避けたいですね。足を踏み外したり、荷物を落としてしまう・・・なんてことにもなりかねません。
暑いときは風通しの良い場所がいいですし、寒いときは樹林帯の中の風が吹かない場所を選びます。
ついつい長居してしまいがちですが、できれば眺めの良い場所で休みたいものです。汗して登った人だけが味わえる景色は、ちょっとしたご褒美ですから。