簡易テントとして緊急時に役立つのがツェルトです。
布地部分だけで出来ている小型のテントですが、なかには底布がないタイプもあり、徹底的に軽量化、コンパクト化が図られています。
用途としては、トラブルが起きて日暮れまでに下山できず、やむを得ず夜を過ごすことになったときのテントとして。
ケガや病気で行動できなくなったとき、暴風雨で退避したときなどに、体を冷やさないようにするためのシェルターとして活用します。
持っていても使う機会がない装備です。いざというとき使い方が分からないのではシャレになりません。
緊急時に使う前提ですから、短時間で設営できなくてはいけません。強風の中、樹木のない岩場や樹林帯、ハイマツ帯など、様々なパターンでの設営環境を想定し、練習しておきましょう。
ロープを使った設営方法
テントのように張ります。緊急用のためポールはありません。木と木の間につるしたロープで屋根を支えます。細引きなど持っている装備をフルに活用します。
ストックを使った設営方法
ストックを支柱にして、細引きと石などで張って支えます。
使用しているのは、オプションで購入した専用の張り綱です。
独りで設営するなら、これがあると断然簡単便利。緊急時に使うものですから、早くパパっと設営できるということは命にかかわってきます。
かぶる
座って、頭からツェルトをかぶってしまいます。薄い生地でできていますが、これだけでも驚くほど温かくなります。
その他の活用法
・穴をほり、ツェルトを屋根の代わりにする。
・大木の根元にある穴に避難し、ツェルトを扉がわりにして入口をふさぐ。
ツェルトの中での工夫
地面や岩などに直接座わると、熱伝導で体の熱が奪われます。マットなどを持っていれば敷き、なければザックの上に座ります。
衣類が濡れているなら、乾いたものに着替えましょう。食べ物や飲み物を口にして、エネルギー補給します。
また、防寒着などを着こんで防寒対策をします。寒さが厳しいときは、レスキューシートを身体に巻き付けるなどして体温の保持に努めます。
大きなビニール袋があれば頭と腕の3か所に穴をあけてベストのように着用したり、新聞紙があれば体に巻き付ける。ザックの中身を全部出して、空にしたザックに足を突っ込む方法もあります。
軽量化のための工夫
ツェルトは使用頻度の低い装備ですから、重量増はなるべく避けたいところです。
知人の例ですが、ツェルトを快適に張るためにペグやロープなどふんだんに用意したところ、結局一人用テントくらいの重量になってしまった笑い話があります。
ストックを利用している人は支柱に活用します。細引きなどのロープは、普段持ち歩くもので兼用すれば無駄な荷物が増えません。ペグの代用には、石や砂をビニール袋にいれたものでも十分です。
専用の道具があれば確かに便利でしょうが、軽量化を第一優先として、汎用性が高い、普段使いできる道具を使い回すことを考えましょう。
わたしが持ち歩いているのは、ヘリテージのエマージェンシーツェルトです。横並びに入れば3人が緊急避難できます。
重さは260g。別売りの張り綱と一緒に量ってみたら299gでした。収納したときの大きさは缶ビールくらい。
底の部分がないタイプのツエルトもありますが、ボタン留めできる底割れ式なので、靴を履いたままでも、ボタンを留めて普通のテントのように使用することもできます。
そんなに大きなツエルトは要らない、という人なら、アライテント スーパーライト・ツェルト1がおすすめです。定員1~2人、重量は280g。ザックの中に入れておく保険としては十分だと思います。
登山を長く続けるなら、1つは持っておくべき緊急用品です。予算が確保できたら検討してみるといいでしょう。