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ストックの使い方

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登山 ストック弱さを補う道具を挙げるとしたら、その筆頭はストックです。

脚部の疲労や膝への負担を軽減してくれるストックは、身体能力の衰えを感じている中高年登山者が多い現在、標準装備になりつつあります。

一方、使いこなすには腕力が必要です。本来の機能を活かしきれていない使い方もよく見受けられます。

岩場を登るときなど、状況によっては邪魔になることもありますし、頼り切るとかえって危険なこともあります。

ストックの仕組みや限界を知り、適切な使い方を学ぶようにしましょう。

 

 

1.ツラい下りで威力を発揮

ストックが最も活躍するのは下りです。

登山 ストックを使いながら下る

下りでは、着地衝撃によって脚の筋肉が疲労します。その衝撃は「体重+装備」の2倍。

体重70㎏の人が10㎏の装備を背負って下山していると、着地の瞬間に160㎏の衝撃が片方の脚に加わります。

ストックを使うことで、着地衝撃を上半身にも分散させることができます。

膝に不安を抱えている人や脚力の無い人には必需品ですし、痛めないように「転ばぬ先の杖」としての使用もおすすめです。

バランスをとりやすくなりますので、不安定な足元に川の流れが加わる沢の渡渉ではとても重宝しますし、雨で滑る登山道を歩くときも心強いものです。

ただし、上りでは「自分の脚で上る」意識が望ましいでしょう。

上りでストックを頼りすぎると、自分と荷物を上に上げるために普段使い慣れていない上半身の筋肉を酷使することになります。

登山 ストックを使いながら登る

登りは脚の力がメイン

全身の筋肉の7割は下半身に集中しているといわれています。脚の筋肉が弱い人は上半身の筋肉はもっと弱いものです。腕や肩が悲鳴を上げたり、手首を痛めることが無いように注意しましょう。

ストックはあくまでも補助的に使うもので、基本は自分の脚で歩くことが大切です。ストックに全面的に依存しては、バランス感覚も脚力も向上しません。

登山 登り 間違ったストックの使い方

ストック依存はNG

もしもストック無しで登山が成立しなくなったら、アップダウンがほとんどない自然の中を歩くことを中心に据えるなど、全面的に山行スタイルを見直したほうがいいでしょう。もしかすると、登山の止め時かもしれません。

 

2.正しく使う

ストックを付いてから脚を運びましょう。

登山 下り 正しいストックの使い方

下りはストックに衝撃を分散します

「何を当たり前のことを言ってるんだ」と思うかもしれません。でも、その当たり前の使い方ができていないことが多いのです。

脚が悪くて杖を使用している家族がいますが、杖を突く前に脚を出して杖が用をなさないことがよくあります。不安定な足元に注意がいって、手元がお留守になってしまうのです。

杖を持つことで注意力が散漫になり、かえって危ないのではないかと心配にさえなります。使いこなすにはそれなりのトレーニングが必要でしょう。

登山 下り 間違ったストックの使い方

NG  ストックが活用されていません

山でも同様に、ストックより先に脚を運んでいる人をよく見かけます。

必要に迫られている人でさえ上記の有様です。登山の時だけ「あると便利」なレベルでストックを使うのですから、無理もありません。

当然ですが、ストックはただなんとなく使っていては効果が半減します。どんな道具もそうですが、仕組みや機能を知り使い方を熟知することで、初めて道具の持つ性能が活かされるものです。

最初は意識することで、だんだんと意識しないでも正しい使い方ができるようにしたいものです。

 

3.調節する

ストックは上りで短く、下りは長く調整します。

この基本、驚くほど知らない人が多いのです。そのままで使えないことはないのですが、正直いってもったいない。

上りに標準を合わせた長さにすると、下りでは前のめりになります。

下りに標準を合わせると、上りではバンザイし続けることになります。腰や腕など、どれだけ無駄な筋力を使うことになるのか想像できません。

また、ねじ式のストックは、登山の最中にだんだん緩んできて短くなってしまうことがあります。体重をかけたとたんにストン落ちて、その拍子に転んでしまったという話も聞きます。

女性の力では強くしめることができず、いったん強く締めてしまうと今度は緩めることができなくなって、助けを求められることもよくあります。

日ごろのメンテナンスに始まり、現場でのチェックと調整を怠らないことも大切です。

 

4.使ってはいけない場所

ガレ場や岩場、鎖場やはしごのある場所ではストックを使いません。

岩や鎖、はしごを手でつかんで体を支えることができるように、両手を自由にしておく必要があるからです。

また、石の上ではストックの先端が滑りやすく、バランスを崩すことにつながりますから使用しません。ゴム製のキャップ(石突きカバー)を付けても同様です。

こういう場所に行き当たったら、動中でも立ち止まってストックを短くし、ザックに収納するのが基本です。

急な斜面の上り下りでも使いません。その斜面がそれほど長く続かないときはストックの中央あたりを握って短くして使う方法もありますが、そこそこ距離があるとストックかえって邪魔になります。

ストックはどんな場所でも有効かというとそうでもなく、整備された緩やかな登山道などに限定されるもの。意外と使う場所を選ぶ道具なのです。

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5.マナー

ストック使用上のマナーでいちばん多く語られるのがゴムキャップ(石突きカバー)です。

高山植物を傷つけたり登山道が荒れるので、ストックを使うときは必ず付けるべき。いや、そもそも石突きカバーなんて使ったことがない。…人の数だけ常識があって、初心者は判断に迷うところです。

「基本」はありますが「模範解答」はありません。登山道の保護を優先すべきか、安全を優先すべきか、その時々で臨機応変に考えて答えを見つけてください。問題意識を持たず惰性で所かまわず突きさすことだけは避けましょう。

わたしは、山行によってストックを持っていくかどうか判断します。難易度の高い山や縦走などでは持参し、ぬかるんだ道や雨の中ではスリップしないよう石突きカバーを外し、それ以外では付けて使用しています。

ほかにも、携行するときに注意してほしいことがあります。
身近でこんな事故がありました。

登山 ストックを手に持つ 先端が人にぶつからないように注意

先端は後続者顔面の高さです

グループ山行で急登に差し掛かかったときのこと。

それまでストック2本を使っていた人が、ストックを長くしたままの状態で手首にぶら下げ、岩や木を手でつかんで登り始めました。

しばらくして「ギャッ」という悲鳴があがり、後ろから登っていた仲間がうずくまりました。

ぶら下がったまま不安定に揺れるストックの先端で、その人の目を突いてしまったのです。

幸い深刻なケガにはなりませんでしたが、一歩間違えば失明したかもしれないと考えるとゾッとします。

ストックの先端は凶器です。人混みで傘を差すときのように、人を傷つけることがないよう十分に配慮してください。

 

◆ストックの選び方やお手入れ方法を知りたい方は、こちらをどうぞ。

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