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これだけは知っておきたい!軽アイゼンの歩き方・練習方法・注意点まとめ

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軽アイゼンを装着して登る

『冬山なんてとんでもない』という登山初心者でも、夏山の残雪で使うことがあるのが軽アイゼン。

本来は冬期登山の代名詞ともいえる登山装備のひとつです。

扱いを間違えば転倒や滑落のリスクを招くかもしれず、準備や練習もせず安易に使用すると危険です。

夏山の残雪で軽アイゼンを使用するときに最低限知っておきたいことをまとめました。(※動画もあります)

目次
1.アイゼンとは?
2.軽アイゼンの選び方
3.軽アイゼンの装着方法
4.軽アイゼン歩行の3つの基本
5.軽アイゼン歩行の仕方
  >登り
  >下降
  >斜め登り、下降
  >トラバース
6.練習方法
7.注意点

 

アイゼンとは?

軽アイゼン 5本爪 モチヅキ mini-5
雪や氷の斜面を登降するときに、登山靴に付ける尖った爪のついた金具です。

種類は大きく分けると『冬期登山用』『クライミング仕様』『軽アイゼン』の3つあります。

『軽アイゼン』は爪の数が少ないのが特徴で、4本から6本程度のものをいいます。

軽量でコンパクトなので携行しやすく、脱着が簡単、価格も1000円台からあり手軽に入手できます。

わたしが持っている軽アイゼンは、土踏まずに付ける5本爪の簡易なタイプで、夏山の残雪用としては一般的です。

爪の効く範囲が小さいため、威力を発揮するのは『斜度が緩やか』で『ある程度硬い雪』であることが条件です。

急斜面やグサグサで足が埋まるような雪、カチカチに凍りついた斜面ではグリップが期待できません。

効果的に使える場所は限定されてしまいますが、雪慣れしていない人にとっては必需品です。

 

軽アイゼンの選び方

将来的に登山靴を買い替えることもありますから、どんな靴でも対応できる汎用性が高いものを選ぶようにしましょう。

夏山の雪渓で使うなら、いちばん簡易なものでかまいません。

ゴムバンドで装着するタイプは、脱着がカンタンな反面、ゴムが伸びて外れやすいという口コミが多くあるようです。

脱着にやや手間がかかりますが、ヒモできっちりと装着できるタイプがおすすめです。

ベルモント(belmont)の軽アイゼン7はベルトでしっかりと装着できるので、登山靴にしっかりフィットしてくれます。
ケースが付いて2000円台と手軽な価格ですから、エントリーモデルとしておすすめです。

 

モチヅキのmini-5は、ゴムバンドとナイロンベルトを併用したタイプです。
メーカーでは『長時間歩行に向いている』としています。
雪付着防止プレートと収納袋がついて3000円台と、こちらもお得です。

 

ちなみに、軽アイゼンはそのまま収納すると爪でザック内のものを傷つけてしまうため、保護する袋やケースは必ず必要になります。

代用できるものが無い場合は、アイゼンと収納ケースをセットで買ったほうがいいでしょう。

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軽アイゼンの装着方法

製品によって装着方法が違うため、ここでは共通する基本事項に絞ってお話します。

安全な場所を選び、山側を向いて利き足の反対から装着します。

このとき、アイゼンの爪によるケガの防止のため、必ず手袋をして装着します。(真冬ならアイゼンの鉄で凍傷のリスクもあります)

やりずらいからと素手で行ってはいけません。

軽アイゼン 手袋をして装着

 

このとき、雪崩や落石などの危険がないか、ときどき斜面の上を見るようにしましょう。

軽アイゼンの装着 ときどき上を見る

 

 

ベルトの末端は外側にくるようにします。

ベルトが内側にくると、ベルトを踏んでアイゼンが外れたり、引っ掛けてバランスを崩して転倒・滑落するリスクが生じます。

些細なことのようですが、命に関わるとても重要なポイントです。

軽アイゼン ベルト末端は外側

ベルトが長いときは事前にカットしておくか、末端を処理します。

軽アイゼン ベルトの末端処理

 

√ベルトをカットするときのポイント

ギリギリの長さで切らず、20センチくらいは余分に残しておくようにします。

登山靴が変わると必要なベルトの長さも変わりますし、ベルトが短いと手袋をした手で引っ張ることができなくなります。

いったん切ると取り返しがつきませんから、長さの調整には十分注意しましょう。

金具に通しやすくするため先端は斜めに切り、切り口がほつれてこないように火であぶって溶かしておきます。

ボンドを塗って先端を硬くしておくと、より金具や紐に通しやすくなります。

 

軽アイゼン歩行の3つの基本

フラットフィッティング

緩やかな斜面で使うアイゼン技術で、軽アイゼン歩行の最も大切なポイントです。

足裏全体が斜面に接地するように足を置きます。

軽アイゼン歩行 フラットフィッティング

足裏全体で接地することで軽アイゼンの爪を全て使うことができ、摩擦(グリップ力)が大きくなります。

慣れていない人は、怖がって山側に傾きがちです。
こうなると爪が効果的に効きません。

軽アイゼン歩行 フラットフィッティングNG例

斜面でフラットフィッティングをするのですから、膝を内側に入れたり、足をハの字に開く必要があり、いつも通りの歩き方とはいきません。

言葉では簡単そうですが、実際やってみると難しいことが分かります。
練習が大切です。

がに股

軽アイゼンに限らず、がに股は登山の歩き方の基本です。

軽アイゼン歩行 がに股

がに股で足を外側に開くと、つま先とかかとの高低差が減り、前に出した足に体重を移動しやすくなって歩きやすくなります。

斜面でのフラットフィッティングには欠かせない技術です。

足と足の間隔を広くする

歩行中は常に意識して足と足の間を広くとります。

軽アイゼン歩行 足と足の間(歩隔)を広く

自然に歩いているときの足と足の間隔は、平均して約5センチ~13センチといわれ、意外と狭いものです。

軽アイゼン使用中の事故には、軽アイゼンの爪を反対側の足のズボンやスパッツに引っ掛けて、バランスを崩して転倒、滑落につながるケースが多くあります。

緩慢に歩いているといつも通りの間隔になってしまいますから、足と足は広く開けるように常に意識しておきましょう。

※参考「観察による歩行分析」キルステン ゲッツ・ノイマン 医学書院

 

軽アイゼン歩行の仕方

実際の歩き方を詳しく解説していきます。

言葉より映像の方が分かりやすいと思いますので、最後の動画もあわせてご覧ください。

登り

軽アイゼン歩行 登り

  • フラットフィッティング
  • がに股
  • 歩幅を広く
  • 小刻みにリズム良く

斜度がきつくなってくると足首が曲がらなくなり、直登ではフラットフィッティングができなくなります。

その場合は、ジグザグを切って傾斜を抑えながら登るよう、コース取りを変更するようにします。

下降

軽アイゼン歩行 下降

  • フラットフィッティング
  • がに股
  • 腰を引かない

雪に慣れていない人は、下りで怖がって腰が引けてしまいがちです。

軽アイゼン歩行 下降NG例 腰が引けている

せっかくのアイゼンの爪が雪面にグリップしなくなり、効力がなくなります。
スリップして滑落する危険もありますから注意しましょう。

雪が柔らかくて埋まるようであれば軽アイゼンは効果的ではなくなり、かかとを下にガツンと下ろして歩く『キックステップ』で降りるほうがいい場合もあります。

キックステップについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。

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斜め登り、下降

軽アイゼン歩行 斜め登降

  • フラットフィッティング
  • 山足は進行方向
  • 谷足は下向き

『山足が進行方向で谷足は下向き』は、斜め登降とトラバースで使用する技術です。

登りで左足が進行方向に向いていたら、右足は3時の方向(90度の開き)で谷側に開き、足裏全体と軽アイゼンの全ての爪が雪面にグリップするように心がけます。
※歩きずらいので現実的には45度程度の開きになります。

斜度が厳しくなればジグを切って登降することが多くなるため、最重要技術となります。

トラバース

軽アイゼン歩行 トラバース

  • フラットフィッティング
  • 山足は進行方向
  • 谷足は下向き

難しいのは山側の足です。

軽アイゼンの爪が片側しか効いていないケースがよくありますから、膝の向きや足先の位置を変えるなど、全部の爪が効くように意識して歩きましょう。

【登り】【下降】【斜め登り・下降】を動画にまとめましたので、ご覧ください。

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練習方法

ここまで読んでくださった方には、軽アイゼン歩行には技術が必要で、習得するためには事前のトレーニングが必要なことがお判りいただけたと思います。

【登り】【下降】【斜め登り・下降】【トラバース】の要素を余すことなくできる『サーキット練習』を動画にまとめました。

本来は滑落する危険のある雪山の斜面で訓練するのがベストですが、夏山シーズンだけ登山する人にとっては現実的ではありません。

雪がなくても、軽アイゼンを装着していなくても、公園の土手や山の斜面で練習することはできますし、感覚をつかむことは可能です。

参考にしてみてください。

 

注意点

滑落したら手で雪をかき集める

雪渓を歩いていて、もしもバランスを崩したりスリップして滑落したら、何としても落下を止めなくてはなりません。

登山のウェアは雪の上で滑りやすい素材が多く用いられています。

反応が遅れると加速してしまい、止めるのがより困難になります。

勢いよく木や石に激突すれば命にかかわりますから、できるだけ早く、何等かの手を打って滑落を止めましょう。

滑落停止方法のひとつに、手で雪をかき集める方法があります。

軽アイゼン 滑落停止 手で雪をかき集める

落下しながら、手で雪をかき集めるようにします。

背中から滑落したら、お腹が下になるように向きを変えます。

軽アイゼン お尻から滑落した様子

もしも頭を下にしていたら、命がけで体勢を変えてください。

滑落しているとき足は上げる

軽アイゼン 滑落した時は足を上げる
滑落しているとき、軽アイゼンはおろか、足も雪面に付けてはいけません。

知らないと、軽アイゼンの爪を立てようとしたり、足でブレーキをかけようという考えがよぎるかもしれませんが、絶対にやってはいけません。

足は絶対についてはいけません

足は絶対についてはいけません

軽アイゼンの爪が雪面に刺さったり足が雪面に付くと、体が弾き飛ばされ、もんどりうって落下して最悪の場合は首が折れて死に至ります。

絶対に足を付けてはいけません。

だんごになった雪は落とす

軽アイゼン 団子雪は落とす

軽アイゼンに付いた雪が爪を覆い、グリップがなくなってスリップする原因になります。

夏山では気温が高いため、あまり考えられませんが、冬山ではよくあること。

雪が付いたらストックなどで雪を落としましょう。

『だんご』になるのを防止するプレートも売っていますから、使用する季節に応じて装着することも必要です。

 


 

軽アイゼンは気軽で簡単に装着できるアイゼンですが、使用方法は冬期登山の訓練を必要とするものです。

取り扱いを熟知し、相応のトレーニングを積んでおくべきものですが、実際には山に行って初めて使う登山者が後を絶ちません。

どんな装備も「ぶっつけ本番」では真価が発揮できないだけでなく、かえって危険を招く恐れもあります。

ここでは、軽アイゼンを使用するうえで最低限知っておきたいことだけをまとめていますので、ぜひ事前トレーニングでお役立てください。

残雪を歩く経験が少ない方は、まずは残雪の歩き方を習得することから始めましょう。

残雪の歩き方について、こちらの記事にまとめてありますのでご覧ください。

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