読図とは、地図から情報を読み取る技術です。「読む」と表現するくらい多くの情報が詰まっていますが、それを飲み取るにはトレーニングが必要です。
読図技術は、まずは山行計画段階で自分がこれから登ろうとする山のことを知るために必要になります。
登山中には、道迷いしないように地図で現在地と進行方向を確認するため、読図技術は不可欠です。
最近はGPSやスマホアプリで済ませる人も増えてきました。電池切れや受信状態が悪い、落として壊れるなどのトラブルもゼロではなく、万能ではありません。
読図の基本は地図とコンパスです。苦手とする人が多いのも事実ですが、山に登る以上は常に付いて回る必須技術です。とにかく慣れるしかありません。
※ここでは一般的な1/25000地形図を前提に説明します。
1.等高線から地形を読む
読図では、まず最初に「尾根」と「沢(谷)」が見分けられるようになってください。
等高線はその名のとおり同じ高さのところを直線で結んで表現されます。これにより、頂上の場所、尾根筋、沢など山全体の形を読み取ることができます。
登山によく使われる1/25000地図の等高線は、主曲線(細い線)が10mごと、計曲線(太い線)が50mごとに表示されています。
等高線が密になるほど急斜面、隙間が広くなると緩斜面になります。極端に間が開いているところは平地に近くなります。
等高線で表現できる斜度は60度程度。それ以上となると崖として表示されます。
尾根から谷を渡って隣の尾根に登山道が伸びている場合、事前に尾根と沢を頭に入れておけば道迷いする確率が下がります。
危険個所を把握したり、急登はどこあって距離はどのくらいか、休憩ポイントはどこがいいかといった山行全体のイメージを描くことも可能です。
2.尾根の特徴
尾根は山頂から始まり、沢で終わります。大きな尾根からは、途中でいくつもの小さな支尾根が分岐していきます。
山頂と山頂の間の尾根は稜線といい、途中低くなっている所をコル(または鞍部、キレット)といいます。
コルの下部には必ず沢があり水を確保することができ、キャンプ指定地や山小屋などによく利用されます。
登山道の約8割は尾根につけられています。尾根沿いの登山道は、登るときは目指すところが集約されていきますから迷いにくく、下りは支尾根が分岐して広がっていくため、迷いやすくなるという特徴があります。
3.沢の特徴
沢は太古の昔形成された山が、水の浸食によってできた溝地です。
沢の最上流部は源頭と呼ばれ、さらに登ると山頂またはコルに行き着きます。源頭部は岩がゴロゴロとしたガレ場になっていることが多く、そこから流れ出た水が徐々に合流し、水量を増して大きな流れになっていきます。
尾根登りとは逆に、沢は上流にいくほど支流が多くなります。沢登りでは登りが迷いやすく、下りは迷いにくいのが特徴です。
道に迷ったとき、人は下に下にと進み、沢に入ってしまうことが多いといわれています。沢には必ず滝があり崖があります。
滑落したり、登り返す体力がなくなって進退窮まることになりますから、迷ったときは絶対に沢(谷)に入ってはいけません。
4.距離を測る
1/25000地形図では、1cmは250mです。簡単なことですから、疲れていても頭から出てくるように完全に覚えてしまいましょう。
5.傾斜の判断
傾斜は等高線の水平間隔で示されます。密なほど急で、間隔が広がるほど緩やかな傾斜です。
おおよそ下記のようになります。
- 0.5mm ⇒ 39度
- 1mm ⇒ 22度
- 2mm ⇒ 11度
- 10mm ⇒ 2.5度
斜度30°くらいになると、体感的には崖のように感じます。
上の地図は霧で有名な摩周湖です。湖の淵は断崖絶壁ですが、目盛から39度程度であるということがわかります。
スポンサーリンク
6.地形図を使う~現在地の確認
街中で案内図を見るときは、必ず現在地を確認します。山でも最初に行うべきことは現在地の確認です。
現在位置を特定するにはコンパス(方位磁針)と目標物2点が必要です。
東京23区内にいるとします。
東京タワーが南に見えるとすると、東京タワーから北の直線上のどこかにいると特定できます。
次に、スカイツリーが東に見えます。この情報から直線上に特定できていた現在地が、ピンポイントで特定できることになります。
ただし、山では濃霧やヤブで目標物が見えない状況での道迷いが多くなります。そのようなときは、最後に確認できた地点から歩いた軌跡を推定することになります。
7.地形図を使う~進行方向の確認
地形図を使うとき、現在地の確認と並んで重要なのが進行方向の確認です。
道迷い遭難のほとんどは、これを怠ったために発生しているといっても過言ではありません。
予期せぬ登山道の分岐、地図に載っていない林道、曲がり角の目標物となる大岩等の見誤り、残雪、獣道・・・いとも簡単に間違えてしまうものです。
下山中の道迷いが圧倒的に多いです。登りで一度通った安心感からか油断しがちになりますが、要所では進行方向確認の徹底をしましょう。
8.地形図を使う~山座同定
山座同定とは、ピークを見てどの山かを特定することです。
通常は1/25000の地形図を使うことが多いですが、広域の1/50000のものがあると山座同定に役立ちます。
独立峰は比較的簡単ですが、似たようなピークが連なる山脈などでは難易度が高くなります。
山は見る方角が変わるとまったく違う姿を見せてくれるものです。頂上を踏んだときの休憩時間に、このような方法で未確認のピークを特定するのも登山の楽しみのひとつです。