遭難救助は無料ではありません。
場所や緊急度に応じて、警察や自衛隊が出動することもあれば、地元の民間救助隊が捜索することもあります。
基本的に公的機関による救助や診察を受けた場合は費用を求められることはありませんが、民間の場合は費用が発生します。
救助隊なら日当や食事などを含めると一人当たり平均4~5万円、民間ヘリコプターを要請したときの目安は1分1万円とも、1回飛ばすと60~100万円ともいわれています。
保険に入っていなければ軽くひと財産失います。そんな出費に備えることができるのが、山岳保険のが最大の特徴です。
年間で数千円程度で加入できるのですから安いもの。必ず加入しておきましょう。
メモ
2017年11月14日追記
【自治体の防災ヘリ全国初の有料化 5分5千円】
埼玉県では、平成30年1月1日より、県防災ヘリコプターによる救助を受けた場合に手数料を徴収することを決定しました。
手数料は5分間の飛行で5千円。1時間で6万円となる。
※過去の平均救助時間は1時間程度
※燃料費の実費に相当
対象地域は、雲取山の山頂から水平距離3km以内、ロッククライミングが盛んな日和田山の南麓の男岩から水平距離100m以内など。
参考:埼玉県ホームページ
1.山岳保険って何?
山岳保険とは、基本的に普通傷害保険に登山者向けの特約保険をつけたものです。特約の中でもいちばん重要なのが、遭難救助費用が含まれている点です。
注意したいのは、遭難事故のすべてを補償するものではないということ。ケガや事故の『原因』は何だったのか、それによって費用が支払われないことがあるのです。
傷害保険の基本条項として「急激かつ偶然な外来の事故」という条件があります。既往症、高山病、心筋梗塞、低体温症など、病気を原因とするものによる遭難はこの条件には当てはまらず、多くの山岳保険では補償対象外になります。
たとえば「凍傷によって動けなくなった」は支払の対象にならず、「雪崩や滑落などが原因で動けなくなり凍傷になった」なら費用が支払われます。
警視庁によると、令和元年の山岳遭難は、道迷い(38.9%)、滑落(16.5%)、転倒(16.8%)、病気(7.0%)、疲労(7.5%)、その他(13.4%)となっています。
多くの山岳保険で適用されない病気と疲労が上位に入っていることに、特に中高年は注目すべきです。
保険を選ぶ際には、補償の内容をよく確かめてから加入するようにしましょう。
メモ
どこで遭難したのか分からない人を探すのが、いちばん費用がかかります。捜索が長引けば民間救助隊に依頼することになり、高額な費用が発生するからです。
遭難者が見つからない場合は「死亡」ではなく「失踪扱い」となることも、意外と知られていない落とし穴です。死亡認定は失踪宣告を受けてから最長で7年かかりります。それまで、残された家族は生命保険金は受け取れず、住宅ローン返済も免除されません。
山岳保険の障害死亡保険金や捜索救助費用なら、「明らかに登山に出掛けたこと」「捜索活動がなされたこと」がわかれば、給付にそれほど時間がかかりません。
2.山岳保険の種類
現在は様々な山岳保険が販売されていますが、大きく分けて次のような種類があります。
①使用する用具の違いによるもの
・ハイキングやトレッキングなど、アイゼンやピッケル等の登山用具を使用しない軽登山
・アイゼン・ピッケル・ザイル等を使用する本格登山
②補償内容の違いによるもの
・一般的な傷害保険に遭難・救助費用が含まれている総合型保険
・遭難・救助費用のみ補償する特化型保険
③遭難原因の違いによるもの
・疾病を原因とするものは補償対象外
・既往症や熱中症、低体温症など、疾病が原因の遭難も補償対象
④補償期間の違いによるもの
・短期
・年間もしくは複数年の長期
3.代表的な3つの保険
(2020年2月時点筆者調べ)
【モンベル】
スポーツメーカーのモンベルのアウトドア保険は、ケガを対象とした一般的な傷害保険に遭難救助費用が付いた標準的な保険です。疾病を原因とする遭難や事故は補償対象外となります。
最大の特徴は、1泊2日などの短期補償タイプがあること。
短期補償
用具による違い | 名称 | 保険期間 | 保険料 |
ピッケル等なし | 野あそび保険 | 1泊2日から6泊7日まで | 250円~ |
ピッケル等あり | 山行保険 | 1泊2日から6泊7日まで | 1,000円~ |
長期補償
用具による違い | 名称 | 保険期間 | 保険料 |
ピッケル等なし | 野外活動保険 | 1年、3年、5年 | 3,190円~ |
ピッケル等あり | 山岳保険 | 1年、3年、5年 | 6,110円~ |
WEBサイトから申し込み可能です。必ずしも会費を払ってモンベルクラブ会員になる必要はなく、通信販売利用などでIDとパスワードを持っていれば誰でも加入できます。
翌日から1か月先まで保険開始日を選べるのが嬉しいポイント。余裕をもって手続きできるので、保険手続きの「うっかり忘れ」を防ぐことができます。
疾病による事故や遭難は補償の対象外ですので、どちらかといえば若い世代に向いている保険だといえるでしょう。
年に数回しか登らないという方や、人に誘われて初めて登るが継続するかどうか分からないという方にも、手軽で使い勝手のよい保険です。
~こんな人におすすめ~
- 登山は年に数回だけ(短期補償)
- ウェブで簡単に手続きを完了したい
- 病気の心配があまりない若年層
- 死亡保険金や入院・手術などの補償を手厚くしたい
出典:モンベル
【JRO日本山岳救助機構合同会社】
JROの山岳遭難対策制度は、保険や共済ではなく、会員で運営を支え合うユニークな制度です。
季節や用具、屋外活動の種類、年齢も問いませんし、山行スタイルも問いません。遭難救助にかかった費用は550万円まで実費補てんされます。※2019年4月1日より330万円から550万円に変更
ザイルを使った本格的登山や氷壁登はん、トレイルランニング、渓流つり、マウンテンバイクなど、つまりは山で起こる遭難事故が補償の対象になります。(海外は除く)
病気による遭難も対象。山行中の発病は100%補てんですが、既往症・持病は減額される場合もあります。
費用は、「入会時のみ入会金2,000円(税別)」+「年会費2,000円(税別)」と会員期間(1年間)終了時に「事後負担金(750円~1,500円の間の見込み)」を負担します。
2年目以降は年会費2,000円(税別)と会員期間(1年間)終了時に事後負担金を負担します。
事後分担金とは、当該年度にJROが実際に支払った補てん金の総額を会員総数で割って、あとから会員全員で公平に分担するというもの。
事故が多くなれば負担金は増え、事故が少なくなれば負担金も減少することになります。2019年の会員総数は約91,000名。事後分担金は300円でした。
実際に発生した遭難事例と補てん金額が報告書で公表されるので、会員が皆で支え合っていることを実感することができます。
報告書は誰でもホームページ上で閲覧できますから、山岳遭難にはどのようなものがあるのか、どのくらい費用がかかるのか、参考までに見ておくといいでしょう。
遭難救助費用がもっとも高額になるのは、単独で入山して行方不明になり、警察による捜査が打ち切られたあと、有料救助隊によって捜索が続けられているケースです。
2020年の報告書はこちらから見ることができます。
入院、通院、死亡、個人賠償責任などに対する補償は一切ついていませんので、場合によっては生命保険や傷害保険で補う必要があるでしょう。
わたしも含め、ほとんどの人が生命保険や傷害保険に入り、必要かつ十分な補償をつけているのが現状です。山での遭難救助費用だけが必要なら、この制度が最適です。
家族割引があり、追加で加入する家族は入会金・年会費それぞれ500円(税別)割引になりますから、ご夫婦で登山を楽しんでいる方にもおすすめです。
~こんな人におすすめ~
- 補償は遭難救助費用だけでいい
- なるべく保険料を抑えたい
- 夫婦で登山する
- 持病はないが、病気を起因とする事故や遭難が心配な年齢
- 山行スタイルが定まっておらず、登はん用具を使う可能性もゼロではない
【日本山岳協会山岳共済会】
この山岳遭難・捜索保険は、「登山コース」のみ既往症に関係なく疾病が原因での遭難が補償の対象になるのが最大の特徴です。
もうひとつの「ハイキングコース」は補償対象外ですので、「登山中、脳卒中で岩場から転落した」などは補償されません。
道具による違い | 名称 | 保険期間 | 保険料 |
ピッケル等なし | ハイキングコース | 4月1日から1年間 | 2,620円~ |
ピッケル等あり | 登山コース | 4月1日から1年間 | 4,450円~ |
年会費は1,000円です。途中加入の保険料も別途制定されていますが、保険始期日を自由に決めることはできません。
現在の登山ブームを支えているのは50代~70代で、病気による事故や遭難のリスクが見逃せない年齢層です。
この年代には、アイゼンやピッケルなどの登はん用具を使わない山行スタイルだとしても、疾病による補償も対象とし広く補償がついた「登山コース」がおすすめです。
※保険料が手ごろな「日常生活賠償」の補償がないタイプもあります。
~こんな人におすすめ(登山コース)~
- 中高年
- 持病がある
- 死亡保険金や入院・手術などの補償を少しだけ上乗せしたい
- 山で何かあったら全てまかなえるようにしたい
出典:日本山岳協会 山岳共済会
ここまで代表的タイプの山岳保険を3つ紹介しましたが、ひとくちに山岳保険といって様々で、それぞれにメリット・デメリットがあるのがお判りいただけたと思います。
山岳保険に入る前に、まずは自分の加入している生命保険、傷害保険などを総ざらいして内容を確認してみてください。
最近ではクレジットカードに傷害保険がついていることがよくあります。気づかずに何らかの保険に加入しているかもしれません。
そのうえで必要な補償は何かを考えると、自分に合った山岳保険が見えてくると思います。
また、年月の経過とともに、健康状態や扶養家族の有無などのライフスタイルが変化することを忘れてしまいがちです。
一度決めたらずっと…ではなく、生命保険と同じように山岳保険も定期的に見直しをすることをおすすめします。
◆山岳保険の具体例として、管理人の入ってる内容や保険に対する考え方を紹介しています。参考例としてどうぞ。
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