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ピーク(頂上)は午前中に踏むべき3つの理由

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登山にはピーク(頂上)は午前中に踏むという大原則があります。ところが、いざ山に入ると午後から登り始める人が後を絶ちません。

彼らは「山をなめている」というより、単に「知らないだけ」なのでしょう。現在の登山愛好者は山岳組織に所属しない人がほとんど。そういったノウハウを学ぶ場がないのです。

見かけるたびにハラハラする彼らに教えてあげたい、午前中にピークを踏むべき3つの理由をご紹介します。

 

 

1.理由1:山の天気は午後から崩れやすい

山 午後 天気が崩れる

山の天気が変わりやすいことはよく知られています。午前中はわりと安定し、午後からは大気が不安定になります。

なぜなのか。

日中暖められた大気が上昇し、山肌を上っていくうちに冷やされて局地的低気圧のような状態が発生します。

冷やされていく過程で、空気に含まれていた水蒸気が雲になり、雨を降らしたり雷を発生させるのです。

また、高層の天気は下界よりも崩れるのが早く、回復するのが遅くなります。

明日から低気圧が来るから、天気の良いうちに登ってしまおう。そう考えて出かけても、山ではその日のうちに崩れ始めることが多くなるのです。

初心者なら、装備もまだ万全ではないかもしれません。なるべく条件が良い状態で登山を楽しみたいもの。わざわざ天気が崩れるリスクが高い時間帯に登る必要はありません。

こういったことから、午後から山に入るということはありえないのです。

 

2.理由2:気温が高くなる

登山 晴れれば 暑くなる

天気の良い日は、山の上でも気温が高くなります。

上りで注意しなければならない事故に、心臓疾患による突然死があります。上りの運動では心拍数も血圧も上昇し、心臓に相当な負担がかかります。

登山愛好家の50%以上が60歳以上で占められています。山での心臓発作はまず助からないといわれていますから、とくに高齢者は注意が必要でしょう。

そのうえ、気温が高く、季節によってはまとわりつくような湿気の中を、重たい荷物を背負って運動するのは誰であれ避けたいところです。

基礎疾患のない人でも、暑いというだけで体力を消耗して疲れるのは同じです。できるだけ涼しい時間帯に上り始めるべきです。

暑さで脱水をおこしてふらつく、集中力が欠けてちょっとした石につまづいく。そんな些細なことから滑落事故につながった例も多くみてきました。

気温が高くなる午後に入山するメリットは全くありません。

 

3.理由3:日が暮れる

登山 日暮れ

当然ですが、上り始めが遅くなれば下山も遅くなります。

トラブルはいつも自分を避けて通ってくれるとは限りません。ひとたび問題が生じれば、日が暮れて行動不能になってしまいます。

北海道の夏山で実際にあったケースです。

登山はほとんどしたことがない男性が、最寄りの駅からタクシーに乗って登山口に着いたのが午前11時ころ。その時間から、健脚の人でも上り5時間、往復で9時間くらいかかるコースを上り始めました。

頂上に行くのは諦めたものの、引き返す途中で日没を迎えてしまいます。

暗闇のなか、携帯電話の液晶画面で足元を照らしながら下山を続けましたが、道に迷って地元警察に自ら110番通報しました。

翌朝、地上からの捜索隊に発見されて、付き添われながら自力下山。雨が降らず、風もない穏やかな夜だったのが幸いでした。

男性は、特別な装備も持たず、近所に買い物に行くような軽装だったそうです。それでも無事助かったのは、単に運が良かっただけ。

山をなめていたわけではないでしょうが、あまりにも山のことを知らなすぎる迎天エピソードです。

 

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4.おまけ:魔の時間帯

登山 魔の時間帯

時間にまつわる話は他にもあります。

昔から登山愛好家の間では、午前11~午後2時くらいの時間は事故がよく起きる「魔の時間帯」といわれてきました。

山岳遭難研究で知られる関西大学教授の青山千彰氏による調査では、次のような結果が出ています。

日帰り登山の事故は午後2時に集中しており、宿泊登山の場合は午前9時ごろに見られるが日帰りほど明確なピークは示さない。

その日の山行行程を感覚的に4段階【前半(1/4行程)、前半(2/4)、後半(3/4)、後半(4/4)】に分けたとき、事故の発生する行程は圧倒的に「下り斜面」の「3/4行程」で発生している。

出典:「山岳遭難の構図」青山千彰著 東京新聞出版局

なぜこの時間帯に多くなるのか、原因ははっきりとわかっていません。

疲労が原因であれば4/4行程が最も事故が多くなるはずですから、結果は疲労による筋力低下だけではないことを示しているといえます。

午前中にピークを踏んだら、下山を開始してほどなく経過した時間帯です。頂上でお腹に食べ物を詰め込んで胃に血液が集まり、集中力が無くなってボーとしているのかもしれません。

気温が高い時間帯であることも影響しているかもしれませんし、頂上を踏んだことによる安心感から気の緩みが生じたかもしれません。いずれにしても、複数の要因が絡み合っていることは間違いないでしょう。

わたしが今まで見聞きした事故やケガも、やはり午前11時~午後2時の間に集中しています。また、ゲレンデスキーの事故やケガもこの時間帯に事故が多いことがわかっています。

知っているだけで防げる事故やケガがあります。折りに触れて注意して、気を引き締めるきっかけになればと思います。

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