雨具は常にザックの中に入れて持ち歩く必需品です。
その名称から雨が降ったときに着るものと思われがちですが、山では通常のウェアとして活用します。
山では雨や汗で衣類が濡れると体温が奪われやすいことは知られていますが、体温を下げる最大の敵は風だということはあまり知られていません。
雨と風の両方に対策がとれる雨具の性能は、命を左右しかねない重要ポイント。過酷な状況になればなるほど、良くも悪くも真価を発揮します。
品質の高さは価格に反映されますが、ここは資金を投入する価値大と考えて良いものを購入するようにしましょう。
1.雨具の選び方
雨具に限らず、登山の装備は最悪の事態を想定して購入することをおすすめします。
雨天時のカッパならポンチョや傘で代用できるだろうと考えがちですが、山の上ではシトシトと静かな雨ばかりではありません。
激しい降りに登山道が川のようになったり、強風が伴って雨具の隙間から雨が入り込み、目を開けていることさえ困難になることもあります。
そんな中をポンチョで歩いたら、風でめくれ上がってずぶ濡れになるでしょう。傘は役に立たないですし、第一片手がふさがって危険です。
もしかすると自分の命を左右するかもしれない大切な装備です。決して安くはありませんが、雨具に関しては高品質・高機能のものを選びたいものです。
形状はジャケットとパンツの上下セパレート型、素材は防水性と通気性を持つ素材であるゴアテックスを使用したものをおすすめします。
2.防水透湿素材を選ぶ
山では外からの雨を防ぎ、自分の汗で内側からも濡れないようにしなくてはなりません。
なぜなら、雨や汗で濡れることで体温が奪われると、低体温症になり命にかかわることがあるからです。
ホームセンターで数千円で販売されているビニール素材の雨具は、防水性はあっても汗は逃がしてくれません。
運動量の多い登山でそんな雨具を着ると、自分の汗で中に着ている服がずぶ濡れになります。そこに風が加われば、あっという間に体温を奪われてしまいます。
登山用品の多くに用いられている素材が、水は通さず水蒸気は通すことを可能にしたW.L.Gore & Associates開発の防水透湿素材【ゴアテックス】です。
値段は高価ですが、性能は他の追随を許しません。周囲ではわたしも含めてゴアテックスへの信頼が圧倒的に高く、他の類似素材の雨具を使用する人は皆無と言ってもいいほど。
とはいえ、各アウドドアメーカーではオリジナル防水透湿素材を用いた雨具を販売しています。比較的安価なものでは10000円程度で手に入りますので、比較検討してみるといいでしょう。
また、雨具の中にもグレードがあり、厚みが増してくるほどかさ張って重くなります。蒸し暑い時は薄手の雨具が良いですが、ヤブ漕ぎするなら雨具が破れる心配もあるでしょう。
どんな地方のどんな山を登るかによって、選ぶ雨具はある程度決まってきます。自分の山行スタイルが定まっていない人は、春~秋の3シーズン用途で探してみましょう。
3.雨具の出番はどんな時?
登山では、少ない装備で工夫を凝らし、幾通りも使いこなすのが基本です。
よく晴れた日の登山なら雨具の出番はないかというと、そうでもありません。
風が強いときは体温を奪われないよう、防風対策として雨具が必要になります。防寒対策としても、中に空気の層ができるように重ね着したうえでアウターに雨具を着用します。
登山道を朝露で濡れた草が覆っているようなときは、下半身が濡れないようズボンだけ着用し、汗をかいたあとの休憩では、体を冷やさないように雨具のジャケットを羽織ることもよくあります。
突然の雨はもちろんですが、ジャケットだけ、パンツだけを着用する機会も含めると、雨具の出番は意外と多いもの。
雨具は非常時に使うものではなく、通常のウェアとして活用するものです。
4.雨具は防寒具ではありません
雨具は防寒具になりません、と言ったら驚くでしょうか?
雨具の中に着ているものが薄手の衣類であれば、皮膚と外気の間に断熱材となる空気の層が形成されません。
熱は高いところから低いところに移動しますから、ピットリと体にまとわりついた雨具は逆に体温を奪ってしまうので要注意です。
寒さ対策をするなら、雨具の中にフリースやダウンのミッドインナーのような防寒着を着る必要があります。空気の層を作ることで、体温が奪われるのを防ぎ、外からの冷気も遮断してくれるのです。
北海道の夏山登山では、真冬仕様のフリースを装備の中に加えています。標高が高い山や緯度の高い地方では、真夏でも防寒着を1枚プラスするようにしましょう。
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5.メンテナンス
汚れがたまると蒸れを外に逃がす穴が塞がり、雨具最大の機能である透湿性能が低下します。
汚れが見えなくても定期的に洗濯することをおすすめします。クリーニングに出すときは防水透湿素材であることを告げ、撥水処理もしてもらいましょう。
自宅で行う場合は「専用の洗剤を使って洗濯機で洗い、干して乾かし、アイロンがけする」のが一般的なお手入れ方法です。
アイロンがけとは意外かもしれませんが、これにより表面の微細な繊維が立ち、水をはじくようになります。
ちなみにスイレンの葉が水をはじくのはその原理。専用の防水材を水にとかして浸ける方法もありますが、この方法でもアイロンは必須です。
それでも撥水性が回復しないときは、市販の撥水スプレーをかけます。
通常の衣類とは違い、「強く絞ると生地が傷む」「折り目がつくと劣化しやすくなる」など、取り扱いには一定の注意が必要になります。
メーカー推奨の理想的なお手入れ方法をきちんと行うと、機能を持続させて長く愛用することができます。詳しくは各メーカーのウェブサイトを参考にするといいでしょう。
破れてしまった時はゴアッテックス専用のリペアシートで修理が可能です。リペアシート自体がゴアッテックスになっているので透湿性を維持できます。
裏側の縫い目に処理された防水シールが剥がれることもあります。ある程度は修理できますが、あまりにひどい場合は寿命と考えましょう。
雨具も経年劣化するものです。着用していなくても、購入してから時間がたったら点検を怠らないようにしてください。