山の栄養学

経口補水液の作り方(レシピ)

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経口補水液を手作りするときのコツは、きっちり計量すること。

塩分と糖分が適切な割合で混ざっていなくてはいけませんから、ざっくり計量や自己流レシピは避けましょう。

 

 

1.経口補水液って何?

人の体は、ほとんどが水と塩分(電解質)が混ざった「体液」でできています。

体液の量は、子ども70%、成人60%、高齢者50%ほど。体液が不足している状態を脱水症といいます。

脱水症から回復させるには、水分と塩分を同時に補給する必要があります。それに適しているのが経口補水液です。

 

2.成分は何?

主成分は水分塩分(電解質)ブドウ糖

ブドウ糖は水分の吸収速度をアップさせる役割を果たします。

経口補水液は、水分が素早く腸から吸収されて体内にとどまるように、これらの成分を絶妙なバランスで配合しています。

市販されている経口補水液に近いものを自分で作ることはできますが、その際は、材料をきっちり計ることがとても重要になります。

 

3.どういう原理で吸収されるの?

濃度の違う水溶液が細胞膜を通って行き来するとき、水だけが濃度の低いほうから高いほうへ移動することを「浸透」といい、同じ濃度になろうとする力を「浸透圧」といいます。

浸透圧の決め手になるのがナトリウム(塩分)とカリウムです。

人間の体液は約0.85%の塩分濃度に保たれているのは、塩分濃度が低くなったり高くなったりしたときに、ナトリウムやカリウムが細胞の中や外へ移動して、浸透圧を調整しているからなんです。

市販されている経口補水液は、水分が体に吸収されやすく、かつ体内にとどまってくれるように、ナトリウムやカリウムなどの成分を人の体液に近い浸透圧に調整しています。

 

4.スポーツドリンクと何が違う?

人の体液の浸透圧と等しいのがアイソトニック飲料です。自動販売機などで手軽に手に入れられるスポーツドリンクはほとんどがこれ。

登山中何も問題なければアイソトニック飲料(スポーツドリンク)で十分です。ただし、経口補水液のような組成の基準がないため、商品によって成分がバラバラで、補水効果にも差がありますから、選ぶときは注意が必要です。

体液よりも浸透圧が低いのが、ハイポトニック飲料と言われる飲み物です。アイソトニック飲料(スポーツドリンク)よりも腸にすばやく届き、水分の吸収も速やかなのが特徴です。

経口補水液はハイポトニック飲料のひとつに入ります。塩分が多く、糖分が少ないので、登山で大量の汗をかいたり激しい運動をしたとき、熱中症になったときにおすすめです。

 

5.基本レシピ

自分で作る経口補水液の基本レシピです。

【材料】

水:1ℓ

塩:3g

砂糖:40g

 

6.低カロリーレシピ

甘さ控えめのカロリー・オフ・レシピです。

【材料】

水:1ℓ

塩:3g

ブドウ糖:18g

純度100%のブドウ糖を加えることで、砂糖よりも60%カロリーをカットすることができます。また、砂糖を使うよりも吸収が早くなります。

 

7・レモン果汁入りレシピ

【材料】

水:1ℓ

塩:3g

砂糖:40g

レモン果汁:50ml

わずかですがカリウムを補給できるうえ、爽やかで飲みやすくなります。わたしのイチオシです。

 

8.グレープフルーツ果汁入りレシピ

【材料】

水:1ℓ

塩:3g

砂糖:40g

グレープフルーツ果汁:100ml

美味しいからといって果汁を多くすると、糖分濃度が高くなり、浸透圧も高くなって小腸からの吸収が遅くなります。

塩分を抑えたり、甘さを控えめにしすぎても、成分のバランスが崩れて吸収が悪くなります。

 

参考までに、神奈川県立保健福祉大学の谷口英喜教授による浸透圧実測値は次の通りです。

・基本レシピ(果汁無し) 浸透圧実測値226

・レモン果汁入りレシピ レモン5%添加(50ml) 浸透圧実測値263

・グレープフルーツ果汁入りレシピ グレープフルーツ10%(100ml) 浸透圧実測値278

人の体液の浸透圧は280mOsm(ミリオスモル)です。

水は濃度が低い方から高いほうに移動しますから、人の体液より浸透圧が低いものを飲むと、体への吸収が早くなります。

 

9.注意点

自家製ですから、どうしても雑菌の混入を防ぐことができません。作ったら、その日のうちに飲み切るようにしましょう。

古くなった容器は、長年の使用で内側にキズがついていることがあります。内側にキズがついた水筒にスポーツ飲料水を入れて保管し、金属が溶け出して中毒を起こした実例もあります。定期的に買い替えてくださいね。

ペットボトルは1回の使用を前提に作られています。空き容器の使いまわしは、衛生面や耐久面の問題がありますから、絶対にやめましょう。

 

参考:「イラストでやさしく解説!「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本」谷口英喜 日本医療企画
「食品衛生の窓」東京都福祉保局

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