登山は歩くことが基本ですから、装備の中でも靴は最も気を使いたいものです。
トレッキングシューズ、沢靴、クライミングシューズ、積雪期用、スキー兼用靴など種類も様々あり、季節や山行内容によって使い分けることになります。
最初に選ぶなら、雪の無い季節に軽い荷物を持って歩くのに適したトレッキングシューズ・ハイキングシューズと呼ばれる登山靴で十分でしょう。
重たい荷物を背負ったり難易度の高いコースに挑戦するなら、ソールが硬くてしっかりと足を守ってくれる登山靴を履きます。
各メーカーから相当数の種類が出ています。登山専門店で現物を試し履きし、自分の足にぴったりフィットしたものを見つけてください。
登山靴は登山の要ともなる道具です。納得のいくものを選びましょう。
1.初心者が買うならこの2つ
「軽い布製のトレッキングシューズとがっちりした本格的登山靴、どちらがいいですか?」とよく質問を受けます。
どちらがいいかは、山行内容で違ってきます。
①トレッキング・ハイキングシューズ
日帰りの低山やハイキング程度の内容なら、トレッキングシューズやハイキングシューズと言われる軽い登山靴で十分です。
雪の無い時期に、軽い荷物で起伏の少ない穏やかな登山道を歩くのに適していますから、これから登山を始める人が初めて買う登山靴としておすすめでしょう。
このタイプは、靴のソールが柔らかくて歩きやすく、軽いのが特徴です。街中でも履けるデザインが多く販売されていますから、家を出るときから履いている人も多くみられます。
足になじみ易く、日常的に履いている靴との違和感があまりないので、履きこなすことが容易です。
足運びもスムーズですから、脚力の無い人や体力に自信がない人、初心者の初めの一足にはうってつけでしょう。
デメリットは、耐久性がないこと。また、素材が柔らかいため安定性に欠け、足をサポートする能力も高くありません。
浮石や巨石のあるガレ場、急斜度が長く続くコースなど、難易度が高くなるとこの靴では限界です。
②登山靴
![ガレ場](http://tozan-syoshinsya.com/wp-content/uploads/2017/05/IMG_8257.jpg)
こんな所で登山靴のありがたみが分かります
急斜面があるなど難易度の高いコース、重たい荷物を背負う縦走登山、ガレ場や岩の多い山などでは、ハードな山行に対応するしっかりとした作りの登山靴が必要になります。
登山靴は、夏山用だけに限定しても、革と布のコンビのややソフトなタイプから、冬山以外の3シーズンに対応したオール皮革製のヘビーなタイプまで、グレードにかなりの幅があります。
このタイプは、ソールが硬くて溝も深くしっかりとしているため、岩場や泥、残雪のある斜面でもグリップしてくれます。
丈夫な作りと素材でできているため衝撃に強く、耐久性も高くなります。大小さまざまな石が散乱し浮石も多いガレ場、ぬかるんだ登山道を長時間歩くといった悪条件になるほど、靴の威力が発揮されます。
デメリットは重いこと。値段もトレッキング・ハイキングシューズより高価です。また、しっかりとした作りなので足首の動きが制限され、平坦な道を歩くと疲れやすくなります。履きこなすには、それなりの脚力が必要になります。
順序としては、最初はライトな登山靴を購入し、山行レベルが高くなってライトな登山靴の限界を感じるようになったら、ハードでしっかりとした登山靴を購入するといいでしょう。
2.形状は何がいい?
初心者には、安全性の高いハイカットタイプをおすすめします。
登山靴には、運動靴のような高さがくるぶしの下までのローカット、くるぶしを半分程度覆うミディアムカット、完全に覆うハイカットの3タイプがあります。
ローカットは足首が自由になる反面、斜面や下りで足首にかかってくる負担を軽減してくれません。
ハイカットは足首が自由に動かせなくなりますが、長い下りや疲れたときに威力を発揮してくれます。岩の間に足を入れても痛くありませんし、突き出した石や木の根などからも守ってくれます。
整備が行き届いた登山道では歩きにくさに意識が行くかもしれませんが、過酷な状況下になればなるほど有難味がわかるでしょう。
3.素材
トレッキングシューズやハイキングシューズと言われる軽い登山靴には、つま先やかかとなどの一部に革を使い、他の部分は化学繊維の布地というコンビタイプが多くなります。
布地には防水加工されたゴアテックスなどの素材がよいでしょう。通気性がよく、手入れも楽ですし、値段も手ごろです。
しっかりタイプの登山靴にも、トレッキング・ハイキングシューズ寄りのグレードでは布と革が使われたコンビタイプが出ています。
ただし、3シーズン対応の登山靴になるとオール皮革製のタイプが多くなり、皮革にゴアテックスを使用した製品も登場しています。
皮革製の登山靴は頑丈で汚れに強いというメリットがある反面、重量があり、手入れが必要で値段が高くなるデメリットがあります。
グレードの高い登山靴になると、ソールの張替が可能なものも多く出回っています。張り替えて長く愛用すると長期的にはリーズナブルだといえます。
4.フィッティング
登山靴はホームセンターのようなところでトレッキングシューズっぽいものを選ぶのではなく、登山専門店で購入してください。
色やデザイン、メーカーやモデルで選ぶのではなく、自分の山行スタイルに合う靴の中から履き心地最優先で購入します。
お店に行くときは、足が小さい朝よりも夕方がおすすめです。というのも、活動しているうちに足が浮腫んで大きくなるからです。
自分の登山用靴下を持っている人は持参し、なければお店にある靴下を借りて、靴下を着用した上で試し履きします。
靴下によってフィット感がかなり違ってきますから、できれば自分の靴下を持参した方がいいでしょう。
サイズは、つま先を靴の先端に合わせて、かかとに人差し指が差し込める1センチ程度の余裕があること。ちなみに運動靴のようにつま先を押しても硬くて判りません。
店内を歩き回り、かかとが浮いたり動いたりしないか、部分的に当たるところはないか、きつくないか、時間をかけて何種類も試して比較し、徹底的に吟味します。
登山専門店の靴コーナーには、必ず登山道を模した階段上のスロープがあります。平らな場所だけでなく、スロープや階段を登り下りしてみましょう。
登山は長時間歩くので、試し履き時点でちょっとでも違和感があると、実際山に行ったときにはどんどん違和感が増幅するものです。
しっくりこない原因は、中敷きや靴下を変えることで解消できる程度のものか、それとも靴の形状自体合わないのか、分からないときや判断に迷う時は店員に聞いてください。
登山靴のサイズには統一規格がありません。同じ26cmでもメーカーによって大きさや形状が違います。ネット通販でサイズだけを頼りに購入するようなことは避け、かならずフィッティングするようにしましょう。
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5.メンテナンス
帰って来たら、泥やホコリなどの外側の汚れを落とします。特にソールの泥は歯ブラシなどを使って細かいところまで洗い流します。汚れが酷いときは、紐を全て外して作業する方がいいでしょう。
中敷きを取り、陰干しします。布と革のコンビタイプは、乾いたあとに専用の防水スプレーをかけます。皮革製の靴は、栄養を補給するクリームを定期的に塗り、防水スプレーなどをかけます。
エキノコックスに感染する人が毎年20名ほどいるといわれている北海道では、登山靴に付いた泥を家に持ち込まないよう気を使っています。
エキノコックスを媒介するキツネは登山道をよく使い、マーキング目的で糞をします。登山靴の裏に糞をつけたまま帰宅すれば、靴から乾いた土が落ち、空気中に舞って口に入らないとも限りません。
脱いだ登山靴はビニール袋などに入れ、帰宅したらすぐに汚れを洗い流すこと。エキノコックスが流行している地域では気を付けるようにしてください。
6.靴のアクシデント
よくあるのがソールの崩壊です。
多くの登山靴には、軽量で耐摩耗性に優れ、適度な衝撃緩衝性を持ったポリウレタンが使用されています。
ミッドソールに使用されていたり、ソールを貼り付ける接着剤にポリウレタン系が使われている場合もありますが、どちらも経年劣化で崩壊する危険性があります。
さらに、一般的に製造後5年程度とされる寿命も、使用頻度や保存方法、温度や湿度などの状態によってもっと短くなります。
つい最近、妻の登山靴のミッドソールが崩壊して、ソール全体が剥がれてしまいました。
下山後だったのが幸いで、これが登山中であれば登山そのものが不可能になっていたところです。
ガムテープや紐、布など、持っているものを総動員して騙しだまし下山するか、意を決して裸足で歩くしかなかったでしょう。
妻の登山靴は、2シーズン使用したのち約4年間使用せずに保管していました。その間、購入したときに入っていた箱に入れていたことがソール崩壊を早めた可能性も否めませんが、通常の経年劣化とも考えられます。
履いていなくても壊れます。購入から5年程度経過したら、一見問題がなくてもソールの張り替えや靴の買い替えを検討したほうがいいでしょう。
7.カスタム
靴についてくる中敷きは、おまけ程度の品質です。
足に故障を抱えていたり、より快適さを追求したいなら、中敷きを換えたほうがいいでしょう。
1万円前後で自分の足裏を型どったオーダーメイド中敷きを作ることができます。
効果は抜群で、非常にバランスがとりやすくなります。対費用効果のある商品ですので、体力やバランスに不安のある方は検討する価値があります。
店頭で手に入る中敷きにも良いものがたくさんあります。予算の都合上オーダーメイドはちょっと・・・という方は、登山専門店やスポーツ用品店などで探してみるといいでしょう。おまけ中敷きとは履き心地や疲れに雲泥の差を感じるはずです。
靴下でもある程度はフィット感を調整することが可能です。妻は靴下2枚派。中厚手の靴下の中に薄手の5本指の靴下を履くことで、グリップ感が違うそうです。ここも工夫のし甲斐があるところですね。