登山をするなら「ぜったい読んでおくべき!」と思う本を厳選しました。
随時更新していく予定です。
Contents
登山の運動生理学とトレーニング学
下山したら体重が増える、むくみが出る…。悩んでいたときに山岳会の先輩に教えてもらったのが前作「登山の運動生理学百科」です。
どうやら原因は、登山中の食べ物や飲み物の摂り方にあったようでして、本を読んで改善したところ、悩みだった体重増加やむくみが無くなったばかりか、疲労回復も早くなるというオマケまで付いてきました。
「登山の運動生理学とトレーニング学」は、「登山の運動生理学百科」を最新データをもとに大幅に改定、加筆したもの。
山に行く時には、その山を知るためにガイドブックを参考にする。本書は、山に行く自分の身体を知るためのガイドブックである。
前書きにある通り、本書は食べ物や水分の取り方、歩き方、筋肉痛などのトラブル、トレーニング方法など、登山における身体の働きや仕組みについて網羅しています。
平易な文章で書かれているので、わたしのように栄養学や医学などの専門知識がない人でも理解できるのが素晴らしい!
現在のところこの本を超える指南書はありません。
巷には「登山にオススメの○○はコレ」といった安直なハウツー情報が溢れていますが、根本的な原理を理解していないと、個々人に落とし込んで応用・発展させることができません。
本書はまさに「魚を与えてくれるのではなく、魚の釣り方を教えてくれる」本。読後には試行錯誤の楽しみが待っています。
特筆すべき点は、中高年登山者に向けての情報やアドバイスが豊富であること。加齢とともに身体能力は衰えていきますが、知識を補うことで、知的レベルでの登山能力を上げていくことは可能です。
ぜひ60代~70代の中高年登山者に読んでもらいたい1冊です。
ドキュメント 道迷い遭難
登山歴25年以上になるわたしにも、下山途中で登山道を外れ、1本隣の沢筋を下ってしまった経験があります。
道が違うことに気づいて、たどってきたルートを必死で登り返すこと30分。正しい道に合流して安堵したとたんに、恐怖が襲ってきました。
「迷ったときは、もと来た道を引き返せ」
「沢を下るな」
道迷い時の行動の大原則を知っていたからこそ、大事に至らなかったのだと思います。
わたしのように、道迷いしたときに陥りがちな行動パターンや心理を確認し、対処法をあらかじめ知っておくだけで、防げる事故はたくさんあるでしょう。
著者は、山岳遭難に関する本を多く執筆している「遭難ルポ」の第一人者です。
実際に起きた道迷い遭難を取材し、生還した遭難者や関係者からの聞き取りから、遭難者の当時の行動や精神状態をつまびらかにして、事故の検証を行っていきます。
災害や非常事態の際に、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、「まだ大丈夫」「自分は大丈夫」と過小評価してしまう心理を「正常性バイアス」といいます。
インタビューに答える遭難者の多くが、道に迷ったことに気づきながらも「何とかなる」と道なき道に入りこんでいってしまう様子はまさにそれ。正常な判断力を失っていく過程が怖いほどわかる本です。
「道迷い」は遭難原因の第1位で、遭難事故の約4割を占めています。
雪山でも険しい山でもなく、ハイキングレベルの夏山に多く発生しています。
だから、登山初心者は”いの一番”に。ベテラン登山者も”気を引き締める”ために、折りに触れて読み直してもらいたい本です。
著者の本は多数出版されており、どれも外れがありません。シリーズで「滑落遭難」「単独行遭難」がありますが、まずは「道迷い」から優先して読んでもらいたいですね。
トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか
2009年7月、北海道トムラウシ山で8名が低体温症で死亡した気象遭難事故の検証本です。
多くの山仲間が捜索や救助、事故後の検証に携わったこともあり、身近な山で起きた悲劇に大きな衝撃を受けました。
防寒対策の不備、縦走中の食事が各人任せで栄養不足だったこと、低体温症への知識不足、ツアー登山ならではのお客様意識、強行スケジュール、ガイドの知識不足…様々な問題が凝縮した事故でした。
遭難事例は、自分の問題としてとらえることで「自分の身におきたときにはどうしたらいいか」ということを、現実的に考えられるようになります。
「自分だったらどうするだろう?」本書を読み進めながら、対処法を頭の中でシュミレーションしてみてください。体調管理力や適応力、危機管理力といった、過酷な条件下で生き残る能力を高めることができるはずです。
本書では低体温症について詳しく記述されています。
低体温症は冬山に多いと誤解されがちですが、夏山で風雨にさらされるほうが加速度的になりやすく、夏山シーズン限定の登山者にとって他人事ではありません。
北海道の山での低体温症の症例は、道外からの登山者がほとんどです。暑さ対策は念頭にあっても、寒さへの備えが不十分です。
北海道の山に登る予定の人は必読です。
北海道夏山ガイド(シリーズ)
北海道の登山愛好家で知らない人はいないガイドブックです。
ネットなどで簡単に情報を入手できる今でも、私はアンカー(基準や条件)として利用しています。もやは辞書代わりです。
なぜそこまで信頼しているかと言いますと、すべての山に筆者自ら入り、自分の脚で登ってデータを収集し、写真を撮って執筆しているからです。
そのため、情報やデータに統一性があり、他の山やコースとの比較検討が容易になっています。
道内の山を網羅したシリーズ全6巻を揃えれば、道内くまなく自分のレベルに合った山選びが可能になるでしょう。
初・中・上級の難易度を設定しています。体力・高山度・険しさ・迷いやすさをプラスした総合点は、非常に参考になる評価だと思います。
登山口に至る林道や登山道の情報などにも過不足がなく、景色や周囲の植生などの説明も詳細で、ルート全体の様子がイメージしやすいと思います。
本書は1989年に刊行されたロングセラー本です。何度も改訂されて情報が更新されていますから、購入するときは最新版を選ぶようにしましょう。
「登山体」をつくる秘密のメソッド
登山のための体をつくる方法が、とても平易な文章で書かれています。
おすすめは自分の「山力」をチェックする方法。
登山は自分の能力を知ることから始まります。今の体力がわかれば、弱いところをトレーニングしてバランスよく鍛えればよい。
わたしが所属する社会人山岳組織では、毎年このチェックをしています。山行中に自分の快適なペースを心拍数で把握する人が増えて、安全意識も高まりました。
無理なく登山をするためのヒントが盛りだくさんです。
バテない登山技術
タイトル通り、バテないための情報がつまった本です。
わたしが最も参考になったのは「重心移動をコントロールして歩くコツ」。これを実践すれば省エネ登山が可能になります。
初心者の人には言葉からイメージするのは難しいかもしれませんが、取り入れられるところは積極的に自分のものにしてほしいです。
それ以外にも、呼吸法やストレッチなど、バテないためのノウハウが惜しみなく語られています。
確実に登山が快適になると思います。
雪崩教本
冬山に入る人は必読の書です。
本来、冬は技術・知識・経験・装備の扱いなど、夏山と比べて格段に難易度が高くなります。
ところが、登山系SNSから引っ張ってきた他人のログをなぞることで、そのハードルをいとも簡単に飛び越えてしまう人が増えてしまいました。
雪崩についても、装備はおろか、知識も持ち合わせていない登山者が多くいます。
バックカントリーだろうが、スノーシューだろうが、冬山に入るなら雪崩のことをよく知っておかなければなりません。
本書の内容は難しいですが、ぜひとも理解しようと努めてほしい。そんな本です。











