登山初心者には「無積雪期」に「近郊」にある「登山道が整備された日帰り初級コース」を登ることをおすすめします。
山岳遭難の多くは、天候に関する不適切な判断や不十分な装備、体力的に無理な計画を立てるなど、知識・経験・体力の不足などが原因で発生しています。
実力に見合っていなかったといえばそれまでですが、自分の知識や経験、体力のレベルを正確に把握するのは難しいことです。ましてや初心者であればなお更のこと。
最初は簡単なコースから初めて、体力や知識、技術と相談しながら、徐々に難易度を上げていきましょう。
1.初級コースから始めよう
分岐点に標識が設置され、登山道がしっかり整備されている日帰り初級コースから始めましょう。
低山なら難易度も低いだろうと勘違いされることがありますが、そうとは限りません。
北海道札幌市近郊にある漁岳(いざりだけ)は1318メートルの山ですが、登山道がありません。
沢伝いに歩くか、隣の空沼岳から尾根伝いにハイマツ漕ぎをするしか頂上へ到達する方法はありません。沢コースなら頂上まで片道で約4時間。何度も川を渡渉し滝を越え、道なき道を進む上級コースです。
反対に、標高が高くても頂上直下までロープウェーや車で行ける山もあります。
中央アルプスにある木曽駒ヶ岳は標高2956メートルの山ですが、ロープウェーを利用すると頂上まで往復4時間です。
標高差はわずか344メートル。登山道は緩やかな勾配で、体力的にもそれほどきつくない初級コースです。
念を入れるなら、人気のある日帰り初級コースを、人出の多い週末に登るのがより安全です。行き交う登山者が多ければ、何かあっても助けを求めることが容易だからです。
2.近郊の山を選ぼう
なるべく近郊の山を選びましょう。移動時間が少なくなると、体力的にも精神的にも負担がずっと減り、登山に集中できるからです。
登山口へのアプローチは様々です。バスや電車などで登山口の近くまで行ける山もあれば、心細くなるような林道を数十キロも車で入らないと登山口にたどり着かない山もあります。
登山の危険因子は体力や知識不足などに目が行きがちですが、睡眠不足、過労、暴飲暴食など、登山以外の要因も大きく関係してきます。
夜な夜な車を走らせて車中泊して寝不足だった。前日遅くまで飲み会に参加して二日酔いだった。体調不良で山に入って事故を起こすパターンは意外と多いのです。
山に行きつくまでに疲れてしまっては、元も子もありません。万全の体調で臨むためにも、移動も含めて山の難易度だと考えるといいでしょう。
3.季節を選ぼう
登山の難易度には、季節的な要因も大きく関係してきます。ベストシーズンとはいかなくても、雪の無い時期を選ぶようにしましょう。
いきなり冬山に挑戦する初心者はいないでしょうが、下界では夏でも山の上には残雪がたっぷり残っている時期があるので注意が必要です。
残雪があると、登山道が雪で覆われて不明瞭になります。何度も訪れたことのあるコースでも、周囲の景色が一変して道迷いしやすくなりますので、地図とコンパスを使いこなせることがとても重要になってきます。
また、雪面がアイスバーンになっていたり急斜面であれば、滑落の危険もでてきます。場合によっては、軽アイゼンが必要になるかもしれません。
雪山歩行や軽アイゼン歩行は事前のトレーニングが必要です。山岳保険の種類を変更しないといけない人も出てくるでしょう。
残雪期は難易度が数段階上がることになりますから、初心者のうちは避けておくほうが賢明です。うっかりと夏支度で冬の装いの山に行ってしまわないように、下調べをしっかりしておきましょう。