山の栄養学

登山の水分補給はこうする「適した飲み物と必要量」

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登山の飲み物 ナロゲン、ラケン「登山では飲み物は何がいいんでしょうか?」「どのくらい持っていくといいですか?」

登山初心者から受ける質問で多いのが、飲み物に関する質問です。

登山では水分補給がとても大切だと知っていても、どんな飲料をどのタイミングでどのくらい飲めばいいか、よくわからないという人は多いようです。

登山の水分補給に適した飲み物、持っていく量の計算式、水分補給のタイミングなどについてお伝えします。

 

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水分と塩分はセットでとる

登山水分補給

渇く前に水分補給

基本的には、水、お茶、スポーツドリンクなど、自分の好みの飲料水で差し支えありません。

ただし、運動で大量の汗をかいて水分と塩分が失われたときに、真水ばかり飲んで塩分補給をしないでいると、血液中の塩分濃度がさらに低下します。これを低ナトリウム血症(水中毒)といいます。

低ナトリウム血症になると、浸透圧によって水分が移動して体液バランスが崩れ、筋のけいれん、つるなどの症状が起こりやすくなってしまいます。登山では、ふくらはぎや太ももで起きやすく、熱中症の軽症に分類されます。

症状が進行すると、体が体液濃度を一定に保とうとして、喉の渇きを押さえ、水分補給をやめてしまう「自発的脱水」が起こります。

この状態になると運動能力が低下、体温が上昇して熱中症の危険があるだけでなく、血液がドロドロになって脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性が生じてきます。

日本体育協会の指針では、3時間以上続く運動では塩分の入った水分をとるよう推奨しています。長時間に渡って激しい運動をする登山では、水分と塩分をセットでとると覚えておきましょう。

 

軽い運動ならアイソトニック飲料がいい

登山の飲み物は、いかに速く身体に吸収されるかを基準に選びます。

スポーツドリンクには、アイソトニック飲料とハイポトニック飲料の2種類があります。

アイソトニック飲料は、安静時の体液と同じ浸透圧になるように作られています。

自動販売機などで一般的に販売されているスポーツドリンクは、そのほとんどがアイソトニック飲料。順調に歩いているときの水分補給はこれで十分です。

市販のスポーツドリンクは甘すぎて苦手な人もいるかもしれませんね。運動時のエネルギー補給にもなるように、カロリーが高めになっていますから、飲みすぎに注意が必要です。

 

激しい運動にはハイポトニック飲料がいい

激しく汗をかいたら飲むといいOS-1ハイポトニック飲料とは、体液よりも低い浸透圧に調整された飲料水です。大量の汗をかいたときや熱中症になったときは、こちらのほうが効果が高くなります。

有名なところでは、飲む点滴と言われる経口補水液OS-1もハイポトニック飲料のひとつ。一般的なスポーツドリンク(アイソトニック飲料)や他のハイポトニック飲料よりも塩分が多く、糖分が少なくなっています。

運動による発汗で、体液が薄くなっている状況では、アイソトニック飲料よりも吸収がよいのが特徴です。

経口補水液は【水1ℓに対し、塩3g、砂糖40g】で作ることができます。ここにレモン果汁を50ml入れると、クエン酸やカリウムの摂取もでき、何より飲みやすくなります。

余談ですが、我が家では下痢や発熱したときのために、経口補水液でできたゼリー(OS-1ゼリー)を冷蔵庫に常備しています。

元気なときに飲むと、こんなに不味いものはありません。逆に体調がすぐれないときに飲むとそうは感じません。美味しく飲めるのは、体が必要としているときなのでしょう。

スポーツドリンクを水で薄めてハイポトニック飲料にする人もいますが、薄めることにより塩分や糖分の濃度も薄くなり、脱水対策の効果も低くなります。薄めるのはやめたほうがいいでしょう。

 

真水はどうでしょう?

真水は体に吸収されるまで30分はかかります。朝食時や登山前の水分補給にはいいとしても、運動中の水分補給にはあまり向いていません。

ただし、休憩のたびに塩のきいたおにぎりなどを食べるなら、真水や麦茶などで問題ないでしょう。その場合は、1ℓの水分に1~2グラム程度の塩を更に補給しておきます。

ケガをしたときの洗浄などに利用するため、わたし自身は常に真水も持ち歩くようにしています。

経口補水液パウダー W-AID

経口補水液やスポーツドリンクのパウダーを持参すれば、必要に応じて飲料にもできますし、ケガの洗浄用途にも使えます。

 

持っていく飲み物の量と飲むタイミング

登山 水分補給

山に持っていく量としては、どのくらいが目安なのでしょうか。

山本正嘉氏は著書「登山の運動生理学とトレーニング学」の中で、脱水量や補給の目安量を求める式を紹介しています。

いずれも、暑くない時期に、軽装で、整備された無積雪期の登山道を、標準タイムで歩く場合を想定した簡易式です。

気温が高い時期(25℃以上の夏日など)には係数を6~8にします。汗をかきやすい人は係数を6~8、かきにくい人は3~4くらいにするといいでしょう。

 

行動中の脱水量を求める計算式

まずは、行動中の脱水量を求めてみましょう。

行動中の脱水量(ml=体重(㎏)×行動時間h×5

例:体重60㎏の人が8時間の日帰り山行をした場合の脱水量
60kg×8時間×5=2,400ml

 

 

生活中の脱水量を求める計算式

テント泊や小屋泊する場合は、こちらの式も組み合わせます。

生活中の脱水量(ml=体重(㎏)×行動時間h×1

例:体重60㎏の人が8時間登山をした後「テント泊」した場合の1日の脱水量
行動中の脱水量:60kg×8時間×5=2,400ml
生活中の脱水量:60kg×16時間×1=960ml
1日の脱水量:2,400ml+960ml=3,360ml

 

 

行動中の水分補給の目安量を求める計算式

脱水量が分かったところで、行動中の水分補給の目安量を求めます。

水分補給の目安=行動中の脱水量(ml)-10×体重(㎏)

例:体重60㎏の人が8時間の日帰り山行をした場合の水分補給の目安量
60kg×8時間×5=2,400ml
2,400mlー10×60kg=1,800ml

 

この簡易式では、 体重の1%までの脱水を許容しています。

脱水量は2,400mlですが、その分をすべて行動中に補う必要はなく、行動中の補給量は1,800mlが目安となります。

さらに、登山開始前に水分をとったら、行動中の補給量からこの分を差し引きます。

登山開始前に500mlのペットボトルの飲料水を飲んだら、残りは1,300ml。行動中に持っていく水分は、500mlペットボトル3本あれば十分ということになります。

 

行動中の水分補給量の目安は、体力レベルによって変化します。

 下界でのスポーツや運動の場合登山での場合脱水の許容範囲行動中の水分補給量(ml)を求める式
レベル1健康のために運動やスポーツをする人健康のために登山をする人、初心者、中高年、子供、体力の弱い人体重の1%まで体重(kg)×時間(h)×5

-10×体重(kg)

レベル2一般的なスポーツ選手十分な体力と経験を身につけている登山者体重の2%まで体重(kg)×時間(h)×5

-20×体重(kg)

レベル3長距離走選手のように持久力のトレーニングを十分に積んだ人アルパインクライマーやトレイルランナーなど、ハードな登山に慣れた人体重の3%まで体重(kg)×時間(h)×5

-30×体重(kg)

レベル4遭難時など、やむを得ず水分が制限される場合体重の5%まで体重(kg)×時間(h)×5

-50×体重(kg)

一般的な登山者はレベル1を使用するといいでしょう。

この目安は、体力や天候、歩くペース、汗をかきやすい体質かどうかによっても大きく変動します。山行途中に水場があるかどうかでも違うでしょう。

わたしの場合は、念のため必要量にプラスして、スポーツドリンクを1ℓ、真水を1ℓくらい持っていくようにしています。

 

水分補給のタイミング

水分補給のタイミングは、「登山前」「登山中」「登山後」と3つに分けられます。

【登山前】

登山前は、行動中の脱水を先取りして水分補給します。朝食以外に500mlの水分を補給するといいでしょう。朝食で塩分を摂らない場合は、経口補水液やスポーツドリンクで塩分を補っておくようにします。

【登山中】

登山中は30分おきに200~250mlを目安に水分をとるのがベストです。喉が渇いた時点で軽い脱水症だといわれていますから、喉が渇く前に意識して飲むようにします。ゴクゴクと大量に飲んでも体に吸収しきれずトイレに行きたくなるだけなので、休憩のたびに少しずつ口に含むようにして飲むといいでしょう。

【下山後】

行動中は補給が追い付かないことが多いため、下山後も意識して水分補給しましょう。脱水量が体重の2%以内になるようにします。お風呂に入るときに体重をはかってみると、失われた水分量がわかります。下山後のビールを楽しみにしている人も多いですが、アルコールは利尿作用を促すのでほどほどに。

 

◆水分補給についてより詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。

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参考
「登山の運動生理学とトレーニング学」山本正嘉 東京新聞
「登山外来へようこそ」大城和恵 角川新書
「アスリートのための栄養・食事ガイド」日本体育協会スポーツ医・科学専門委員会監修 第一出版
ポカリスエット公式サイト
OS-1公式サイト

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