山の天気は地上にくらべて厳しく、崩れやすいことでも知られています。
高度が増すと、気温は下がり、風は強くなります。
地形の影響で、雨や風は想像以上に激しいものになります。
一方で、高気圧に覆われたときは山でも地上と同様、穏やかな天気となります。
つまり、山での天気は良いときと悪いときの落差が激しいということ。
急変に備えて、適切な判断と行動をとる必要があるということ。
かつてはラジオの気象通報を聞きながら天気図を書いていた時代もありましたが、今はインターネットなどで最新情報が簡単に入手できます。
しっかり確認して、安心、安全な計画を立てましょう。
1.早く崩れて回復が遅い
山の天気は、平地より早く崩れて、回復が遅くなることが多くなります。
なぜなら、低気圧や前線の接近などの影響は、上空側から早く受けるためです。
一般的な天気予報は平地向けです。
山で天気が崩れるのは、平地の天気予報よりおおむね6時間早まると考えておけば良いでしょう。
この時間的ズレを修正するのが、登山者の腕の見せどころです。
2.山の天気は崩れやすい
山では、風が吹くと簡単に上昇気流が起きます。
山肌を伝って上昇する空気が、冷やされて水分を含み切れなくなり、放出されることによってできるのが雲です。
天気予報でよく耳にする低気圧は、周りから集まった空気が行き場を失い、上空へ押しやられることによって上昇気流を生み、雲が発生して天気が悪くなるメカニズムです。
極端に言うと、山では局所的に低気圧のようなものが発生するのです。
平地では晴れの予報でも、山ではいつ天気が崩れてもおかしくありません。
3.天気の変化は空で分かる
空をみて、空の色や雲の種類、雲が風で流される様子などから空模様を予測することを観天望気(かんてんぼうき)と言います。
山でもラジオやスマートフォンなどで気象情報を入手できますが、前述したように山の天気は変化が平地より早くなります。
上空ほど天気の変化が早いため、サインを見つけるには空を観察するのがいちばんです。
気象は雲に始まり雲に終わるといいます。ただしこれはかなりの上級編。まずは空を眺める楽しみを覚えてください。
4.標高と気温
標高が高くなるにつれ気温が下がることを「気温の減率」といいます。
標高が1000m高くなると、気温は6℃下がります。
地上が20℃とすると、1000mでは14℃、2000mでは8℃、3000mでは2℃となります。
地上では桜が咲く陽気でも、山の上はまだ冬の装いです。
地上の感覚のまま登山を開始して、装備不足から低体温症になるケースも珍しくありません。
北海道の山では、真夏でも冬用の防寒着や帽子などを持参します。
天候を過小評価しないように注意しましょう。
5.最大の敵は風
気温が低くても、無風であればそれほど寒くは感じません。
風のない雨の中を歩くのも、さほど心配はいりません。
ところが、そこに風が加わると事態が一変します。
身体が雨でぬれた状態で風に吹かれると、真夏でも低体温症で死亡する事故が発生します。
2009年7月、北海道のトムラウシ山で起きた大量遭難事故はまさにそうでした。
通常風速1mごとに体感温度は1℃下がるといわれています。
水は空気より熱の伝導率が約24倍高くなりますから、雨に濡れて風に吹かれたら加速度的に体温が奪われてしまうのです。
北海道では低気圧が千島沖に抜けると晴天になりますが、低気圧が発達して強風に襲われる、晴れていても非常にリスクが高い典型的条件が発生します。
地域の特性や傾向も把握しておきたいものです。
6.山で突風が吹くのはなぜ?
風は山岳地形の影響を受けます。都会のビル風と同じです。
扇状地状の地形は、上流に向かって狭くなるため、風は加速します。
谷沿いに吹く風も、上流に向かって地形が狭くなるため収れんして強くなり、突風となります。
風下側から登山して、稜線に出たとたん突風に襲われるのはこのパターンです。
さえぎるものがない山の稜線では、行動できないほどの強風が吹き付けることがあります。
このようなときは、風下側に避難するか、山小屋に避難しましょう。
7.雷が発生しやすいってホント?
日射しで山の斜面が暖められ、斜面近くの空気の温度が同じ高度の空気の温度より高くなることで上昇気流が発生します。
それによって発達するのが、夏の雷。
発生しやすいのは気温が上昇する午後といわれていますが、それは平地も同じです。
ただし、山では地形による上昇気流も加わりますので、特に雷が発生しやすい状況が生まれるのです。
上空に寒気が入ってきているときはより顕著になりますので注意しましょう。
また、逃げ場のない稜線歩きなどする場合は、そのリスクを十二分に認識することが必要です。
8.山の天気情報
インターネットやスマホで山の天気予報を入手することができます。
無料で手に入るサービスもありますが、
毎週末いろんな地域に出かける人は、有料サービスで詳細な高層の天気情報を入手するといいでしょう。
一部をご紹介します。
- ヤマケイオンライン「山の天気」
会員登録(無料)すると全国50山の山頂の天気予報が見られます
- 「ヤマテン」株式会社ヤマテン
月額300円(税別)で全国18山域、59山の山頂天気予報を配信
山の天気予報は、平地の予報と同じ感覚で見てはいけません。
知らないと気象遭難に遭いかねない要注意ポイントについて、こちらの記事で説明しています。
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