個人差もありますが、4~5歳くらいから山に登ることができるようになります。
子どもは、体力はもちろん、身体能力も精神力も大人とは比べようもありません。一緒に登るときは、大人の常識は持ち込まないようにします。
子どもと一緒に登山を楽しむためには、どんな山を選ぶといいのか。
自分の子どもも含め、たくさんの子どもを引率した経験から、気を付けたいポイントをお伝えします。
1.登りガイドタイム1時間以内のコースを選ぶ
子どもの年齢・体力と山の難易度をマッチングさせます。
ガイドブックに載っているコースの標準ガイドタイムは、標準的な体力の大人が休憩無しで歩くことを想定した時間です。
未就学児から高校生まで、これまでたくさんの子どもと山に登りましたが、体力がない子どもは踏ん張りもきかず、すぐに音を上げてしまう傾向があります。休憩は頻繁にとることになりますし、都度長くなってしまいます。
その経験から、未就学から小学生くらいの子どもと登るときは、ガイドタイムの2倍程度を想定するようにしています。
楽しめるのは、登りがガイドブックの標準ガイドタイムで1時間以内。休憩も入れた実際のタイムは2時間程度が妥当でしょう。
麓から頂上まで1時間で行ける山は少ないかもしれません。ですが、様々なコースや目的地、手段を組み合わせることで1時間コースを設定することは可能です。
たとえば東京都の高尾山にはたくさんのコースがありますが、そのうち麓から頂上まで登るコースは、大人の脚で2時間近くかかります。途中までケーブルカーやリフトを利用すれば、頂上まで1時間です。
頂上を踏むことにこだわらなければ、ケーブルカーの駅から中腹を周回する30分のコースもあります。展望の利く場所で引き返したってかまいません。柔軟に考えてみましょう。
日本山岳会のサイト「親子で楽しむ山登り130山」には、全国のおすすめの山が掲載されています。登る時期やコースタイムなど、全て子どもと登ることを前提にしていますので大変参考になります。
山に関する豆知識は読み物としても面白いので、山に行く前にお子さんと一緒に読んで、事前学習に利用してみるといいでしょう。夏休みの自由研究にもぴったりです。
2.変化に富んだコースを選ぶ
ワクワクするコース選びとゴール設定が成功の秘訣です。
子どもに限ったことではありませんが、単調なコースはすぐに飽きてしまいます。彼らは正直ですから、目的を達してあとは帰るだけ(下山)になると、その傾向が顕著に出ます。
緩急があって飽きさせないコース。高山植物がたくさん咲いているお花畑がある山。脇を川が流れている登山道。トトロの森を彷彿させるトンネル。見晴らしのいい尾根。
変化に富んだコースなら、疲れを忘れて歩くことができるでしょう。
子どもと山に登るときは、登頂だけがゴールではありません。
巨石を登って遊んだり、清流で日本ザリガニを観察したり、雲を眺めてみたり、途中の山小屋でお弁当を食べて帰るだけでもいいのです。
ただ登って下りるのでは楽しくありません。ワクワク、ドキドキできる道草ポイントがたくさんあるコースを探してあげましょう。
3.最高標高は1500m以下にする
子どもは大人よりも高山病にかかりやすくなります。
わたしの場合、子どもと登るときは、安全策をとって標高1500mくらいまでの山を目安にしています。
一般的には、標高1800~2500m以上で高山病の危険性があり、3000m級になると成人の3割程度が高山病になるといわれています。
日本旅行医学会が2012年と2013年に行った調査によると、富士山(3376m)に登った5歳から12歳の5割以上に、頭痛や吐き気などの急性高山病の症状が見られたそうです。
高山病の初期症状は、頭痛、呼吸浅薄感、食欲低下、腹部の膨張感、二日酔いのような「山酔い」などがあります。
重症化すると肺に水が溜まる「高地肺水腫」や脳がむくむ「脳浮腫」となり、命の危険が生じます。
脱水症による頭痛なのか、高山病による頭痛なのか、大人でも区別を付けるのは難しいもの。
ましてや子どもがいつもとの違いを訴えたり、体調の悪さをうまく伝えるのは至難の業でしょう。
また、高所にはゆっくりと体を順応させる必要があります。
北アルプスの乗鞍岳は、車で2700m地点まで行くことができます。登山時間が短い初級コースだとしても、登山開始地点の標高が極端に高いところは避けるべきでしょう。
子どもが不機嫌になる、食欲不振、遊ばなくなる、頭痛や吐き気などの症状が出たら、すぐに低地に下りるようにしてください。