救急セットには、あれもこれもと入れてしまいがちです。
装備の軽量化を考えると「無いと困るもの」を厳選する必要がありますが、登山経験が浅いとそれが何なのか分からないものです。
これからご紹介するのは、登山歴25年以上の筆者が携帯している救急セット(ファーストエイドキット)の中身です。
日帰り登山と数日に渡る縦走登山でも内容は違ってきます。持病がある人は、他にも必要なものがあるでしょう。
いざ使おうと思ったら入って無かった。使用期限が切れていた。そんなことにならないよう、定期的に点検することをおすすめします。
Contents
救急セット(ファーストエイドキット)一覧
【必携】
滅菌ガーゼ | 止血するときに傷口にあてる。清潔を保つためには個包装された滅菌ガーゼがよい。生理用ナプキンも重宝する。 |
三角巾 | 止血、吊り下げ、固定、包帯代わりなど多用途で使用する |
医療用被覆材 | しっかりと洗浄したあとの傷やヤケドを覆う。ちょっとした擦り傷には絆創膏を使用する。 |
テーピングテープ | 非伸縮タイプのもの。包帯などを固定したり、足首のねんざ予防や応急措置などに使うほか、靴のソールが剥がれたときなど装備の補修にも使う。 |
ジプロック・ビニール袋 | 防水、密封、洗浄など多用途で使えるため複数枚入れておく |
包帯 | テープ不要タイプが便利 |
ゴム手袋 | 滅菌した医療用のものがベスト。介護用や家事用のものでも十分使用できるが、破れやすいので複数枚携帯しておくとよい。 |
ブドウ糖 | 疲れたときのカンフル剤、低体温症対策に。即効性があるため緊急時に重宝する。細粒スティックタイプがおすすめ。 |
塩 | 熱中症予防や大量の汗をかいたとき補給する |
常用薬 | 下痢止め、頭痛薬など。頭痛薬は解熱剤としても使用する。 |
ハサミ | 刃体6cm以上は航空機内持ち込み不可なので注意 |
水道水 | 傷口洗浄用として、飲料水とは別にボトルに入れておく |
保険証 | |
持病薬 | 持病がある人は症状を書いたメモをいれておくとよい |
【あると便利】
人工呼吸用携帯フィルム | 口対口の人工呼吸を行うときに使う。フィルムを持っていないときは心臓マッサージのみ行う。店頭販売されていないため、インターネット通販で入手するとよい。※コロナ禍ではこれまでと同じ方法で人工呼吸を行いません。 |
ティッシュ | |
安全ピン | |
洋裁道具 | |
消毒薬 | 安全ピンなどの道具を消毒するときに使用。個包装のアルコール綿があればベスト。 |
使い捨てカイロ |
必要なものを必要な分だけ
無くては困るものを最低必要量だけ携帯します。
薬であれば、用途用法や使用期限を書き、濡れないようビニール袋に小分けして入れます。
滅菌ガーゼなども、個別包装されたものを必要枚数だけ持ちます。
山の上でできることは「とりあえずの措置」です。登山中に体調が悪くなったりケガをしたときは、応急手当したらすぐに下山して医療機関を受診することを基本としてください。
濡れや蒸れに注意
雨が降らなくても、一日山を歩けば自分の汗でザックの中が湿っています。
下山後はすぐにザックから全ての装備を出して、陰干しする習慣をつけましょう。わたしにも経験がありますが、怠るとカビが生えたり不衛生になります。
単価は高くなりますが、少量で個別に包装されたもののほうが衛生的です。とくに滅菌ガーゼなど傷口に直接あてるものは、保管状態に注意しましょう。
傷には消毒ではなく洗浄
消毒液は、ハサミなどの器具の消毒に使います。
かつては、ケガをしたら「消毒してガーゼをあてる」のが傷の手当ての常識でした。
今は「傷は消毒せず水道水でよく洗う」のが基本で、「乾燥させない」湿潤療法が良いとされています。
ただし、山では水が十分になく、洗浄がしっかりできないことが予想されます。
土や砂などの異物やはがれた皮膚などは丁寧に取り除きます。持っている水で足りなければ、沢の水でも構いません。とにかく洗浄してください。
そうやって念入りに洗浄しても、山では限界があります。細菌感染の危険性が高くなりますから、応急措置を取った後は必ず6時間以内に医師による診療を受けるようにしましょう。
自分の身を危険にさらさない
救急救命は、救助者に不利益が生じてまでやるべきではないといわれています。
他人の血液や体液を直接触らないように、手にはゴム手袋やビニール袋などを必ず着用し、感染症予防を第一優先してください。
口対口の人工呼吸についても、感染防止フィルムや感染防止マスクを持っていないときは心臓マッサージのみにし、人工呼吸は行わないという選択も必要です。
誰が見ても救急セットだと分かるものがベスト
代用できる入れ物はいくらでもありますが、持ち主だけがわかる救急セットより、誰が見てもひと目で救急セット(ファーストエイドキット)だと分かるポーチをおすすめします。
何かあったとき、自分自身でザックの中から救急セットを取り出せるとは限りません。仲間や通りすがりの登山者にお願いするかもしれません
「あ、えっと、ザックの中に緑のジッパーがついた黒いポーチが入っていて、小さいポケットの中に狭心症の・・・」
緊急時にこんな説明が省けるのは大きな利点です。
ネット通販で購入したほうがいいもの
ファーストエイドキットの中には、ドラッグストアや薬局の店頭では入手しにくいものがあります。ネット通販で購入したほうがいいものを紹介しておきます。
まずはスティックタイプのブドウ糖。
店頭で手に入るのはゴロゴロした塊タイプです。わたしも永らくボトルに入れて携帯していましたが、かなりかさ張る存在で何とかならないかと思ってました。
スティックタイプは小分けで携帯しやすく、顆粒になっているので口ので溶けやすいという利点もあります。

人工呼吸用の感染防止マスクです。消防の講習で使っていたのがこちらでした。
他に安価なものもあるのですが、購入するなら逆流防止弁が付いた安全なタイプをおすすめします。
ケースです。ぱっと見て誰でも救急セットだと分かるのが、緊急時において最大のメリットでしょう。
わたしが使っているのは有名なドイタ―のバッグです。日常でも持ち歩くのでかなり使い込んでいますが、ファスナーが壊れたり、中のネットが破れることもなく、頑強なつくりだと思います。
登山歴25年以上の筆者が携帯している救急セット(ファーストエイドキット)を紹介しました。
日帰り登山と数日に渡る縦走登山でも内容は違ってきます。持病がある人は、他にも必要なものがあるでしょう。
経験を重ねるうちに、内容も変化して充実していきます。それも登山の楽しみのひとつだと思います。