北海道の山事情

北海道の山の気象条件はプラス1000メートルで考えよ

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トムラウシ山から見た景色 雲海山の厳しさをはかるとき、標高を尺度にすることがあります。

北海道の最高峰は大雪山系旭岳で2291メートルです。道内に百名山は9峰ありますが、9峰中5峰が2000メートル未満です。

北アルプスを経験されている方からすれば、2300メートルにも満たない山々は難易度が低いと思うかもしれません。

ところが、北海道の山に限っていえば、標高を額面通りに受け取ることはできません。厳しい気象条件などを考慮して、標高はプラス1000メートルで考えておくといいというお話です。

 

 

1.気象条件はプラス1000メートル

大雪山 高根ヶ原

標高1700mの高根ヶ原 時に風の吹きさらしになる

本州の登山者で百名山踏破を目指す方たちは、最後に北海道にある百名山を目指す傾向があります。

3000メートル級の山々を登頂してきた人にとって、北海道の百名山は少々物足りない印象があるは否めません。

大雪山系旭岳の2291メートルが最高地点。本州なら、車で行くことができる標高です。

道内の百名山は9峰あり、5峰は2000メートル未満です。最も低い阿寒岳(雌阿寒岳)は1499メートルと、神奈川県丹沢の塔の岳1491メートルとほぼ同じです。

ところが、気象条件となると一変します。天候が崩れると、真夏でも凍死するリスクが高まる厳しい条件となるのです。

2009年7月のトムラウシ山遭難事故では、最初の犠牲者がでたのは2000メートル付近でした。亜寒帯に属する北海道の山は、本州の山と同等に考えてはいけません。

北海道の山はプラス1000メートルで考えましょう。2000メートル級では3000メートル級を想定した装備を準備してください。

 

2.真夏でも防寒着は必需品

夏 北海道 登山 防寒着

真夏でもフリースは必須

本州出身で夏休みに北アルプスや南アルプスを登っていたわたしが、北海道に移住して初めて、7月下旬にトムラウシ山(2141メートル)に登ったときのこと。

フリースジャケットを持参するように同行者から言われて、正直躊躇してしまいました。

同時期の北アルプス縦走では、防寒着として長袖Tシャツと雨具を持ち歩いていた程度でしたし、それさえも着用する機会はありませんでした。

登山はなるべく荷物を少なくしたいものです。縦走装備でしたから、かさ張るフリースは厄介者。当時のわたしには、そのくらいの危機意識しかありませんでした。

トムラウシ山も、風のない晴天であれば本州の山と変わりありません。ところが、ひとたび悪天候に見舞われると、状況は極端に悪くなります。

7月と言えども、山では朝方に氷点下まで気温が下がることもありますから、それをよく知っている登山者は、真夏にダウンのミッドインナー上下などを緊急装備として持ち歩いています。

テント泊では、真夏でも風の強い日には寒さで眠れないことがあります。真冬用のフリースを着た上に雨具の上下を着用し、3シーズン用の寝袋に入っても、です。

悪条件が重なったときの北海道の山は、本州の感覚では想像できないほど過酷な状況になることを覚えておいてください。

 

3.重要なのは標高より地形

利尻岳1719m

山は標高で判断しがちですが、より重要なのは地形です。

茨城県の筑波山をイメージしてください。標高わずか877メートルの単独峰です。低気圧が接近すれば、頂上では吹きさらしの風に震えることになります。

神奈川県丹沢塔の岳に登る大倉尾根の877メートル地点はどうでしょうか? 駒止茶屋の少し下で樹林帯です。低気圧が来たとしても樹林帯が風から守ってくれます。

登る山の地形を調べ、もしもその山に登っているときに悪天候に見舞われたら?と頭の中でシュミレーションしてみるといいでしょう。

参考までに北海道にある日本百名山の地形を紹介します。

  1. 利尻岳1719m 風化した単独峰、上にいくほど風を遮るものがない
  2. 羅臼岳1661m 羅臼平より上は風を遮るものがない溶岩ドーム
  3. 斜里岳1547m 風化した単独峰、馬の背より上は風の吹きさらし
  4. 雌阿寒岳1499m 溶岩ドーム状で上部は風を遮るものがない
  5. 旭岳2291m 溶岩ドーム状、ガスがかかれば方向を見失う、風の吹きさらし
  6. トムラウシ山2141m 溶岩ドーム、まわりに高い山がなく風の通り道
  7. 十勝岳2077m 活火山で樹木が全くない
  8. 幌尻岳2052m 沢づめで山までが長い、褶曲山脈の急登、沢増水で入山出来ないことが多い
  9. 羊蹄山1893m 蝦夷富士の名のごとく単独峰

8.の幌尻岳は、ヒマラヤや北アルプスと同じくプレートが衝突して生まれた山です。岩石主体のため、雨が降ると地面に浸透せず一気に沢に流れ込みます。鉄砲水に注意が必要です。

それ以外の山は火山活動による地形です。共通しているのは、低気圧が接近すれば、風の吹きさらす場所と化してしまうこと。風を遮る樹林帯がないことも共通しています。

雨にぬれた状態で強風にさらされれば、真夏でも低体温症を発症し、最悪は死に至るリスクがある。それが北海道の山の特徴ともいえます。

レクタングル(大)336×280




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