登山では道迷いしないために位置を知ることが非常に大切です。
そのためには、地図とコンパスによる読図技術を身に付ける必要があります。
地図の事前準備、進行方向を割りだす方法、現在地を知る方法など、必須技術を実践方式でまとめました。
1.コンパスの名称
- コンパスの前 :目標物や見ている方向に向けます
- 度数線 :コンパスをセットする角度、上記では54°にセットされています
- 方位磁針 :針の赤い方がN極で北方向にむきます
- 矢印の頭 :地図に書かれた磁北線に合わせて使用します
- コンパスの長辺 :目的地の方向に合わせて使います
- カプセル :内部にオイルが封入され方位時針が安定します
- リング :回してセットします
- 距離測定目盛 :距離を測定します
- 拡大鏡 :地図を拡大します
2.地図に磁北線を引く
東京駅(現在地)から東京スカイツリー(目的地)に行くと想定で、地図を用意します。
地図に磁北線を引きます。
磁北線とは、方位磁針の赤い針(N極)が実際に指す方向のこと。
国土地理院の地図には「東京都内の磁針方位は西偏約7°20′」と記載されています。
東京都内では、N極が示す方向が7°20′(7度20分)西側に傾いているということになります。
20′は時計と同じで60進法です。これをコンパスのメモリである10進法に換算します。
20′=20÷60=0.3
コンパスのメモリで7.3度西に傾いている線を引きます。
【具体的手順】
(1)コンパスを360°-7.3°=352.7°にセットします。
※Nの所は0°または360°です
(2)カプセル内の赤い矢印を地図の縦に合わせます。
下の写真のように地図の端に合わせるといいでしょう。
コンパスの長辺が磁北線の傾きとなりますので、赤線で数本の磁北線を地図に引きます。
左に傾いた線が引けます。これが磁北線です。
※4cm間隔で平行する線を引くと1kmの目安になります
磁北線の西偏は地域、時間的にも変化します。
最新情報は国土地理院地図で確認できます。国土地理院地図はこちら
3. 進行方向を割り出す方法
東京駅からスカイツリーに行く例で説明します。
- 現在地:東京駅
- 目的地:スカイツリー
東京駅からスカイツリーの方向を確認します。
下記地図をみてください。
【東京駅】から【スカイツリー】は赤い矢印の方角になります。
赤太線に【コンパスの長辺】をあてます。
この時点では、針の向きやカプセルの向きは無視してください。
※初心者が混乱しやすいポイントです
次に、コンパスはそのまま(地図上に置いたまま)にして、カプセルだけを回します。
カプセルの内部にある矢印が磁北線と平行になるように回してください。
方位磁針の向きはまだ無視していいです。
これで目標物のセットができました。
このときカプセルの度数線は結果的に55°になっています。
これを【55°にセットした状態】といいます。
55°にセットした方向が目的地、ということになります。
【東京駅】でこのようにコンパスを持ちましょう。
次に、方位磁針の赤い針とカプセル内部の矢印が一致するよう、体の向きを変えてください。
コンパスの前方が指し示す方向が【スカイツリー】です。
実際の山でもこのようにして、チェックポイントから次のチェックポイントの方向を確認し、正しい方角へ進みます。
4.現在地を割り出す方法
登山中に現在地を確認するときなどに必要です。
ただし、特徴的な目標物(山頂、尾根、コル、鉄塔)二か所から現在地を割り出すので、視界があることが前提です。
現在、東京23区内のどこかにいるとします。
【上野駅】と【スカイツリー】の両方が見えています。※実際は見えないと思いますが…
それぞれの方角をコンパスで読み取り、現在地を特定します。
①上野駅の方角を調べます。
(1)コンパスを身体の前に持ち、コンパスの前を【上野駅】へ向けます。
(2)カプセルを回し、中の矢印と方位磁針を合わせます。
(3)カプセル外周に記載されている度数線の数値を読み取ります。
328°となりました。
②スカイツリーの方角を調べます。
(1)コンパスを身体の前に持ち、コンパスの前を【スカイツリー】へ向けます。
(2)カプセルを回し、中の矢印と方位磁針を合わせます。
(3)カプセル外周に記載されている度数線の数値を読み取ります。
50°となりました。
③地図に①(上野駅の方角)の結果を落とし込みます。
(1)カプセルを回して【上野駅】の方角328°に合わせます。
(2)長辺のどこか一点を【上野駅】に合わせたまま、カプセル内の矢印が磁北線と一致するようにコンパス本体を動かします。
(3)長辺の部分に線(328°の線)を引きます。
現在地は黄色い直線内(328°の線)に絞りこめました。
④地図に②(スカイツリーの方角)の結果を落とし込みます。
(1)カプセルを【スカイツリー】の方角50°に合わせます。
(2)長辺のどこか一点を【スカイツリー】に合わせたまま、カプセル内の矢印が磁北線と一致するようにコンパス本体を動かします。
(3)長辺の部分に線(50°の線)を引きます。
二つの直線が交わった場所が現在地ということになります。
答えは両国駅です。
山の中では、濃霧やヤブ、樹々が生い茂っているため明確な目標物が見えるとは限りません。
地図とコンパスは、道迷いしたときのためではなく、道に迷わないために使うもの。
こまめに地図で現在地を確認しながら歩くのが基本です。
現在地を見失ってからでは遅いということを覚えておきましょう。
いざというときに冷静にできるよう、普段から訓練しておきたいですね。
文章では理解しずらいと思いますので、動画編はこちらからどうぞ
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5.コンパスの使い方 Q&A
電子機器ですから、電池切れや故障のリスクは排除できません。
ちなみに、GPSやスマホのGPS地図アプリも、使いこなすためには読図の知識が不可欠です。
地図とコンパスで、読図の基本を身につけてから利用するといいですね。
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それには、街の中で練習するといいでしょう。
街には建物や交差点などの目標物がたくさんあって、山よりはるかに簡単です。
具体的には、GPS、携帯ラジオ、スマホ、携帯電話、デジカメなどですね。
強い磁気を帯びているものに接触させると、磁針が180度逆転することがあるんです。
わたしの経験では、首からぶら下げたコンパスがウエストポーチに入れたスマホと10センチ以下で接近している状態で山に登り、下山したらこの現象が起きていました。
わたしは高校生で登山を始めてから、これ一筋。
特徴は、
①針の部分にオイルが入っているので、針がブレず見やすい
②透明なので、地図の上に置いて読図できる
③シンプルで、感覚的に操作できる
入門用モデルとしては、これ以上のものはないと思っています。
コンパスの選び方と初心者におすすめのコンパスについて解説した記事もあわせてご覧ください。
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地図とコンパスも定期的に使って、感覚を忘れないようにしましょう。
購入するなら、ちょっと高いですが、コンパス機能付きがおススメです。
ここまで紹介したのは、地図とコンパスの「基本」技術です。
地図とコンパスをもっと極めたい方、冬山も行ってみたい方、グループ登山のリーダーを務める人は、より高度な技術にも挑戦してみてください。
冬山への登竜門ともなる「ベアリング表」を使った地図とコンパスの使い方「上級編」は、こちらからどうぞ。
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