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【北海道の山】雌阿寒岳「野中(雌阿寒)温泉コース」登山ガイド

更新日:

雌阿寒岳

中高年登山者のバイブル「日本百名山」に「阿寒岳」として紹介されている雌阿寒岳と雄阿寒岳。

登山者が圧倒的に多いのは雌阿寒岳です。

短時間で登れるうえに、火山ならではの変化に富んだ地形や植生が楽しめるほか、山頂からは火口や阿寒の原始林を一望にする絶景づくしの名峰です。

3つある登山コースから、もっとも多くの登山者が利用する野中(雌阿寒)温泉コースを紹介します。

雌阿寒岳「阿寒湖畔コース」登山ガイドはこちらです。

雌阿寒岳 湖畔コース
【北海道の山】雌阿寒岳「阿寒湖畔コース」登山ガイド

日本百名山として広く知られる雌阿寒岳登山ルートには、野中(雌阿寒)温泉コース、オンネトーコース、阿寒湖畔コースの3つがあります。 火山らしさを存分に味わうなら「阿寒湖畔コース」がおすすめです。 阿寒湖 ...

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雌阿寒岳(1499m)

阿寒摩周国立公園内にある、阿寒のシンボル的な存在である雌阿寒岳。

この山の魅力は、なんといっても火山の恵みがもたらす風土です。

赤沼火口

活火山であることを実感する山頂の赤沼火口

火山ならではの植生。

山頂付近に広がる荒涼とした礫地。

阿寒湖と雄阿寒岳、原始の森の絶景パノラマ。

阿寒湖と雄阿寒岳

阿寒湖と雄阿寒岳(1370.5m)

百名山に選ばれた北海道の山のなかではもっとも短時間に登ることができる初級の山とあって、全国から多くの登山者が訪れます。

不思議な色の水をたたえた旧火口の青沼と阿寒富士

不思議な色の水をたたえた旧火口の青沼と阿寒富士(1476.3m)

登山コースは、野中(雌阿寒)温泉、オンネトー、阿寒湖畔の3つがあります。

雌阿寒登山マップ

 

紹介するのは、もっとも多くの登山者が利用する野中(雌阿寒)温泉コース。

正式には雌阿寒温泉コースですが、地元では野中温泉コースという呼び名が一般的ですので、以下、野中温泉コースとします。

 

雌阿寒岳「野中温泉コース」の基本データ

雌阿寒岳、阿寒富士、オンネトー

雌阿寒岳(左)、阿寒富士(右)、オンネトー(手前の湖)

標高 1499m
標高差 794m
距離 約3.3km
山頂までの標準タイム(休憩なし) 登り:2時間/下り:1時間10分
難易度 初級
水場 なし
山小屋 なし
トイレ 駐車場に公衆トイレあり
山中では携帯トイレを使用すること(携帯トイレブース無し)
山開き日程 通年で登山可能なため「山開き」はありません
安全祈願祭 6月第一日曜日
問合せ先 NPO法人 あしょろ観光協会 0156-25-6131

 

野中温泉コースは、他の2つのコースと比べると勾配がきついものの、距離が短くて手軽に登れるコースです。

通年で登山が可能ですが、あしょろ観光協会によると「安全に登山ができるのは、残雪が少なくなる5月下旬くらいから」とのことでした。

10月上旬には初冠雪が観測されますから、夏山登山に適した時期は5月下旬~9月いっぱいが目安でしょう。

ただし、年によっては上記の期間でも、残雪が多くて滑落や道迷いリスクが高くなっていることがあります。

その場合は、アイゼンなどの冬山装備が必要になり、難易度が格段にアップしますので注意が必要です。

 

雌阿寒岳「野中温泉コース」概略

参考ガイドタイムです。

雌阿寒岳野中温泉コースマップ

【登り】2:00
登山口   ⇒ 4合目    1:00
4合目  ⇒ 山頂      1:00

【下り】1:10
山頂      ⇒ 4合目  0:30
4合目    ⇒ 登山口   0:40

※休憩は含みません

 

野中温泉近くの公共駐車場から、国道241号線方面に向かって300mほど道路沿いを歩きます。

野中温泉コース

※画像加工しています

天然のアカエゾマツに囲まれた登山口を出発すると、すぐに森の香りに包まれます。

雌阿寒岳「野中温泉コース」

アカエゾマツの発する鎮静効果のある香りは、ちょっぴり甘くて爽やか。

しばらくは森林浴をしながらの登山です。

雌阿寒岳アカエゾマツ

※画像加工しています

アカエゾマツは、土壌の薄い溶岩状や火山灰、火山礫の土壌など、養分の乏しくて条件が厳しいところに生育します。

雌阿寒岳では、トドマツやエゾマツと混交せず、アカエゾマツだけの純林を形成しています。

少ない養分を集めるために根を張り巡らせているため、気を付けないと足をひっかけて転びそうになるほど。

苔むした森の中では、朽ちた老木の上に若い木が育つ「倒木更新」がみられます。

倒木更新

森林限界は低く、3合目付近からハイマツ帯に変わります。

冷たい風が体を冷やし始めます。

雌阿寒岳3合目

目の前に見える雌阿寒岳は、まだまだはるか遠く。

雌阿寒岳

大沢と呼ばれる沢地形が現れて視界が開けると4合目。

火山の礫地が広がり、硫黄の臭いが立ち込めてきます。

尾根にとりつくと、風をさえぎるものがなくなり吹きさらしになります。

雌阿寒岳尾根

オンネトーが見えるのは8合目まで。

オンネトーを見下ろす

9合目付近で外輪山にたどりつきます。

目標物となるものが乏しく、視界不良時はルートを見失いやすいので注意が必要です。

登山をする犬として有名な「山の宿 野中温泉」のモコに先導してもらう

登山をする犬「山の宿 野中温泉」のモコに先導してもらう

吹きさらしで風が強いため、防風・防寒対策も重要です。

強風が予想されるときは、樹林帯を抜ける前に雨具を着こんでおくといいでしょう。

雌阿寒岳9合目

山頂の旧火口にある青沼です。

雌阿寒岳旧火口青沼

やや離れて雄阿寒岳が見えます。

雄阿寒岳

噴煙を上げる火口越しに見る阿寒富士。

阿寒富士

火口を右に見ながら、外輪山をゆるやかにカーブして山頂へ。

雌阿寒岳火口端

花も緑もない荒涼とした景色が広がる山頂は、いつ来ても風が強くて長居ができません。

雌阿寒岳山頂

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雌阿寒岳「野中温泉コース」の花

メアカンキンバイ

メアカンキンバイ

火山らしい植生を見ることができるのが、雌阿寒岳の魅力のひとつでもあります。

アカエゾマツの純林で始まる登山道は、ハイマツ帯を抜けると、イソツツジやマルバシモツケなどが出現します。

イソツツジ

イソツツジ

登るほどに火山らしい礫地となり、イワブクロや阿寒の名を頭につけたメアカンフスマ、メアカンキンバイなど、高山植物が多くなります。

メアカンフスマ

メアカンフスマ

コケモモ

コケモモ

花の見頃は7月~8月にかけてがピークです。

開花時期に合わせて登山者も一気に増えて、山全体がにぎやかになります。

 

今なお噴火を繰り返す活火山です

雌阿寒岳噴気口

雌阿寒岳は、ポンマチネシリや阿寒富士など8つの小さな火山から構成される成層火山群です。

約3000~7000年前に主峰のポンマチネシリ(標高1499m)が誕生、約1000~2500年前には阿寒富士が形成されました。

そして、今も数年おきに小規模な噴火が発生している活火山です。

2015年7月には火山性地震が頻発し、火口周辺警報が火口から約500メートル以内の立ち入りを規制する「噴火警戒レベル2」に引き上げられました。(同年11月、1に引き下げ)

御嶽山や草津本白根山の噴火が記憶に新しいなか、地元登山者のあいだでも、万が一に備えてヘルメットを着用する人が増えてきました。

7合目付近から山頂にかけては、噴火による噴石などが飛んできても、避難小屋はおろか、身を隠す木々すらありません。

入山前には必ず火山情報を確認しましょう。

雌阿寒岳の火山活動の状況はこちらから確認できます。

気象庁ホームページ「火山活動の状況(雌阿寒岳)」

 

気温と服装

雌阿寒岳の気温について解説します。

山頂付近のデータはありませんので、阿寒湖畔の過去の気象データを参考にしてみます。

気象庁ホームページ「阿寒湖畔 平年値(年・月ごとの値)主な要素」統計期間1981~2010

6月 7月 8月 9月
最高気温 18.7℃ 21.7℃ 22.8℃ 18.4℃
平均気温 12.7℃ 16.5℃ 18.0℃ 13.4℃
最低気温 7.2℃ 12.1℃ 13.7℃ 8.6℃

 

阿寒湖畔にある観測所は標高450mに位置しているので、雌阿寒岳山頂との標高差は1049mです。

理論的には、標高が100m高くなると気温は0.6℃下がりますから、実際の気温から6℃を引いてみましょう。

6月と9月は最低気温が0℃近くになる可能性があります。(※2017年6月と9月には、ふもとの阿寒湖畔でマイナス気温を記録しています)

これはあくまでも計算上の数値であって、そこに山岳地形特有の強風や天候の急変が加わります。

何事もなく日中のうちに下山できれば問題ありませんが、もしかするとケガや道迷いで遭難して山中で救助を待つことになるかもしれません。

服装や装備などは、最悪の状況を想定して準備しておきましょう。

 

服装は、暑さ対策よりも寒さ対策のほうが重要です。

特に森林限界を超えて吹きさらしになると、風をさえぎるものがありません。

風は体温を急速に奪います。

晴れていたとしても、雨具や防寒具は必ずザックの中に入れておくようにしましょう。

北海道の1000メートル級の山は、本州の2000メートル級の山に匹敵する気象条件と考えてください。

道外から訪れる方は、こちらの記事もご一読ください。

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雌阿寒岳登山の注意点

阿寒富士からみた雌阿寒岳山頂

阿寒富士からみた雌阿寒岳山頂

ガレ場で道が不明瞭

森林限界を超えるとガレ場となり、道が不明瞭になります。

岩に付けられたペンキや、外輪山など滑落する危険のある場所にはロープが渡されていますが、霧がかかったり悪天候時は目印を見失ってしまいがちです。

地図とコンパスを携帯して、ルートを確認しながら登りましょう。

風が強い

森林限界を抜けると、風をさえぎるものがなくなります。

強風時はまともに風を受けてしまうため、突風による転倒・滑落や低体温症のリスクがあります。

わたしも何度か経験がありますが、尾根にとりついて風が強いと感じたら、登頂は諦めて引き返すことも大切です。

 

日本百名山は雌阿寒岳?それとも雄阿寒岳?

『日本百名山』を読むと、著者の深田久弥が実際に登ったのは雄阿寒岳(1370.5m)であることがわかります。

彼が訪れた1959年は、雌阿寒岳は火山活動が活発化して入山が禁止されていたため、登ることができませんでした。

登りたくても登れなかった状況を考えると、「阿寒岳」は雄阿寒岳だけはなく、雌阿寒と雄阿寒のセットと考えるべきでしょう。

通説では雌阿寒岳のみを日本百名山とするようです。

環境省による調査では、2017年6月~10月の入山者数は【雌阿寒岳 約12000人】に対し【雄阿寒岳 約2000人】。約6倍もの差がありました。

百名山踏破を目指す方は、ぜひとも両方登ることをおすすめします。

 

雌阿寒岳に登るなら、こちらのガイドブックがおすすめです。

 

 参考 気象庁ホームページ
梅沢俊・菅原靖彦・長谷川哲(2016)『北海道夏山ガイド<6>道東・道北・増毛の山々』北海道新聞社

 

雌阿寒岳(野中温泉コース)登山に役立つ記事をあげておきます。参考にどうぞ。

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