フィット感、機能性、耐久性…ザックに求めることはたくさんありますが、登山のザックは一度購入したら長い付き合いになるもの。
「耐久性」や「修理ができるかどうか」の重要度が上がります。
購入から9年になる、縦走テント泊用の「グレゴリー」パリセード80が壊れました。
メーカーに修理に出したものの、一部は自分で修理する派目に…。
経緯や注意点、反省点などをお話しします。
同じザックでも、使用頻度や状態、保管状況は人それぞれで一概に比較はできませんが、ひとつの例としてみなさんがザックを選ぶときのヒントになればと思います。
Contents
壊れたところ
形あるものいつかは壊れるとはいえ、致命的なダメージが同時多発的にきたので焦りました。
ヒップベルトのプラスティック板の破損
1つは、ヒップベルトについているプラスティック板。
見事に縦にパックリと折れています。
ザックは腰で背負うものです。
ヒップベルトは、荷物の重さを肩だけでなく腰に分散させる働きがあります。
このザックの購入の決め手ともなったのが、かなりの荷重をかけても揺るがないフィット感と背負い心地。
その要となるのが、腰をがっちりホールドしてくれるウエストベルトだったわけです。
骨組みとなるプラスティック板が折れたことで、腰のホールドはフニャフニャと頼りない状態に…。
体は無意識にブレを修正しますから、不安定になったザックで山に行けば、必要以上に疲れるのは想像に難くありません。
このままじゃ使えないとまでは言えませんが、ザックの魅力は半減です。
ボトム生地の劣化
2つ目は、ザックのボトムのビニール素材がコーティングされた防水生地の劣化。
ボロボロになって芯材が露出しています。芯材はガラス繊維なので、強度だけは大丈夫そうです。
防水はあきらめるとしても、このまま使用するとボトム全体がボロボロになってザルのようになるのが目に見えています。
幸い、芯材が裂けている箇所はありません。
被害が広がらないうちに何とかせねば!
修理の経緯
グレゴリーに直接見積もりを依頼することもできますが、購入した登山専門店に持ち込んで修理を依頼することにしました。
わたしがいつも利用しているのは、北海道で登山する人なら知らない人はいないという、山用品の老舗「秀岳荘」。
店員さんの知識が豊富で、何かあった時の対応もしっかりしているこのお店には、登山靴やザックといった実際に手にして選びたい装備があると、車で片道5時間かけて買いに行くほど。
信頼できる登山専門店で購入することも、登山の装備選びでは大切です。
秀岳荘は自社工場を持っているので、最悪メーカーサイドで修理できなかったら、ここで修理できるかも…という望みもありました。
メーカーに見積もり依頼する
店員さんに見てもらった結果、メーカー修理になるとのこと。
販売店経由でメーカーに見積もりを出してもらうので、そのまま預けてきました。
1週間くらいで見積もり完了。
- ウエストベルトのプラスティック板は交換可能3000円~
- ボトム生地は修理不可
他に選択肢もないので、プラスティック板のみメーカーに修理をお願いすることにしました。
その後、1か月ほどで修理完了。
修理代金と送料を販売店の口座に入金し、入金確認後に宅配便で送付してもらう方法で受け取りました。
プラスティック板の交換は3500円。
登山靴のソール張替えも同時にお願いしていたので代金合計が1万円以上になり、送料は無料になりました。
致命傷が直ったんですから、安いものでしょう。
問題はボトムです。さぁ、どうする?!
ボトム生地は自分で修理してみた
このままではあっという間にボロボロになってしまうのが目に見えているので、駄目もとで自分で直してみることにしました。
修理の材料に選んだのがこれ。まずは、シームグリップです。
ボトム交換ができない以上、何かを貼るしかありませんから。
オープンカーの幌などの補修用の【ペタックス】は、強力なテープで厚手のシートを張り付ける商品です。
幌に張って簡単にははがれないというレビューから、修理するザックのボトムに張っても十分実用的であると判断しました。
目止め剤として、テントなどの縫い目の補修や防水に使う【シームグリップ】も購入。
強い粘着力があって、布の縫い目に塗ることで防水加工としても使えます。
登山用品の補修では定番ともいっていいほどよく使用します。
結論からいうとこれは不要。
修理直後の山行で、地面に置いたりした際に簡単にとれてしまったので、塗り直していません。
防水性は目をつぶることにします。
ぺタックスはトラックなどの幌用途ですから強度は十二分です。
これでしばらく延命できたと思います。
シートの継ぎ目があって美しくないのは我慢…。
また不具合がでてきたら、その時は新しいザックを購入したいと思います。
保証規定
ちょっとここで、グレゴリーについて触れてみます。
1977年、ウェイン・グレゴリーによってにサンディエゴに設立されたバックパック専門の会社です。
他のアウトドアブランドがアパレルなど多角展開するなかで、グレゴリーは40年間バッグだけにこだわって、背負い心地と機能性を追求してきたブランド。
「デイパック界のロールスロイス」とも言われ、その背負い心地には定評があります。
2014年には、スーツケースで知られるサムソナイト・インターナショナルSAに買収されています。
保証規定はどうなっているかというと…?
THE GREGORY WARRANTY
弊社の保証は条件付きとなっており、製造工程における欠陥のみ保証対象としております。
誤った使用、不注意、事故、摩耗、ご使用時の強い負荷、極端な温度差への露出、溶剤、酸、水、通常の範囲での消耗、不適切な管理方法によるダメージ、長期にわたる使用により自然発生的に起こる生地(コーティング)経年劣化等の場合は、ご利用の回数等に関わらず、保証が適用されませんのでご了承ください。
出典:グレゴリー公式オンラインストア「保証修理」
上記によると、ボトム生地の破断は「長期にわたる使用により自然発生的に起こる生地(コーティング)劣化等」に該当すると思われます。
「ちょっと耐久性に欠けるんじゃない?!」と思うものの、どこまでが経年劣化で、どこまでが商品の不具合なのか、素人には正直わかりません。
ほぼ同じ条件で保管していた14年物の妻のザックは、まったく問題ないのが引っかかりますが…。
点検と保管
購入から時間がたったザックは、マメに点検するのがよさそうです。
グレゴリーのパリセード80は、購入して9年目。
一気に劣化が進んだので、購入してからある程度の時間がたったザックは、使用する前に余裕を持って点検したほうがいいですね。メーカー送りになると結構な日数がかかります。
あとは、保管方法にも注意ですね。
グレゴリーのザックは、使用頻度が年2~3回。使っていないときは、防災用品を詰めて部屋の片隅に置いていました。
湿気が多い場所でもなく、閉め切った場所でもないので、保管場所としては悪くなかったと思います。
カスタマーセンターに、ベストな保管方法を聞いてみました。
- 汚れを落とす
- 新聞紙を入れて形状を保つ
- 不織布をかけて保存(ビニールは不可)
- たまに陰干しする
防災用品を詰めて形状を保っていたのはマズかったかもしれません。結構な重量がありましたから。
長い付き合いをしたいなら、お気に入りのザックの保管には注意が必要です。
まとめ
ザックを選ぶときは、これまで以上に「耐久性」や「修理ができるかどうか」を重視したいと思います。
人の体に合わせようとすればするほど、パーツは複雑になっていきます。
パリセード80は、背負い心地の快適さを追求した結果、耐久性がおろそかになった感が否めません。
このザックを購入したときは、ピッタリなザックを見つけた喜びで頭がいっぱいだったわたしです。
が、今思えば、重要なパーツに強度がないプラスティック部品が使われていることに気づくべきでした。
カスタマーセンターに問い合わせてみた
今後の修理について聞いてみました。
パリセード80は2015年に廃番になっているため、オリジナル部品は在庫が無くなり次第終了だそうです。
他のもので代用できるのであれば修理は可能だが、それもできなければ修理不可とのこと。
登山用品もモデルチェンジします。
電化製品と同様、廃盤になったあとも修理が可能なのかどうかといったところまで、よく考えたうえで購入すべきでしょう。
ちなみに、パリセード80に使われていた「プラスティック板」と「ビニール素材がコーティングされたボトム生地」を使っている「現行モデル」は無いとのこと。
新たに購入するときは、今回修理したパーツと同じものを使用しているザックは候補から外そうと思ってました。
それであれば、後継機種のバルトロ85を次の候補にいれてもいいかなぁと思います。
あのフィット感と背負い心地が変わらないのであれば…。
これからザックを購入する方は、こちらをどうぞ。
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