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【コラム】飲んだら登るな、登るなら飲むな。飲酒登山はやめましょう。

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登山中の飲酒には反対です。いちばんの理由は、事故やケガの心配から。

山頂でプシューと缶をあけて、美味しそうに飲んでいる姿をよく見かけます。主に年配の方ですね。

もっとも事故が多発するのは下山時で、その多くが中高年登山者です。山頂で気を抜いている場合じゃありません。

登山の事故や遭難の統計には出てきませんが、アルコール摂取を起因とするものは絶対にあるはずです。不慮の事故ならともかく、飲酒による事故は人災です。重大な過失です。

そして下山後は、おそらくアルコールが抜けきらないうちに車を運転している可能性もあります。これが飲酒登山に反対する二つ目の理由です。

飲酒運転に対する意識はここ最近ではずいぶん高まりましたが、登山中のアルコールについては、なぜか周りの人は見て見ぬふり。もしくは言い出せないようで不思議でなりません。

飲んだら登るな、登るなら飲むな。飲酒登山はやめましょう。

 

運動中にアルコールを摂取するとどうなるか

山本正嘉著「登山の運動生理学とトレーニング学」より

”アルコールは脳・神経系の働きを低下させる、低温の調節機能を乱す、筋力を低下させる、心拍数血圧を上昇させる、脱水を助長させるなどの害がある。”

アルコールには利尿作用があるので、体内の水分を減少させ、脱水症を引き起こしやすくなります。

登山中に脱水が起きると、血がドロドロになって心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなります。

万が一、山の上でこういった症状に襲われたら、助かる見込みが少ないことは容易に想像できますね。

ただでさえ多種多様なリスクを抱えているのが中高年です。体に負荷がかかる登山の最中に飲酒するのは、絶対に避けるべきでしょう。

 

アルコールの影響は絶対ある

あるとき、スキー場のレストランで知人グループがビールを飲んでいるのを見かけました。

その日はガスがかかって見通しが利かず、ゲレンデのコンディションは最悪です。彼らはかなりの上級者でしたが、それでもこんな日にお酒を飲んで大丈夫なのだろうかと正直思いました。

やがて、グループのひとりが急斜面で転倒し、救急搬送されていきました。頸椎を損傷して、首から下がマヒする大ケガを負ったそうです。

アルコールとの因果関係は分かりませんが、ゼロではなかったと思うのです。

脳や神経の働きが低下するのですから、少なからず運動機能にも影響はあったでしょう。気持ちも大きくなっていたかもしれません。

テーブルにズラズラと並んだビールの缶。ゲレンデに響き渡るサイレンの音。あのときの情景は、運動中に飲酒する恐ろしさを教えてくれた出来事として、今でも鮮明に覚えています。

登山に限らず、運動中に飲酒するのは、自らを危険にさらす行為でしかありません。

 

飲酒を許す回りも悪い

山仲間に、普段から飲んべえの男性がいます。

登山中も休憩ごとにビールを飲むような人で、はたからみていて軽度のアルコール依存症のようにも見てとれました。

アルコールは利尿作用がありますから、頻繁に尿意を催します。それはもう、しょっちゅういなくなる。

あるとき、いつものように休憩中に用を足しに草藪に入った男性が、一瞬にして姿を消してしまいました。慌ててみんなで探しに行くと、なんと滑落していたのです。

幸い滑落したのは数メートルで、大きなケガもなく済みました。でもそれは単に運が良かっただけで、死亡事故になっていたとしてもおかしくありません。

その後、仲間たちから「飲むのだったら山には一緒に行かない」と言われ、男性は登山中の飲酒をやめ、現在に至ります。

それまで言いたくても言えなくて、事故になってはじめて口を出せたという、日本人社会に典型的な事例です。大事にならないとなかなか言えないんですよね・・・。

とはいえ、事故を起こす前に話し合うべきで、なんだかんだいっても、男性が飲酒するのを長年見過ごしてきたわたしたちも悪かったと思うのです。

登山中の事故は、場合によっては他人も一緒に巻き込んでしまいます。救助ひとつとっても、平地とは比べものにならないほどたくさんの人の手を借りなければなりません。

予期せぬ事故やケガなら致し方ありませんが、飲酒によるリスクは自ら招いているも同然。飲酒運転と同様、飲酒登山を許す周囲も同罪だと思っています。

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